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  • 【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    この記事では、2024年のマッチングのスケジュールについて解説します。 候補者には、2回の締め切りがあります。この締め切りに何を提出するかなどをイメージして、期限前にしっかりと準備ができているようにしましょう。 2024年カレンダー 2023年9月1日プログラムエントリー 2024年のマッチは、前の年の9月から始まります。 プログラムのエントリーとは、各大学や動物病院がポジションの掲載をし始めることを指します。この間、候補者はまだこの情報を見ることはできません。 2023年10月1日プログラム検索 10月になって、初めて候補者がポジション(プログラム)を検索することができるようになります。この期間は、まだすべてのポジションが掲載されているとは限らないため、検索をし始めるのはいいですが、プログラムエントリーの締め切りまでは情報をアップデートし続ける必要があります。 2023年11月1日プログラムエントリーの期限と候補者の登録開始 ここでようやくすべてのポジション(プログラム)についての情報が出揃ったということになります。 この日から、候補者はマッチングプログラムに個人情報を登録をして、サインインできるようになります。 この期間に行わなければいけないことは大きく2つです。 ①プログラムのリサーチ プログラムに関する詳細の体外はマッチングのホームページに詳細が書いてあります。しかし、外国人の受け入れやビザの複雑な事情がある場合は、「きっとそうだろう」と仮定しないで必ず直接担当の方に問い合わせることをお勧めします。 それによって、広がる可能性もあれば、採用されないポジションに申し込んで自分の時間を無駄にすることも防げます。 ②パケット(必要書類を揃える) マッチングプログラムに必須となるパケットとは以下になります。 卒業した獣医大学の書類を集めるのに、時間がかかることもあるので、余裕を持って準備することをお勧めします。 履歴書、パーソナルステートメントを完成させるのに、私はものすごく時間を要しました。早めから取り掛かり、アメリカで獣医大学で働く先生などに添削してもらうことをお勧めします。 日本人の謙虚なステートメントは、アメリカ人からすると「自信のなさ」と捉えられてしまう可能性が高いです。よって、アメリカ人にとって見栄えの良いステートメントにするための努力が必要かもしれません。 私個人的な意見としては、このパケットの中で最も重要なのが推薦状です。そして、いい推薦状をもらうために1年間もしくはそれ以上努力をし続ける必要があります。誰に頼むかがキーとなります。大御所の先生の書いた、「弱いレター」と、無名の先生の書いた「強いレター」。おそらく後者の方が良い印象を与える可能性が高いです。「強いレター」をもらえる人から推薦状をもらうようにすることをお勧めします。 推薦状は、候補者を介さず、直接VIRMP協会へ送られることになります。よって、候補者は、自分のサインインページから、推薦状が提出されたかをみることはできますが、中身を見ることはできません。 推薦状がもしも期限ギリギリまで揃っていない場合は、書いてくれる人が忘れている可能性を考慮して、リマインドを送ることをお勧めします。もしも推薦状が申し込み締め切りまでに間に合わなければ、実質どこの学校ともマッチしない可能性が高いので気をつけましょう。 2024年1月8日申し込み締め切り この日が、上記に述べた2点(応募するプログラム及びパケット)のデッドラインになります。この2点以外にも、大学固有で必要な提出書類がある場合もあるので、しっかりと確認しましょう。 この申し込みが終わったら、次の締め切りまで何をするのでしょうか。 この間には、面接を受けたり、どのプログラムに行きたいか(もしくは行きたくないか)を決めるための情報収集を行います。 面接のオファーは大学側からくることが多いです。オファーをもらうということは、大学側があなたに興味がある証拠です。もしも面接のオファーが来なかった場合は書類で「可能性が低い」と捉えられた可能性が高いです。(ローテーティングインターンには面接を行わないことが一般的です) 日本から応募する場合、自分もそうでしたが、「どこでも良いから入れてくれ」状態になりがちです。実際そうなのですが、面接をする側としては、「どこでも良いならウチでなくてもいいな」と感じてしまう可能性が高いので、しっかりとプログラムの特徴を把握し、「このプログラムで勉強したいです」と伝えることをお勧めします。 2024年2月16日候補者のランキング締め切り マッチング最後の締め切りです。 ここでは、面接などで得た情報や感触をもとに、どの大学に行きたいかの順番を決めます。 「この大学には絶対に行きたくない」という場所があれば、その大学をランクから外すことで絶対にそこにマッチする可能性は無くなります。 また、何らかの事情によってマッチングから手を引きたい場合(来年から働けなくなる、など)はここで「withdraw」することで、どこにもランクしていない状態にすることができるので、ペナルティなくマッチを中断することができます。 万が一、マッチしてしまった大学で働けなくなった、という状況が起こった場合、マッチングプログラムに次から3年間申し込みすることができなくなる「ペナルティ」が課されることになるので注意しましょう。 2024年3月4日マッチ結果発表 候補者のランキングの後に、大学側の候補者のランキングが行われます。これによって、マッチングのアルゴリズムに沿ってだれがどこの大学のプログラムに入るかが決定することになります。 もしもマッチできなかった場合、スクランブルと言って、マッチできなかった候補者とマッチできなかった大学の個々の採用が始まります。スクランブルは、もはや早いもの勝ちと言ってもおかしくないシステムなので、自分から大学に積極的に連絡をとりに行く必要があります。 また、連絡が来る可能性もあるので、電話やメールにすぐに対応できるようにしましょう。 2024年3月18日情報開示 ここで、定員割れしたポジションの情報が、マッチングに申し込んだ人以外にも開示されることになります。誰でもあいたポジションを狙いにいける期間ということです。 終わりに この記事でマッチングのシステム(どの時期に何をしなければいけないか)を理解していただけたでしょうか。候補者としてやらなければいけないことはそこまで多くありません。ただ、様々な情報が飛び交ったり、他の人の話に流されたりと、とてもストレスがかかる時期と言ってまちがいないでしょう。 準備をしっかりすることで、少しでもチャンスが大きくなる可能性があります。寒い時期で辛いですが、みなさん頑張ってチャンスを掴んでください。

  • 【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【呼吸困難の原因】についてのインスタグラムの投稿です。 呼吸困難は11種類の病態に分けることができます。 解剖学的にどこに問題があるかで、安定化のアプローチが異なってきます。 これらを呼吸様式や聴診、身体検査、TFASTからこれらを分類することで、命の危険がある状態の患者さんの安定化方法が見えてきます。 安定化後のさらなる検査によって診断を絞っていきます。病態による分類ごとの鑑別疾患リストがあれば、どんな検査が必要になるかもプランが立てやすくなります。 11種類も多い!と思われるかもしれせんが、一つ一つ病態を理解すれば、どうして神経系の病気と呼吸器の異常がつながるか、などがわかるようになります。 View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) \この記事のハイライト/☆​呼吸困難の原因を11種類に分類する☆各分類に含まれる疾患をイメージする \関連記事/☆呼吸困難の原因11種類(前編)☆上部気道疾患☆下部気道疾患☆神経原性呼吸困難☆胸腔内の疾患☆胸壁の疾患(後編)☆胸腔外の疾患☆肺実質 ☆心原性☆肺血栓 ☆血管系 今回の投稿がためになった!面白かった!という方は見返せるようにインスタグラムで保存やいいね!もよろしくお願いしますm(_ _)m

  • 犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、新人獣医さんに向けて、呼吸困難の症例がきた時の診断までの思考プロセスをご紹介します。このプロセスをしっかりと理解し、鑑別疾患を上げて順序立てて診断を組み立てて行く事で、呼吸困難患者さんに向き合うのが怖くなくなります。 犬・猫の呼吸困難①では、なぜ診察の際に「ちゃんと考える事が大事か」を説明しました。犬・猫の呼吸困難②では呼吸困難の原因11つのカテゴリーをご紹介します。このカテゴリーに当てはめる事で、患者さんをどう安定させるかのヒントを得る事ができます。臨床現場で直結して役に立つ内容を、アメリカのトレーニングで学んだ事や経験を盛り込みながら解説します。①-④まで最後までご覧ください。 呼吸困難患者さんの診察のゴール 呼吸困難総論の最初の記事なので、最初に獣医師の仕事としてのゴールについて書きます。 私たちのゴールは、3つです。 アメリカの救急集中治療科の役割は、主に①になります。そして②と③は内科が専門とする領域になります。 全ての呼吸困難は、11つのカテゴリーに分類する事ができます。①は、呼吸困難の原因をこの11のカテゴリーのどれにあたるのかを即座に判断し、それに応じた安定化を行うという工程になります。 さていよいよ、11カテゴリーをご紹介していきます。 頻呼吸を11カテゴリーに分けて考える 呼吸が速い、努力呼吸の原因はこれら11個のカテゴリーに分類できます。最後のlook-alikeとは、痛み、酸塩基のバランスの乱れ、興奮、敗血症、など、呼吸器や換気以外の原因が含まれます。 呼吸器の症例を見たときに、最初のゴールはこの11個のカテゴリーのどれに当てはまるかを推測することになります。 このカテゴリーの中に、様々な病態が含まれます。具体的な疾患を診断する前に、11つのうちどれに当てはまるかを分類する事で、次のステップ、診断(どこにフォーカスを当てるか)や安定化の方法が異なります。 上部気道、下部気道、肺実質のおさらい それでは、11個を上から順に説明して行く前に、上部気道、下部気道、肺実質のおさらいだけしておきます。 呼吸器は、上部気道、下部気道、肺実質の3つで構成されます。呼吸困難の全てがこの3つに分類できれば簡単なのですが、呼吸器以外の疾患によっても呼吸困難が生じるので、11カテゴリー全ての可能性を考慮する事が重要です。 それではいよいよ、①からざっくりとカバーしていきます。もっと詳しく勉強したい方は、リンクからその疾患に特化したページもご用意しているので、ご覧ください。 ①上部気道閉塞: upper airway 上部気道閉塞の異常で代表的なのは、短頭種気道症候群です。外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、気管低形成とといった、気管支手前までの気道が狭くなる病気の総称です。(短頭種気道症候群に関してはこちらのページで詳しく解説しているのでご参照ください) 他には、鼻腔内ポリープ、腫瘍、異物、喉頭麻痺、喉頭虚脱、気管虚脱などの病気があります。 上部気道閉塞を患った患者さんは特徴的な呼吸をします。聴診器を使わずにも聴こえる、ストライダーやスターターという異常呼吸音を出します。呼吸様式、聴診に関してはこちらの記事で解説しています。 上部気道閉塞を引き起こす代表的な疾患 ②下部気道閉塞: lower airway 下部気道疾患の代表的な疾患 肺胞に入るまでの細い気管支に炎症などの異常が起こることで呼気努力が生じるのが特徴的です。お腹で押すように、吐く時に力を入れます。呼吸様式は、吸う時間に比べ吐く時間が長くなることも特徴的です。聴診では、笛の音の様なウィーズが一般的に聞こえます。 猫は喘息が重症になると開口呼吸をします。 慢性気管支炎や猫喘息の原因は様々です。環境的な要因が関与していることもあります。 ③肺実質疾患: parenchymal diseases 肺実質の異常に含まれる代表的な疾患 誤嚥性肺炎やケンネルコフなどの肺炎がよく見られる代表疾患です。他には、ARDSやALIなどの肺炎、寄生虫やカビ感染、異物の混入などによる肺炎、免疫疾患である好酸球性肺炎などもあります。 呼気吸気にかかわらず呼吸数が速くなることが多いです。感染性の場合、呼吸様式の変化だけでなく、湿性の咳をしたり、発熱などの他の症状を呈することもあります。酸素化機能が低下するため、重度の場合、チアノーゼが見られることもあります。 ④胸腔内の異常: pleural diseases 胸腔内の異常に含まれる代表的な疾患 胸腔内で何かが大きくなる/増えることで肺が広がるスペースがなくなり、換気不全になります。うまく換気できないことで体内にCO2が蓄積することから呼吸数が上昇します。 猫では、胸水によってparadoxical componentといって、胸とお腹の動きが相反するような呼吸をすることが多いといわれています。 胸水の原因も様々で、腫瘍、出血、感染、乳糜、心臓病(犬では右心不全、猫では左心不全でも生じる)、特発性などがあります。また、気胸と言って、胸腔内に空気がたまる病態、胸腔内の腫瘍の増大においても肺がうまく膨らめないことによって頻呼吸が生じます。 胸腔内疾患に関してはこちらで解説していきます。 これらの異常は、患者さんにストレスをかけてレントゲンを撮影する前に、FASTスキャンができれば簡単に検出することができます。必要に応じて治療的胸水抜去を行い、安定化してからレントゲンを撮れば、患者さんが急変するリスクを減少できます。 ⑤胸腔外の異常 胸腔外の異常とは、例えば腹部の腫瘍が増大/GDV/腹水などで腹部から胸腔を圧迫、肺が拡がれなくなるような場合を指します。お腹からの圧力が原因の場合は、GDVであれば減圧、腹水であれば腹水抜去などそちらの原因除去を優先させます。 しかし、呼吸器の病気を合併している場合もあるので、原因と思われたものが解除された後の再評価も非常に重要です。 ⑥胸壁の異常: body wall 胸壁の異常の代表疾患…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿管閉塞を図でわかりやすく解説①

    【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿管閉塞を図でわかりやすく解説①

    この記事の内容 犬の尿管閉塞とは 初期安定化 犬の尿管閉塞の治療オプション 役立つ英単語 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、様々な犬の尿管閉塞についてご紹介します。尿路に何が起こっているか、どんな治療オプションにがあるかを図を用いてわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 尿管閉塞とは 尿管とは何かをまず解説します。尿管とは、腎臓と膀胱を繋ぐ細い管です。腎臓でつくられた尿を膀胱に送り届ける働きがあります。 尿管閉塞とは、何らかの原因(結石、プラグ、腫瘍)によって尿管が詰まって尿が流れなくなってしまうことです。プラグとは、炎症細胞だったり、結石になる前の結晶が集積してできた粟粒状のカスでできた栓を指します。 尿管閉塞は片側の場合と両側の場合があります。片側の尿管閉塞では反対側の腎臓と尿管が機能している限り尿は出続け、臨床症状が現れることはありません。 両側の尿管閉塞が生じると、腎臓で作られた尿の行き場がどこにもなくなるので、尿が出なくなり、体に毒素がたまり臨床症状が出ます。 尿道閉塞と異なり、尿を出そうと力んだり、トイレで痛がったりすることはありません。尿管閉塞で現れる臨床症状は、お腹の痛み、食欲不振、嘔吐、体重減少、元気消失などです。尿管結石は非常に痛いので、お腹を触られたりすることを嫌がります。そして体内から出されなければいけない毒素が体に蓄積されるので、気持ちが悪くなったりしんどくなります。 最終的に、閉塞が解除されないと、不整脈が出て死に至ることもあります。両側が完全に閉塞していた場合、緊急的な処置が必要になります。 ここからは、このような状態に陥ったとき、動物病院ではどんな処置が施されるかをご説明していきます。 初期安定化 不整脈の治療 K (カリウム=potassium)を下げる治療 腎瘻チューブの設置 この病気は、完全に両側の尿管が詰まっている場合には外科治療が必要です。原因が何であれ尿管の閉塞を解くことが治療のゴールとなります。しかし病態が進行しすぎていると、不整脈でなくなってしまう可能性があります。なので、まずは手術まで進めるように安定化をする必要があります。 不整脈の原因となる物質はバナナなどに多く含まれる、K(カリウム=pottasium)という電解質になります。カリウムは、血液中に多すぎても少なすぎても致命的になる物質です。本来は尿として排泄されなければならないところ、尿管が閉塞してしまうことで、体内に蓄積してしまいます。 カリウムが高くなりすぎると、不整脈が出ます。細かくいうと、徐脈(心拍数が遅くなる)になり、血圧が低下して循環が保たれなくなります。よって、不整脈とカリウムをコントロールする内科治療が一番に必要になります。 腎瘻チューブの設置 安定化が行われた後は、手術をいち早く行うことが重要です。しかし、手術が必ずしもいますぐにできる状態ではない場合もあります。例えば、かかりつけの病院では手術できる人がいないので大学病院に転院する必要がある、などです。内科治療を行ったとしても原因は除去されていないので、すぐにまた危険な状態に陥ってしまいます。 そこで、一時的に尿を腎臓から直接排泄させるための管、腎瘻チューブの設置、という手段があります。この方法では、皮膚と通して腎臓に針を進め、腎臓の尿が溜まっている部位から直接尿を抜くことができます。 腎臓に穴を開けているので、侵襲性は高く、感染や出血の合併症が生じることがあります。この処置は、手術がすぐに行える場合には必要ありません。救済処置で、手術までの時間稼ぎとして用いられる場合があります。 手術オプション 手術のオプションは、尿管閉塞の原因や患者さんの様態、獣医さんの方針、病院にある機材やデバイスの有無によって大きく異なります。 例えば、完全に両側が閉塞していない場合、内科的な治療の適応になることもあります。運がいい場合は、点滴によって排尿を促すことで、部分的に閉塞した結石などが膀胱に落ちるのを待つことができる場合もあります。 ここでは、両側の尿管が完全に閉塞した場合、一般的に大学病院で挙げられる、手術オプションをご紹介します。患者さん全てに当てはまるわけではないので、担当の獣医さんとよくご相談の上、治療方針を決定するようにしてください。 尿管閉塞の治療オプションは大きく以下の3つになります。 結石をとる=尿管切開という手術方式を用います。お腹を開け、尿管を切って、結石を取り出し、縫合によって全て下に戻していきます。 尿管ステントとは、石を取った後の尿管に管を通して、再発を予防する措置になります。 SUBシステム設置とは、腎臓から膀胱にかけて、人工的な尿管を設置して尿の迂回路を作る手技になります。 長くなってきたので、これらの手術に関しては【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿管閉塞を図でわかりやすく解説②で詳しくご紹介していきます。 [/read_more]

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿道閉塞を図でわかりやすく解説

    【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿道閉塞を図でわかりやすく解説

    この記事の内容 犬の尿道閉塞とは 初期安定化 尿道閉塞後の内科治療 犬の尿道閉塞解除後の治療オプション 役立つ英単語 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、様々な犬の尿道閉塞についてご紹介します。尿路に何が起こっているか、どんな治療オプションにがあるかを図を用いてわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 尿道閉塞とは 尿道とは膀胱と外界を繋ぐ管のことです。腎臓でつくられた尿を膀胱から外界に排泄する機能を持ちます。 オスとメスでは尿路の解剖が異なります。 オスの尿道はメス犬の尿道に比べ、長く湾曲して、先細りになっています。よって、尿道閉塞のリスクがメス犬よりも高くなります。 尿道が閉塞する原因は様々ですが、圧倒的に多いのは、尿道結石です。尿路閉塞に関して、こちらで詳しく説明しているので、この記事では端折ります。 初期安定化 不整脈の治療 K (カリウム=potassium)を下げる治療 膀胱穿刺 尿道閉塞は、原因が何であれ尿道の閉塞を解くことが治療のゴールとなります。しかし病態が進行しすぎていると、不整脈で亡くなってしまう可能性があります。なので、まずは処置を安全に行えるように安定化をする必要があります。 不整脈の原因となる物質はバナナなどに多く含まれる、K(カリウム=pottasium)という電解質になります。カリウムは、血液中に多すぎても少なすぎても致命的になる物質です。本来は尿として排泄されなければならないところ、尿道が閉塞してしまうことで、体内に蓄積してしまいます。 カリウムが高くなりすぎると、不整脈が出ます。細かくいうと、徐脈(心拍数が遅くなる)になり、血圧が低下して循環が保たれなくなります。よって、不整脈とカリウムをコントロールする内科治療が一番に必要になります。 膀胱穿刺 パンパンな膀胱はお腹の中でいつ破裂してしまうかわかりません。不整脈の治療と同時に、とにかく膀胱を萎ませてあげる処置を行います。 膀胱穿刺とは、お腹の皮膚から膀胱に針を進め、貯留した尿をいったん抜き取る救命処置になります。原因である尿道閉塞が解除されない限り、また尿が溜まってしまうので、膀胱穿刺は次のステップまでの時間稼ぎとして利用されます。 尿路の確保、という意味での次のステップは、尿道カテーテルの設置になります。尿道カテーテルとは、その名の通り、尿道に管を通し、膀胱から外界を直接つなぐ人工的な管です。このカテーテルをバッグに繋いでおくことで、持続的に膀胱を空にすることができます。 尿道に石が詰まっている場合、カテーテルから生理食塩水を注入し、水圧をかけて閉塞物をフラッシュしながら膀胱まで進めていきます。 バルーンカテーテルと言って、先端が膨らむタイプのカテーテルが主流になっています。カテーテルの先端が膀胱まで挿入されてからバルーンを膨らませることで、カテーテルが抜け落ちてしまうリスクを防ぎます。 ここまできたら再び尿毒症になる心配はありません。尿路が確保されたら、尿道閉塞の原因がなんだったかの診断に移ります。そして、原因に応じた治療法を選択していきます。 尿道閉塞後の内科治療 重症度にもよりますが、尿道閉塞が起こったわんちゃんは、解除後入院管理が必要になります。 尿道閉塞で臨床症状が出るほど進行した場合、「閉塞解除後利尿」と言った現象が起こります。これは、尿道や尿管が閉塞していた時間が長いほど、閉塞が解除された後に利尿がかかり、すごい量の尿が産生されるという現象です。 通常の5-10倍、もしくはそれ以上の尿が産生されます。ここで気をつけなければいけないのは、尿道閉塞を解除した後にすぐに退院して、いつもと同じ量の飲水をした場合、重度の脱水、ミネラルバランスの異常が生じるということです。 せっかく尿道閉塞が解除されたのに、脱水やミネラルバランスの異常でまた具合が悪くなっては元も子もないですね。 よって、尿道閉塞解除後は数日間、入院をして、尿量に合わせた点滴やミネラルの補充が必要になります。 犬の尿道閉塞解除後の治療オプション 膀胱切開(膀胱内の結石を取り出す) 尿道切開(尿道の結石) 内科治療 尿道瘻形成術 なぜ尿道閉塞が起こったか、がレントゲンや超音波検査によって判明したら、原因治療に進みます。結石が原因の場合、尿道内に結石があるかないかで、必要な手術が異なります。 膀胱切開(膀胱内の結石を取り出す) 結石の場合、カテーテルを通した時点で結石は膀胱内に落ちているはずなので、膀胱結石の治療をすればいいということになります。 結石の性質(ストルバイト)によっては、食事療法で溶けてくれます。しかし、結石が膀胱内にある限り、尿道閉塞が再び起こる可能性があります。 一度結石で閉塞を起こした場合は、また同じように尿道が結石によって閉塞する可能性があります。閉塞が解除されている限り緊急手術は必要ありませんが、速やかな手術計画を建てることが推奨されます。 手術は至ってシンプルで、お腹、膀胱を切開(メスで切る)して全ての結石を取り除き、切った膀胱とお腹を閉める、というものです。 ここで重要になってくるのは、一度結石ができたワンちゃんは、残念ながら何もしないとまたできてしまします。なので、手術と合わせて、その後の結石予防(食事療法)が非常に重要になります。 尿道切開 結石が強固に尿道内に固着している場合に、尿道カテーテルを設置できないことがあります。その場合、膀胱穿刺で膀胱内の尿を定期的に吸引し、時間稼ぎをしている間に、できるだけ早く結石を取り出す手術を行います。基本的には緊急的な手術になります。…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿道閉塞の安定化・診断・治療費

    【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿道閉塞の安定化・診断・治療費

    この記事の内容 尿道閉塞の安定化、安定化にかかる費用 尿道閉塞の原因を診断するための検査、費用 入院期間、入院費用 手術が必要な場合の大まかな見積もり 支払いが難しい場合の対処法 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では尿道閉塞にかかる大体のコストをまとめていきます。アメリカの大学病院(二次病院と言われるような専門医がいる病院)の値段を参考までにご紹介します。病院によっても差があります。注意していただきたいことは、アメリカの大学病院は、街の動物病院よりも費用が高いということです。なぜなら、それぞれの科に専門医がいて、その道のプロから治療を受けられるためです。 具体的な費用は獣医さんが患者さんを実際に見てみるまでわかりませんが、大学病院で、重度の尿道閉塞の猫ちゃんを退院させるまでのコストは$1500-2000ほどです。手術が必要な場合、トータル$3500-5000ほどかかります。 この記事では、推奨される検査と治療、それぞれにかかる大体のコストの一例(2022年7月現在)をご紹介していきます。実際の価格とは異なると思いますので、最終的には各施設にて確認してください。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 尿道閉塞の安定化にかかる費用 初期安定化① 大学病院のエマージェンシーで、緊急症例がきた場合、ゆっくりと問診している時間がない場合もあります。その場合、獣医師や学生が、問診を始める前にstabilization(安定化)/CPR(心配蘇生)の許可を求めます。安定化の費用は約$300で、含まれている内容は以下になります。 エマージェンシーサービス(emergency service admission fee) 静脈留置のアクセス確保(IV catheter) 身体検査(Physical examination) 簡易超音波検査(感度の低い超音波で、胸腔、腹腔内の重大な異常を調べる※) 簡易血液検査(貧血、低血糖、低循環を調べるための簡単な検査) 点滴(IV fluid) 鎮痛剤(pain medication) 鎮静剤(sedation) 酸素供給(Oxygen supplementation) ※専門医の公式の超音波検査とは異なります。あくまで#8221;簡易#8221;超音波なので、得られる情報は限られます。 ここまではstabilizationの許可によって、飼い主さんより許可を一回一回確認せずに処置を優先して行える範囲になります。点滴などで状態が改善したら、状況に応じた診断、治療、プランの相談に移ります。 初期安定化② 尿道閉塞が重度の場合、以下の治療による安定化が必要になります。状況がそれほど深刻でない場合は、ここはスキップされるかもしれません。 不整脈の治療 K (カリウム=potassium)を下げる治療 膀胱穿刺 不整脈、K(カリウム)のコントロール 尿道閉塞は、原因が何であれ尿道の閉塞を解くことが治療のゴールとなります。しかし病態が進行しすぎていると、不整脈で亡くなってしまう可能性があります。なので、まずは処置を安全に行えるように安定化をする必要があります。 不整脈の原因となる物質はバナナなどに多く含まれる、K(カリウム=pottasium)という電解質になります。カリウムは、血液中に多すぎても少なすぎても致命的になる物質です。本来は尿として排泄されなければならないところ、尿道が閉塞してしまうことで、体内に蓄積してしまいます。 カリウムが高くなりすぎると、不整脈が出ます。細かくいうと、徐脈(心拍数が遅くなる)になり、血圧が低下して循環が保たれなくなります。よって、不整脈とカリウムをコントロールする内科治療が一番に必要になります。 膀胱穿刺 パンパンな膀胱はお腹の中でいつ破裂してしまうかわかりません。不整脈の治療と同時に、とにかく膀胱を萎ませてあげる処置を行います。 膀胱穿刺とは、お腹の皮膚から膀胱に針を進め、貯留した尿をいったん抜き取る救命処置になります。原因である尿道閉塞が解除されない限り、また尿が溜まってしまうので、膀胱穿刺は次のステップまでの時間稼ぎとして利用されます。 尿道カテーテルの留置 尿路の確保、という意味での次のステップは、尿道カテーテルの設置になります。尿道カテーテルとは、その名の通り、尿道に管を通し、膀胱から外界を直接人工的な管です。このカテーテルをバッグに繋いでおくことで、持続的に膀胱を空にすることができます。 尿道に石やプラグが詰まっている場合、カテーテルから生理食塩水を注入し、水圧をかけて閉塞物をフラッシュしながら膀胱まで進めていきます。バルーンカテーテルと言って、先端が膨らむタイプのカテーテルが主流になっています。カテーテルの先端が膀胱まで挿入されてからバルーンを膨らませることで、カテーテルが抜け落ちてしまうリスクを防ぎます。…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】猫の尿路閉塞を図でわかりやすく解説

    【アメリカでペットと暮らす方へ】猫の尿路閉塞を図でわかりやすく解説

    この記事の内容 猫の尿路閉塞とは 猫の尿路閉塞の種類 役立つ英単語 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、様々な猫の尿路閉塞についてご紹介します。「尿が出ていない」時にどのような病気が考えられるかを図でわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 尿路閉塞とは 腎臓で作られた尿が尿管、膀胱、尿道、陰茎のどこかしらが閉塞、うっ滞して、尿を排泄できなくなる状態を尿路閉塞と言います。どこの部分で閉塞が生じていても尿路閉塞、と言います。また、どこで閉塞が起きているか、なぜ閉塞が起きているかによって、診断方法、治療方法が異なります。 尿が出ない=尿路閉塞でもありません。尿が出なくなる病気は、物理的な閉塞以外にもたくさんあります。例えば、腎不全が進行したり、腎臓に菌が感染したり、中毒によっても「尿が出ない」という症状が現れます。 まずは物理的な閉塞であること、そしてどの部位が閉塞しているかを確認するところから診断治療が進んでいきます。 猫の尿路閉塞の種類 閉塞部位 尿管(尿管閉塞)Ureter: ユレターと発音します 尿道(尿道閉塞)Urethra: ユリスラ(thの発音に注意)と発音します 尿管と尿道、名前が紛らわしいので以下の図で確認してください。猫の尿路の解剖はこちらのページでも詳しく説明しているのでご参照ください。 英語バージョン 英語の発音は結構難しいです。どちらもカタカナでは表しきれないので、以下の動画で発音確認してみてください。 尿管閉塞 尿管は左右2本あり、それぞれの腎臓から膀胱へ尿を運ぶ役割があります。どちらか一方が詰まっても、反対側の腎臓、尿管が機能していれば症状が出ることはありません。両方の尿管が閉塞した時に初めて「おしっこが出ない」という症状が出ます。 片側尿管閉塞 両側尿管閉塞 尿道閉塞 尿道は、膀胱と外界を繋ぐ管です。何らかの原因で道が塞がれると「おしっこが出ない」という症状が現れます。以下の図は膀胱から尿道にかけてできた腫瘍によって尿道が閉塞した図です。 さて、ここまでで尿路のどこが詰まる可能性があるかをみてきました。ここからは、閉塞の原因についてみていきましょう。 閉塞物質 結石:stone プラグ(炎症細胞や結晶によって形成される栓子): plug 腫瘍: cancer, tumor, neoplasia 血餅(稀): blood clot 結石 結石にも種類があります。種類によって、治療方法が異なります。簡単にいうと、ストルバイトは食事療法で溶けます。シュウ酸カルシウムは食事を変更しても溶けないので、手術が必要になります。 尿道結石についてはこちらのページで詳しく説明しているのでご参照ください。 尿道栓子 尿道栓子と言って、尿中に浮遊するカスが集積して細い尿道を詰まらせることがあります。このカスには、結晶(結石になる前のクリスタル)や炎症細胞、膀胱の粘膜から剥がれ落ちた細胞などが含まれます。 腫瘍 膀胱や尿道にできる腫瘍は、尿路を圧迫し閉塞を起こす可能性があります。また、尿路の周辺にある臓器(結腸やリンパ節)に腫瘍ができることでも尿路閉塞が起こります。 血餅(血の塊) 稀ではありますが、血餅(血の塊)が尿道に詰まることもあります。膀胱炎などで、膀胱の中に血の塊ができ、それが尿道に詰まってしまうような病態です。 便利な英単語 urinary…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿路閉塞を図でわかりやすく解説

    【アメリカでペットと暮らす方へ】犬の尿路閉塞を図でわかりやすく解説

    この記事の内容 犬の尿路閉塞とは 犬の尿路閉塞の種類 役立つ英単語 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、様々な犬の尿路閉塞についてご紹介します。「尿が出ていない」時にどのような病気が考えられるかを図でわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 尿路閉塞とは 腎臓で作られた尿が尿管、膀胱、尿道、陰茎のどこかしらが閉塞、うっ滞して、尿を排泄できなくなる状態を尿路閉塞と言います。どこの部分で閉塞が生じていても尿路閉塞、と言います。また、どこで閉塞が起きているか、なぜ閉塞が起きているかによって、診断方法、治療方法が異なります。 尿が出ない=尿路閉塞でもありません。尿が出なくなる病気は、物理的な閉塞以外にもたくさんあります。例えば、腎不全が進行したり、腎臓に菌が感染したり、中毒によっても「尿が出ない」という症状が現れます。 まずは物理的な閉塞なのかどうか、物理的な閉塞であった場合、どの部位が閉塞しているかを確認するところから診断治療が進んでいきます。 犬の尿路閉塞の種類 閉塞部位 尿管(尿管閉塞)Ureter: ユレターと発音します 尿道(尿道閉塞)Urethra: ユリスラ(thの発音に注意)と発音します 尿管と尿道、名前が紛らわしいので以下の図で確認してください。 英語バージョン 英語の発音は結構難しいです。どちらもカタカナでは表しきれないので、以下の動画で発音確認してみてください。 尿管閉塞 尿管は左右2本あり、それぞれの腎臓から膀胱へ尿を運ぶ役割があります。どちらか一方が詰まっても、反対側の腎臓、尿管が機能していれば症状が出ることはありません。両方の尿管が閉塞した時に初めて「おしっこが出ない」という症状が出ます。 片側尿管閉塞 両側尿管閉塞 尿道閉塞 尿道は、膀胱と外界を繋ぐ管です。何らかの原因で道が塞がれると「おしっこが出ない」という症状が現れます。以下の図は膀胱から尿道にかけてできた腫瘍によって尿道が閉塞した図です。 さて、ここまでで尿路のどこが詰まる可能性があるかをみてきました。ここからは、閉塞の原因についてみていきましょう。 閉塞物質 結石:stone プラグ(炎症細胞や結晶によって形成される栓子): plug 腫瘍: cancer, tumor, neoplasia 血餅(稀): blood clot 結石 結石にも種類があります。種類によって、治療方法が異なります。簡単にいうと、ストルバイトは食事療法で溶けます。シュウ酸カルシウムは食事を変更しても溶けないので、手術が必要になります。 尿道結石についてはこちらのページで詳しく説明しているのでご参照ください。 尿道栓子 尿道栓子と言って、尿中に浮遊するカスが集積して細い尿道を詰まらせることがあります。このカスには、結晶(結石になる前のクリスタル)や炎症細胞、膀胱の粘膜から剥がれ落ちた細胞などが含まれます。 腫瘍 膀胱や尿道にできる腫瘍は、尿路を圧迫し閉塞を起こす可能性があります。また、尿路の周辺にある臓器(結腸やリンパ節)に腫瘍ができることでも尿路閉塞が起こります。 血餅(血の塊) 稀ではありますが、血餅(血の塊)が尿道に詰まることもあります。膀胱炎などで、膀胱の中に血の塊ができ、それが尿道に詰まってしまうような病態です。 便利な英単語 urinary…

  • 犬・猫の口腔内検査で何を見つける?

    犬・猫の口腔内検査で何を見つける?

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、口腔内検査で何を探すか、どんな病気を診断/除外できるか、なぜ重要かについてご説明します。 ただ漠然と口の中を見るのと、「これを探す!」と目的を持って行うのでは、見逃しが少なくなります。異常を見つけられなかった時に、「これはチェックした?ここは?」と問い詰められて、「うっ、、、」となってしまわないように、網羅的な検査ができるようになることがこの記事の目的です。 口腔内検査の重要性 咳、もしくはレッチング、ギャギング、嘔吐を主訴に来た患者さんを想定してみましょう。 これらの主訴で来られると、ついつい気管、肺、食道、胃などの体の内部に焦点が当たりがちです。身体検査をすませ異常が見つからなかった場合、レントゲン、腹部エコーに進むことが多いのではないでしょうか。 レントゲンもエコーも何もなかったから、ケンネルコフかな?急性の胃腸炎かな?と言って対症療法を開始したとしましょう。数日後、症状がひどくなっていると再診。全身麻酔下でCTに進もうとした時、挿管の際に扁桃腺の腫脹が見つかった、なんてことはあまり経験したくないですね。 もちろん、扁桃腺の腫脹をさらに精査するために、CT検査、FNA検査、バイオプシーなどが必要になることもあります。しかし、初診時に口腔内検査をしっかりと行うことで、扁桃腺の腫脹に気がつくことができれば飼い主さんへのインフォームや、治療プランが変わった可能性があります。 口腔内検査は、鎮静なしにはなかなか難しい検査です。快く口を大きく開けさせてくれる患者さんは多くありません。一瞬でもいいから!と思ってぱっとみて、「はい大丈夫!」というのは果たして正しいでしょうか、、、?この記事の後半では、口腔内検査では、何をルールアウト(除外)しなければいけないかということを解説していきます。 いつ口腔内検査を行う? 口腔内検査を行うのは、飼い主さんから「口に違和感がある」と教えてもらった時に限りません。 「この病態が鑑別診断に入るから、口腔内検査を行うべき」としっかりとした根拠の上で、やるならしっかり鎮静下でやるようにしましょう。 さて、それでは口腔内検査はどんな主訴の時に行うべきなのでしょうか。 唾液過剰分泌から下の主訴の場合は、口腔内検査が必要なのは明らかかと思います。しかし、最初の4つの主訴の時に、「口の検査を鎮静をかけて行いましょう。」と自信を持って言えるでしょうか。私が日本で働いていた時は、すぐに画像検査に飛びついていた記憶があります。 ここで自信を持って、飼い主さんに「鎮静をかけて口腔内検査をしましょう」と言えるかどうかは、鑑別診断がしっかりと頭でイメージできているかどうかが鍵となります。 口腔内検査で何を探す? 実際にレアな症例に遭遇すると、鑑別診断にその病気を入れることがその後本当にたやすくなります。しかし、私はまさにそうでしたが、レアな病態に出会わないうちは「こんなこと起こらないだろう」と心のどこかで、その可能性を勝手に除外してしまうのです。 鑑別診断を考えないことに慣れてしまうと、咳#8211;gt;レントゲン、嘔吐#8211;gt;レントゲン/エコー/血液検査というように、シンプルにこれが来たらこれ、と決めつけるようになってしまします。 もちろんその検査があらゆる鑑別診断を網羅するようなものであれば、どこかしらで引っかかってくれる可能性は高いです。しかし、獣医師として、最低限の検査で最大の情報を得るというスキルが非常に重要になります。 口腔内検査は、鎮静をかければ無料でできる検査です。これで解決できる問題があるなら、コスパ最強ですね。それでは、口腔内検査を武器に、何が検出できるかを考えていきましょう。 以下のイラストを見てください。何が隠れているでしょうか。これらは、鎮静なしのぱっとみ口腔内検査で検出できるでしょうか。 これらは、咳、ギャギング、レッチング、そして嘔吐と飼い主さんに表現されうることが容易に想像できるかと思います。 このほかにも、 などが口腔内検査で検出できる異常です。これらが鑑別診断に入る場合、口腔内検査が有用になります。これをイメージした上で初めて、飼い主さんに「これらの病態の可能性もあるので、今日は少し鎮静をかけて口の中を評価しましょう」と自信を持って言える様になるのではないでしょうか。 さらに、喉頭周囲の病気であれば、喉頭鏡を用いて、舌をしたにグイって押して喉頭を全体的に観察する必要があります。喉頭をみたこともない状態では、異常にも気が付けませんね。 実際に見てみよう 英語の動画ではありますが、喉頭の解剖、正常な外見がよくわかる動画も併せてご覧ください。 この動画では、内視鏡を用いて、十分な鎮静をかけているので、非常に見易いですが、実際の臨床現場での軽度な鎮静と目視の場合、ここまで綺麗にペットが不動の状態で観察する事ができないかもしれません。 軟口蓋の過長がある場合、どの様に見えるかがこちらの動画でわかりやすくみられます。 口腔内検査の方法 口腔内の検査のキーポイントは、見落としなく、素早くです。万全の準備をした上で鎮静をかける様にしましょう。必要なものは以下になります。 喉頭を観察するために、喉頭鏡は必須です。挿管する時の様に、口を大きく保定者に開けてもらい、舌を下に引っ張って喉頭鏡で舌の基部を押すことで喉頭が見える様になります。 そして、軟口蓋が長い場合などは、長めの棒であるトングディプレッサー(木べら)や綿棒を用いて邪魔な組織を避けて観察する様にします。 まとめ

  • ショックとは何か?/わかれば怖くない動物救急医療

    ショックとは何か?/わかれば怖くない動物救急医療

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で、救急集中治療の専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、患者さんの生死を左右するショックについて解説します。緊急患者さんの命を救うのに最も重要な基礎知識です。 救急集中治療科に実習にくる獣医学生に必ず教える必修項目です。ショックの患者さんをどう安定化させるかに直結する知識なので、しっかりと学んでいきましょう。 ショックの病態を理解することはなぜ重要? 患者さんが亡くなる原因はショックです。ショックの原因が何であれ、ショックを正しく治療してあげないと患者さんは亡くなります。 ショックの病態を理解した上で、「この病態でショックに至っているからこの治療をする」と自信を持って治療を行えることが、ショックについて学ぶゴールです。 ショックとは ショックとは、エネルギーの供給が需要に追いつかない状態です。 体内で最も重要なエネルギーとはATPです。 なのでショックを言い換えると、「ATPの供給が需要を下回る」になります。 そして、ATPを産生するために最も重要なのがグルコース、そして酸素になります。 ショックをさらに言い換えると、 ショックの結果 ショックの原因の解説の前に、ショックの結果起こることに触れておきます。 ショック(ATPの欠如)によって、最も影響を受けるのが全ての細胞が持つNa/Kチャネルです。ATPの供給が不十分だと、このチャネルが機能しなくなり、細胞機能不全、細胞死、多臓器不全、最終的に患者さんの死に直結します。 重症患者さんの管理において、患者さんを死なせないためには、ショックに陥らせないようにすることが最も重要なのです。 すでにショック状態の場合、患者さんを救命するためにショックを攻略する必要があるのです。 ショックの原因 前置きが長くなりましたが、いよいよショックの原因に話を移します。 ショックの原因は様々ですが、根本は のどちらかです。①から見ていきましょう。 グルコースが利用できない状況 患者さんの循環状態、呼吸状態に問題がなかったとしても、グルコースが利用できない状況では、患者さんはショックに陥ります。 どのような状況が考えられるかというと、低血糖や糖尿病の最終形態であるDKAです。 この状況を除外するのは、とても簡単です。血糖値を測定すれば、重度な低血糖、もしくは糖尿病による高血糖を除外する事ができるからです。 酸素の供給が需要を下回る 酸素の供給が需要を下回る状況を考えていきましょう。 ショックとは、需要と供給のバランスの問題です。つまり、酸素の供給が低下したときに加え、需要が増加したときにも、このバランスが崩れることになります。 様々な要素が、酸素の需要、供給を決定します。 この記事では、概要の解説に留めますが、それぞれの病態を別の記事で詳しく解説しています。しつこいようですが、これらの知識は救急医療と切り離せない概念になります。 酸素供給 酸素は大気中から気道を通り、肺胞を介して、血液中に入ります。酸素は血液のヘモグロビンと結合するだけでなく、血漿に溶け込みます。 血液が心臓から拍出され、ヘモグロビンと結合した酸素が解離する事で、組織に酸素を受け渡します。 大きく、以下の3点(酸素化、血液の運搬、酸素の受け渡し)が重要になります。 これらのいずれか一つでも異常が生じた場合に需要と供給のバランスが乱れることになります 酸素化の異常 酸素化に問題が生じるとき、その原因を大きく二つに分類する事ができます。 この場合、いくら心臓がしっかりと血液を臓器に運ぶことができても、酸素は組織に届けられることはありません。 血液の運搬異常 血液運搬の異常とは、血液が酸素化されているのにも関わらす、血液をうまく循環できないことで酸素を供給することができない状態です。 血液が心臓から各臓器へとうまく運べない病気の例として、心臓病(DCMや僧帽弁閉鎖不全症)や、血管の異常(敗血症やアナフィラキシーショックによる血管拡張)があります。 酸素の受け渡しの異常 酸素が含まれた血液が、届けたい臓器に行き渡ったのにも関わらず十分な酸素を組織に届けられない状況が最後のカテゴリーです。 貧血の患者さんでは、肺で血液に酸素を取り込むことができ、さらに心臓のポンプ機能によって血液が組織へ到達することもできます。しかし、赤血球が少ないために、受けわたせる酸素の不足が生じます。 そして、組織毒性とは、組織が目の前にある酸素を利用できなくなる状態です。一般的に見られる病態ではありませんので、このような病態のショックもあるんだなー、というレベルに抑えていただければいいかと思います。 酸素需要の増加 次に、組織の酸素需要量が増大する例として、代謝の上昇が挙げられます。発熱、発作、甲状腺機能亢進、敗血症などで臓器が普段よりも多くエネルギーを必要とするような状況で供給される酸素を使い果たしてしまうような状態が生じます。 ここまでで、ショックとは酸素の需要と供給のバランスが崩れたときに起こる結果という事がわかっていただけたでしょうか。 こちらの記事で、実際にどのようなショックの病態があるかをご紹介していきます。 まとめ これらのショックの原因を突き止めて、それに合わせた治療を行うことで、救命につながります。どのようにショックの患者さんを見つけるかについてはこちらの記事もご覧ください。

  • 酸素運搬量(DO2)とは?ショックを理解するために必要な知識

    酸素運搬量(DO2)とは?ショックを理解するために必要な知識

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で、救急集中治療の専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、ショックの病態の理解を深めるための、酸素運搬量について解説します。ショックとは何か?という記事を先に見ていただけるとこの記事の内容もすっと入ってくるはずです。 酸素の運搬量はショックの病態と直結 酸素の運搬はショックの病態に直結しています。 ショックの定義を思い出してみましょう。エネルギーの需要が供給を上回る状態、つまり、エネルギー産生に必要な酸素の需要が供給を上回った状態をショックと呼ぶのでした。その状態が患者さんを死にいたらしめる緊急事態なのでした。 酸素運搬量が体でどのようにコントロールされているかを理解することで、ショックに至っている患者さんの酸素運搬量を効率よくサポートしてあげる事ができるようになります。 酸素運搬量(DO2)とは 酸素運搬量(DO2= delivery of oxygen)とは、難しい響きがありますが、要するに1分間に酸素を何ml運べるかです。 以下2つの要素によって、1分間にどれだけ酸素が運べるかが決まります。 心拍出量(CO)とは それでは、酸素運搬量を決定する心拍出量から理解していきましょう。COはCardiac outputのアブリビエーションになります。 心拍出量とは、1分間に何mlの血液が心臓から拍出されるか(全身に送られるか)です。 心拍出量は心拍数(HR)と一回拍出量(SV: stroke volume)によって決定されます。 心拍数はご存知の通り、心臓が1分間に何回拍動するか。 一回拍出量とは、心臓1回の収縮によって、何mlの血液が送り出されるかです。この量を決定するのが以下の3つの要素です。 酸素含有量(CaO2)とは そして血中の酸素の量とは、1dlの血液中に、何mlの酸素が含まれるかです。CaO2とは、Contents of arterial oxygen (動脈血の酸素含有量)です。 血液1dl中に含まれる酸素は、血漿に溶解される酸素と、ヘモグロビンに結合する酸素の合計です。 この式につく係数は、ヘモグロビンに結合する酸素の方が、血漿中に溶解する酸素よりもよっぽど効率がいいことを表しています。 Tree of life 酸素運搬量に寄与する要素がこれで全て整いました。 この樹形図のことをTree of Lifeといいます。 酸素運搬量が需要量を下回る=ショックと定義されているため、これらのいかなる要素が極度に減少することで動物はショックに陥るということです。 逆にいうと、全てのショックはこのTree of Lifeに当てはめる事ができます。こちらの記事で、様々な病態のショックをこの要素に当てはめる実践的な解説を行なっています。 ショックのサインは、これらの代償反応を見ている ショックのサインは意識レベルの低下、心拍数の変化(犬で頻脈、猫で徐脈)、可視粘膜の蒼白、CRTの延長、脈質の低下、四肢冷感です。 このうちの、頻脈、可視粘膜の蒼白、CRTの延長、四肢冷感は、Tree of Lifeで1カ所に障害が起こったとき、他の要素が補うように酸素運搬量を増加させる代償反応なのです。 まとめ ここまで理解できたみなさま、お疲れ様でした。なんだかショックが怖くなくなった気がしませんか?原因がわからずどうしていいかわからないと、恐怖を伴いますが、ここまでしっかりとショックを理解してしまえば、緊急対応も怖くなくなります。とにかく安定化させた上で、じっくりとプランを立てればいいのですから。 みけぶろぐにのせたショックの内容は、私がエマージェンシー科とICU科に実習にくる獣医学生に必ず行う内容になります。この科の核とも言える大事な知識です。このブログを通して、日本の皆さんにもうまくシェアできたら嬉しいと思っています。

  • チアノーゼとはどのくらい重度な低酸素血症でみられる?

    チアノーゼとはどのくらい重度な低酸素血症でみられる?

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で、救急集中治療の専門医になるためのレジデントをしています。 チアノーゼ=低酸素=酸素供給!!となるのは正しいです。しかしこの記事では、もう一歩踏み込んで、チアノーゼが出ていたらどのくらい重症な状況か考えていきましょう。 難しい内容になるので、全て理解する必要はありませんが、「チアノーゼじゃないから大丈夫」という考えがいかに間違っているかを理解していただけたら嬉しいです。 低酸素血症とは 低酸素血症の定義は、PaO2(血漿中の酸素分圧)lt; 80 mmHgもしくはSaO2 (ヘモグロビンの酸素飽和度)lt; 95%です。 要するに血液中に酸素が少ないために、組織に酸素を供給できず、ATPを産生できなくなることでショック、死に至る可能性のある危険な状態です。 重度になると、舌の色が紫色になる(チアノーゼ)ことは有名かと思います。では、ここからはチアノーゼが見られている場合、どのくらい重度な低酸素血症かということについてお示しします。 チアノーゼはどれほど「やばい」状況か まず初めに必要になる知識ですが、「血液中の脱酸素化ヘモグロビンが5g/dl以上になると、舌が青くなるような変色がみられる」のです。 脱酸素化ヘモグロビンが5g/dl以上とはどういう意味でしょうか。 正常の犬の血液中のヘモグロビンは1dlあたり、12-20 g入っています(12-20g/dl)。わかりやすいようにある患者さんのヘモグロビン濃度が15g/dlだったとしましょう。 ヘモグロビン1粒(分子)には、4つの酸素分子がくっつき、体内に酸素を運ぶことができます。酸素と結合しているヘモグロビンを酸素化ヘモグロビン、結合していないヘモグロビンのことを脱酸素化ヘモグロビンとよびます。 チアノーゼがみられるようになるのは、このうちの5 g/dl以上が酸素と結合していない状態、そして残りの10g/dlは酸素と結合している状況ということになります。SaO2とは、動脈中の全体のヘモグロビンに対する酸素化ヘモグロビンの割合(%)を表します。よってこの場合、10/15=0.662=約66%ということになります。 SaO2を非侵襲的に測定をしたときに得られるのがSpO2にです。先ほど重度の低酸素血症がSo02lt;90%以下と定義されると書きましたが、この場合どうでしょう。SpO2は、、、66%!!!!となりますね。 チアノーゼ=低酸素(血症)=酸素供給!となるのは大正解なのですが、チアノーゼが出ている状態は激やばな状況、ということがわかっていただけたかと思います。 チアノーゼなし=大丈夫、、、ではない!! 上記の説明で、チアノーゼがどれほど深刻な状況でみられるものか、ご理解いただけたでしょうか。そして、チアノーゼが出ていなくても、SpO2が70%の可能性もあるということです。 最後に、チアノーゼが出なくても、重度な低酸素は除外できないということを説明します。 チアノーゼがみられるようになるのは5 g/dl以上のヘモグロビンが酸素と結合していない状態、と説明しました。これは、貧血の場合でも多血の場合でも同様、絶対的な濃度が5g/dlを超えるかが要になります。 脱酸素ヘモグロビンが青紫色をしていて、舌が青紫に見えるようになるのは、酸素化ヘモグロビンに対する相対的な量ではなく、絶対数が5g/dlを超えた時のみ、ということです。 貧血の場合はチアノーゼが出にくい、と言うことを聞いたことがあるでしょうか。その理由を説明していきます。 貧血の患者さんでヘモグロビン7g/dl(ヘモグロビンの正常12-20g/d)だったとしましょう。この患者さんのチアノーゼがみられた場合、5g/dlの脱酸素化ヘモグロビンを含むはずなので、これを元にのSpO2を計算してみましょう。 SpO2=酸素化ヘモグロビン÷合計のヘモグロビン=(7-5)÷7=0.14で14%になります。SpO2が14%になる頃には患者さんは残念ながら、低酸素で亡くなっていますね。 貧血の患者さんでは、よっぽどの低酸素血症になっても、チアノーゼがみられることがないのです。よって、チアノーゼがなくても必ずしも大丈夫とは言えない、ということになります。 (発展編)酸素解離曲線を利用して解説 酸素解離曲線については詳しくこちらのページで説明しているので、しっかり勉強したい方はご参考までに。ここでは、酸素解離曲線を用いてさらっと説明します。 酸素解離曲線とは、ヘモグロビンがどれだけ酸素と結合していられるかを示した曲線です。酸素との結合の強さは酸素分圧によって変化するので、X軸には酸素が占める分圧、Y軸には何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示すSaO2がきます。 赤血球が抹消組織に到達するまでに酸素がどれくらい手放されるかというと、SaO2 100-35%=65%となるので、65%のヘモグロビンが酸素を手放して組織に分散したことになります。 それでは次にSaO2 66%のチアノーゼの患者さんを見て見ましょう。PaO2でいうと、低酸素症状が出る60mmHgを下回り、35mmHgほどになります。 組織に供給される酸素は、SaO2 100%でスタートした場合と比較して半分くらいになっていることがわかります。これはちょっとやばそうですよね。 チアノーゼ=低酸素=酸素供給!で間違ってはいないのですが、この記事を読んで、チアノーゼがどれだけやばいかということが理解していただけたら嬉しいです。 まとめ

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~細胞膜と血管内皮のバリア~

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~細胞膜と血管内皮のバリア~

    この記事の内容 細胞膜と血管内皮が区切るものとは 何が通れて何が通れない? 物質の移動に対する水の移動 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 Emergency and Critical Careの分野では、輸液治療の知識が非常に重要になります。ICUに入院する患者さんのほとんどは輸液治療を受けています。入院管理では、それぞれの患者さんに、どの輸液製剤をどのくらいの速度でどれくらいの期間投与する予定なのかという輸液プランが必要になります。 輸液についてというシリーズでは、輸液治療について生理学から勉強しなおせるように、イラストを使って、わかりやすい言葉で解説していこうと思っています。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 細胞膜と血管内皮が区切るものとは 体の中には3つの区画(コンパートメント)があります。 細胞内 間質 血管内 水分はこの3つの区画を行き来します。この区画は、それぞれ細胞膜、血管内皮という仕切りによって区切られています。 Emergency and Critical Careの分野において、この区画を理解することが大事な大きな理由として、ショック治療が挙げられます。ショックの主な原因に、循環血液量の減少があります。循環血液量の減少は「脱水」としっかりと区別する必要があります。 循環血液量の減少は血管内の水分の減少 脱水は間質における水分の減少 輸液治療を行う際、どの区画に水を届けるかというターゲットが異なります。体内の区画、及び水がどのように移動するかを理解することで、正しい輸液製剤の選択、及び輸液プランがたてられるようになります。 何が通れて何が通れない? さて、次に考えたいことは、3つの区画を仕切る膜の性質についてです。 水分はこの3つの区画を自由に移動します。つまり、水はこれらの仕切りを通過することができます。 水が自分たちの意思で行きたいところに行くのではなく、しっかりとした法則に従い体内のホメオスタシスを保ちます。この水がどのように区画を移動するかは、体液中に含まれる分子の分布の影響を受けます。 それでは、体液中にどんな分子が存在するかを考え、どの物質はどの仕切りを通れるかを考えていきましょう。 体液中には大きく電解質(水に溶けると電気を通す物質)と電解質以外があります。 電解質=細胞膜はポンプがないと通れないが、血管内皮は自由に通れる タンパク質(アルブミン/グロブリン)=細胞膜も血管内皮も通れない 尿素=細胞膜も血管内皮も自由に通れる 水=細胞膜も血管内皮も自由に通れる 細胞膜を通過できるもの 水と尿素 細胞膜を通過できないもの 電解質 タンパク質 大きな分子の物質 血管内皮が通すもの通さないもの 血管内皮を通過できるもの 電解質 水と尿素 血管内皮を通過できないもの タンパク質 分子が大きな物質 体液中の物質の分布が、水の分布に影響を及ぼすと説明しました。それでは、これらの物質の分布がどのように水の分布に影響するかを考えていきましょう。 物質の移動に対する水の移動…