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  • 【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    この記事では、2024年のマッチングのスケジュールについて解説します。 候補者には、2回の締め切りがあります。この締め切りに何を提出するかなどをイメージして、期限前にしっかりと準備ができているようにしましょう。 2024年カレンダー 2023年9月1日プログラムエントリー 2024年のマッチは、前の年の9月から始まります。 プログラムのエントリーとは、各大学や動物病院がポジションの掲載をし始めることを指します。この間、候補者はまだこの情報を見ることはできません。 2023年10月1日プログラム検索 10月になって、初めて候補者がポジション(プログラム)を検索することができるようになります。この期間は、まだすべてのポジションが掲載されているとは限らないため、検索をし始めるのはいいですが、プログラムエントリーの締め切りまでは情報をアップデートし続ける必要があります。 2023年11月1日プログラムエントリーの期限と候補者の登録開始 ここでようやくすべてのポジション(プログラム)についての情報が出揃ったということになります。 この日から、候補者はマッチングプログラムに個人情報を登録をして、サインインできるようになります。 この期間に行わなければいけないことは大きく2つです。 ①プログラムのリサーチ プログラムに関する詳細の体外はマッチングのホームページに詳細が書いてあります。しかし、外国人の受け入れやビザの複雑な事情がある場合は、「きっとそうだろう」と仮定しないで必ず直接担当の方に問い合わせることをお勧めします。 それによって、広がる可能性もあれば、採用されないポジションに申し込んで自分の時間を無駄にすることも防げます。 ②パケット(必要書類を揃える) マッチングプログラムに必須となるパケットとは以下になります。 卒業した獣医大学の書類を集めるのに、時間がかかることもあるので、余裕を持って準備することをお勧めします。 履歴書、パーソナルステートメントを完成させるのに、私はものすごく時間を要しました。早めから取り掛かり、アメリカで獣医大学で働く先生などに添削してもらうことをお勧めします。 日本人の謙虚なステートメントは、アメリカ人からすると「自信のなさ」と捉えられてしまう可能性が高いです。よって、アメリカ人にとって見栄えの良いステートメントにするための努力が必要かもしれません。 私個人的な意見としては、このパケットの中で最も重要なのが推薦状です。そして、いい推薦状をもらうために1年間もしくはそれ以上努力をし続ける必要があります。誰に頼むかがキーとなります。大御所の先生の書いた、「弱いレター」と、無名の先生の書いた「強いレター」。おそらく後者の方が良い印象を与える可能性が高いです。「強いレター」をもらえる人から推薦状をもらうようにすることをお勧めします。 推薦状は、候補者を介さず、直接VIRMP協会へ送られることになります。よって、候補者は、自分のサインインページから、推薦状が提出されたかをみることはできますが、中身を見ることはできません。 推薦状がもしも期限ギリギリまで揃っていない場合は、書いてくれる人が忘れている可能性を考慮して、リマインドを送ることをお勧めします。もしも推薦状が申し込み締め切りまでに間に合わなければ、実質どこの学校ともマッチしない可能性が高いので気をつけましょう。 2024年1月8日申し込み締め切り この日が、上記に述べた2点(応募するプログラム及びパケット)のデッドラインになります。この2点以外にも、大学固有で必要な提出書類がある場合もあるので、しっかりと確認しましょう。 この申し込みが終わったら、次の締め切りまで何をするのでしょうか。 この間には、面接を受けたり、どのプログラムに行きたいか(もしくは行きたくないか)を決めるための情報収集を行います。 面接のオファーは大学側からくることが多いです。オファーをもらうということは、大学側があなたに興味がある証拠です。もしも面接のオファーが来なかった場合は書類で「可能性が低い」と捉えられた可能性が高いです。(ローテーティングインターンには面接を行わないことが一般的です) 日本から応募する場合、自分もそうでしたが、「どこでも良いから入れてくれ」状態になりがちです。実際そうなのですが、面接をする側としては、「どこでも良いならウチでなくてもいいな」と感じてしまう可能性が高いので、しっかりとプログラムの特徴を把握し、「このプログラムで勉強したいです」と伝えることをお勧めします。 2024年2月16日候補者のランキング締め切り マッチング最後の締め切りです。 ここでは、面接などで得た情報や感触をもとに、どの大学に行きたいかの順番を決めます。 「この大学には絶対に行きたくない」という場所があれば、その大学をランクから外すことで絶対にそこにマッチする可能性は無くなります。 また、何らかの事情によってマッチングから手を引きたい場合(来年から働けなくなる、など)はここで「withdraw」することで、どこにもランクしていない状態にすることができるので、ペナルティなくマッチを中断することができます。 万が一、マッチしてしまった大学で働けなくなった、という状況が起こった場合、マッチングプログラムに次から3年間申し込みすることができなくなる「ペナルティ」が課されることになるので注意しましょう。 2024年3月4日マッチ結果発表 候補者のランキングの後に、大学側の候補者のランキングが行われます。これによって、マッチングのアルゴリズムに沿ってだれがどこの大学のプログラムに入るかが決定することになります。 もしもマッチできなかった場合、スクランブルと言って、マッチできなかった候補者とマッチできなかった大学の個々の採用が始まります。スクランブルは、もはや早いもの勝ちと言ってもおかしくないシステムなので、自分から大学に積極的に連絡をとりに行く必要があります。 また、連絡が来る可能性もあるので、電話やメールにすぐに対応できるようにしましょう。 2024年3月18日情報開示 ここで、定員割れしたポジションの情報が、マッチングに申し込んだ人以外にも開示されることになります。誰でもあいたポジションを狙いにいける期間ということです。 終わりに この記事でマッチングのシステム(どの時期に何をしなければいけないか)を理解していただけたでしょうか。候補者としてやらなければいけないことはそこまで多くありません。ただ、様々な情報が飛び交ったり、他の人の話に流されたりと、とてもストレスがかかる時期と言ってまちがいないでしょう。 準備をしっかりすることで、少しでもチャンスが大きくなる可能性があります。寒い時期で辛いですが、みなさん頑張ってチャンスを掴んでください。

  • 【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【呼吸困難の原因】についてのインスタグラムの投稿です。 呼吸困難は11種類の病態に分けることができます。 解剖学的にどこに問題があるかで、安定化のアプローチが異なってきます。 これらを呼吸様式や聴診、身体検査、TFASTからこれらを分類することで、命の危険がある状態の患者さんの安定化方法が見えてきます。 安定化後のさらなる検査によって診断を絞っていきます。病態による分類ごとの鑑別疾患リストがあれば、どんな検査が必要になるかもプランが立てやすくなります。 11種類も多い!と思われるかもしれせんが、一つ一つ病態を理解すれば、どうして神経系の病気と呼吸器の異常がつながるか、などがわかるようになります。 View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) \この記事のハイライト/☆​呼吸困難の原因を11種類に分類する☆各分類に含まれる疾患をイメージする \関連記事/☆呼吸困難の原因11種類(前編)☆上部気道疾患☆下部気道疾患☆神経原性呼吸困難☆胸腔内の疾患☆胸壁の疾患(後編)☆胸腔外の疾患☆肺実質 ☆心原性☆肺血栓 ☆血管系 今回の投稿がためになった!面白かった!という方は見返せるようにインスタグラムで保存やいいね!もよろしくお願いしますm(_ _)m

  • 犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、新人獣医さんに向けて、呼吸困難の症例がきた時の診断までの思考プロセスをご紹介します。このプロセスをしっかりと理解し、鑑別疾患を上げて順序立てて診断を組み立てて行く事で、呼吸困難患者さんに向き合うのが怖くなくなります。 犬・猫の呼吸困難①では、なぜ診察の際に「ちゃんと考える事が大事か」を説明しました。犬・猫の呼吸困難②では呼吸困難の原因11つのカテゴリーをご紹介します。このカテゴリーに当てはめる事で、患者さんをどう安定させるかのヒントを得る事ができます。臨床現場で直結して役に立つ内容を、アメリカのトレーニングで学んだ事や経験を盛り込みながら解説します。①-④まで最後までご覧ください。 呼吸困難患者さんの診察のゴール 呼吸困難総論の最初の記事なので、最初に獣医師の仕事としてのゴールについて書きます。 私たちのゴールは、3つです。 アメリカの救急集中治療科の役割は、主に①になります。そして②と③は内科が専門とする領域になります。 全ての呼吸困難は、11つのカテゴリーに分類する事ができます。①は、呼吸困難の原因をこの11のカテゴリーのどれにあたるのかを即座に判断し、それに応じた安定化を行うという工程になります。 さていよいよ、11カテゴリーをご紹介していきます。 頻呼吸を11カテゴリーに分けて考える 呼吸が速い、努力呼吸の原因はこれら11個のカテゴリーに分類できます。最後のlook-alikeとは、痛み、酸塩基のバランスの乱れ、興奮、敗血症、など、呼吸器や換気以外の原因が含まれます。 呼吸器の症例を見たときに、最初のゴールはこの11個のカテゴリーのどれに当てはまるかを推測することになります。 このカテゴリーの中に、様々な病態が含まれます。具体的な疾患を診断する前に、11つのうちどれに当てはまるかを分類する事で、次のステップ、診断(どこにフォーカスを当てるか)や安定化の方法が異なります。 上部気道、下部気道、肺実質のおさらい それでは、11個を上から順に説明して行く前に、上部気道、下部気道、肺実質のおさらいだけしておきます。 呼吸器は、上部気道、下部気道、肺実質の3つで構成されます。呼吸困難の全てがこの3つに分類できれば簡単なのですが、呼吸器以外の疾患によっても呼吸困難が生じるので、11カテゴリー全ての可能性を考慮する事が重要です。 それではいよいよ、①からざっくりとカバーしていきます。もっと詳しく勉強したい方は、リンクからその疾患に特化したページもご用意しているので、ご覧ください。 ①上部気道閉塞: upper airway 上部気道閉塞の異常で代表的なのは、短頭種気道症候群です。外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、気管低形成とといった、気管支手前までの気道が狭くなる病気の総称です。(短頭種気道症候群に関してはこちらのページで詳しく解説しているのでご参照ください) 他には、鼻腔内ポリープ、腫瘍、異物、喉頭麻痺、喉頭虚脱、気管虚脱などの病気があります。 上部気道閉塞を患った患者さんは特徴的な呼吸をします。聴診器を使わずにも聴こえる、ストライダーやスターターという異常呼吸音を出します。呼吸様式、聴診に関してはこちらの記事で解説しています。 上部気道閉塞を引き起こす代表的な疾患 ②下部気道閉塞: lower airway 下部気道疾患の代表的な疾患 肺胞に入るまでの細い気管支に炎症などの異常が起こることで呼気努力が生じるのが特徴的です。お腹で押すように、吐く時に力を入れます。呼吸様式は、吸う時間に比べ吐く時間が長くなることも特徴的です。聴診では、笛の音の様なウィーズが一般的に聞こえます。 猫は喘息が重症になると開口呼吸をします。 慢性気管支炎や猫喘息の原因は様々です。環境的な要因が関与していることもあります。 ③肺実質疾患: parenchymal diseases 肺実質の異常に含まれる代表的な疾患 誤嚥性肺炎やケンネルコフなどの肺炎がよく見られる代表疾患です。他には、ARDSやALIなどの肺炎、寄生虫やカビ感染、異物の混入などによる肺炎、免疫疾患である好酸球性肺炎などもあります。 呼気吸気にかかわらず呼吸数が速くなることが多いです。感染性の場合、呼吸様式の変化だけでなく、湿性の咳をしたり、発熱などの他の症状を呈することもあります。酸素化機能が低下するため、重度の場合、チアノーゼが見られることもあります。 ④胸腔内の異常: pleural diseases 胸腔内の異常に含まれる代表的な疾患 胸腔内で何かが大きくなる/増えることで肺が広がるスペースがなくなり、換気不全になります。うまく換気できないことで体内にCO2が蓄積することから呼吸数が上昇します。 猫では、胸水によってparadoxical componentといって、胸とお腹の動きが相反するような呼吸をすることが多いといわれています。 胸水の原因も様々で、腫瘍、出血、感染、乳糜、心臓病(犬では右心不全、猫では左心不全でも生じる)、特発性などがあります。また、気胸と言って、胸腔内に空気がたまる病態、胸腔内の腫瘍の増大においても肺がうまく膨らめないことによって頻呼吸が生じます。 胸腔内疾患に関してはこちらで解説していきます。 これらの異常は、患者さんにストレスをかけてレントゲンを撮影する前に、FASTスキャンができれば簡単に検出することができます。必要に応じて治療的胸水抜去を行い、安定化してからレントゲンを撮れば、患者さんが急変するリスクを減少できます。 ⑤胸腔外の異常 胸腔外の異常とは、例えば腹部の腫瘍が増大/GDV/腹水などで腹部から胸腔を圧迫、肺が拡がれなくなるような場合を指します。お腹からの圧力が原因の場合は、GDVであれば減圧、腹水であれば腹水抜去などそちらの原因除去を優先させます。 しかし、呼吸器の病気を合併している場合もあるので、原因と思われたものが解除された後の再評価も非常に重要です。 ⑥胸壁の異常: body wall 胸壁の異常の代表疾患…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~水はどこにどれだけいるの?~

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~水はどこにどれだけいるの?~

    この記事の内容 細胞膜と血管内皮が区切るものとは 水はどこにどれだけいる? まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 Emergency and Critical Careの分野では、輸液治療の知識が非常に重要になります。ICUに入院する患者さんのほとんどは輸液治療を受けています。入院管理では、それぞれの患者さんに、どの輸液製剤をどのくらいの速度でどれくらいの期間投与する予定なのかという輸液プランが必要になります。 輸液についてというシリーズでは、輸液治療について生理学から勉強しなおせるように、イラストを使って、わかりやすい言葉で解説していこうと思っています。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 細胞膜と血管内皮が区切るものとは 体の中には3つの区画(コンパートメント)があります。 細胞内 間質 血管内 水分はこの3つの区画を行き来します。この区画は、それぞれ細胞膜、血管内皮という仕切りによって区切られています。 水はどこにどれだけいる? この3つの区画に体重のおよそ60%の水分が分布していることになります。 エマージェンシーやクリティカルケアの臨床現場で私たちが最もフォーカスを当てるのは、血管内の区画になります。この水分が直接組織にエネルギー源となる酸素を供給することになるからです。 「血管内の水分=血液循環量をいかにして増やすか」 が患者さんの安定化の際に常に考えることになります。 まずは細胞外vs細胞内を考えます。 体液の2/3は細胞内に存在 体液の残り1/3は細胞外に存在 つまり、体重10kgの犬であれば、総水分量は約60%で6kg(こちらのページで解説あり)。そのうち、の2/3=4kgは細胞内の水分で、1/3=2kgは細胞外の水分であることがわかります。 次に、細胞外をさらに血管内皮で区切ったとき、間質と血管内という区画に分かれます。 この区画の水分の分布は 細胞外液の3/4は間質に存在 細胞外液の1/4は血管内に存在 することになります。先ほど計算した細胞外液量は2kgでした。このうち、間質に3/4=1.5kg、血管内に0.5kgの水分が存在するということになります。 初めて計算したとき、「血管内の水分少な!」と思いました。体を循環している水分量が一番大切だからこそたくさんあると思っていましたが、実はそんなこともなく、総水分量の8%(1/3#215;1/4=1/12)、体重当たりにすると約5% (8%x60%)であることがわかります。 まとめ 体液の分布は3つの区画(細胞内、間質、血管内)で考える 細胞内vs細胞外の水分布は2/3 vs 1/3 細胞外液中の水分布、間質vs血管内は1/4 vs3/4 血管内の水分量は総水分の約8%、体重の約5% [/read_more]

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~水は体の何%を占める?~

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】輸液について~水は体の何%を占める?~

    この記事の内容 体液は体の何%? 個体による違い 体内の水分布 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 Emergency and Critical Careの分野では、輸液治療の知識が非常に重要になります。ICUに入院する患者さんのほとんどは輸液治療を受けています。入院管理では、それぞれの患者さんに、どの輸液製剤をどのくらいの速度でどれくらいの期間投与する予定なのかという輸液プランが必要になります。 輸液についてというシリーズでは、輸液治療について生理学から勉強しなおせるように、イラストを使って、わかりやすい言葉で解説していこうと思っています。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 体液は体の何%? 体の何%が水分でしょう? 成犬の体の60%は水でできています。水は、細胞内、細胞外に分布しています。 個体による違い 総水分の計算をする際、全ての患者さんに大して体重の60%が通用するわけではありません。 例えば、人の肌から連想するとわかりやすいですが、赤ちゃんや子供の肌はモチモチで水分をたくさん含んでいますね。一方、歳をとることで、肌がカサカサになります。 つまり、若い時の方が、体重に対する水分量は大きく、歳をとると水分量が減少します。 幼犬は体重の70%が水分だと言われています。もちろん、これは大まかな概算です。 さらに、肥満の患者さんについて考えてみましょう。 肥満によって、体重が10kgから15kgに増えた犬を想像してみましょう。体重10kgの時の水分量は10kgx0.6=6kgが総水分量と言えます。しかし、5kgが脂肪によって増えたのであれば、15kgx0.6=9kgの総水分量とは言えないのです。なぜなら、脂肪に含まれる水分は脂肪の重さに対して60%ではないからです。 脂肪に含まれる水分量はその重さの10%と言われています。よって、元々の10kg中には6kgの水分が含まれていますが、肥満によって増えた5kg中には5kgx0.1=0.5kgの水分しか含まれないのです。 なので総水分量としては、6kg+0.5kg =6.5kgということになります。 静脈点滴の速度を決定するときに、単純に体重によって計算してしまうと、重さの中身が識別されないため、肥満患者さんに対しては過剰に点滴を投与してしまう可能性があります。これに対する解決策としては、点滴の維持量を理想体重から計算することです。 体内の水分布 次に考えることは、その総水分は体のどこに分布しているか。ということです。 水分が分布するのは3つの区画です。 細胞内 間質(細胞外) 血管内(細胞外) 水はこの区画を自由に移動できます。 自由に移動はできますが、どのくらいの量どの区画に止まるかは、法則があります。この法則に関してはこちらのページで解説していきます。 まとめ この記事では、体内の水分量と、水分がどこに分布しているかについて大まかに解説しました。 成犬の理想体重に対して水分が占める重量は60% 幼若犬では水が占める重量は体重の70% 肥満犬に関しては、理想体重に対する60%+脂肪の重さの10%の合計が水分量 水がどこにどれだけ存在するか、移動するか、どこに留まるのか、は輸液治療を考える際、重要となる基礎知識になります。少しずつ、わかりやすいイラストを用いて輸液治療について掘り下げていきますので、この先も読んでもらえたら嬉しいです! [/read_more]

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】猫の血液型/クロスマッチについて考える

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】猫の血液型/クロスマッチについて考える

    この記事の内容 輸血前の血液型/クロスマッチの意義 猫の血液型 赤血球の輸血 血漿輸血 クロスマッチ主反応/副反応 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、輸血前に必須と言える血液型検査とクロスマッチの意義を解説していきます。意義を知らなくても必要だ、ということは誰しもわかっていることかもしれませんが、この記事を読むことで実際に何を評価しているのか、という理解を深めていただけたら嬉しいです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 輸血前の血液型/クロスマッチの意義 輸血前に血液型とクロスマッチを確認するのは、ずばりなぜでしょうか? 答えは、適合するドナーの血液を選択することで、急性溶血性輸血反応のリスクを防ぐためです。 急性溶血性輸血反応に関する詳しい解説はこちらをご覧ください。簡単にまとめると、レシピエントの抗体が輸血した赤血球を溶血、もしくはドナーの血液中に含まれる抗体がレシピエントの赤血球を溶血することで合併症が起こります。 合併症は軽度で済むものから新たな輸血が必要になるほどの溶血が起こったり、DICに至るような重度なものまで様々です。輸血を必要とするような重症な患者さんに、これ以上の合併症が起こるのは正直、勘弁ですよね。 そこでこの輸血反応をなるべく起こさないためにできることの一つに、血液型を合わせることとクロスマッチがあります。 血液型は、赤血球の表面についている抗原に名前をつけたものになります。血液型をマッチさせることで、輸血による代表的な抗原(猫ではA型、B型、AB型)抗体反応を防ぐことができます。 しかし、赤血球の表面に発現する抗原は、A型、B型、AB型と呼ばれるものだけではありません。新たに発見され始めている抗原もあります。2007年のJournal of Veterinary Medicineでは、新たなMikと呼ばれる赤血球表面の抗原が見つかりました。そしていまだに発見されていないような抗原も必ずあるはずです。 メジャーではないかもしれませんが、これらを全て輸血前に調べるというのは現実的ではありません。よって、猫のA型、B型、AB型以外の抗原抗体反応を予測するために、スライドの上で実験してみよう、というのがクロスマッチになります。 それでは、猫の血液型から順に解説していきます。 猫の血液型 猫の血液型には、A型、B型、AB型があります。そして新たに発見されたMikが新たに加わりますが、病院の簡易的な血液型検査ではMik抗原の有無を調べることはできません。ここではA型、B型、AB型に絞って解説します。 A型の猫:赤血球表面にA抗原を持つ、B抗原に対する自然抗体を持つ B型の猫:赤血球表面にB抗原を持つ、A抗原に対する非常に強い自然抗体を持つ AB型の猫:赤血球表面に、AとBの抗原を持つ、どちらに対する自然抗体も持たない 上記の図から、A型B型のミスマッチの輸血が危険であることはお分かりいただけるかと思います。 赤血球の輸血 赤血球の輸血を考えてみましょう。それぞれ何が起こるでしょうか。 A型の猫がB型の赤血球の輸血を受ける:レシピエントの抗B抗体とドナーのB抗原反応による溶血 B型の猫がA型の赤血球の輸血を受ける:レシピエントの抗A抗体とドナーのA抗原反応による溶血 AB型の猫はどちらの自然抗体も持たないため、どちらの血液の輸血も検討できます。 血漿輸血 次に、血漿輸血を考えてみましょう。血漿の輸血もこのセオリーから行くと血液型が適合する必要がありそうですね。その通りです。 抗体の入った血漿を放り込むことになるので、レシピエントの赤血球が溶血するリスクがあります。 A型の猫がB型の血漿輸血を受ける:ドナーの抗A抗体とレシピエントのA抗原反応による溶血 B型の猫がA型の血漿輸血を受ける:ドナーの抗B抗体とレシピエントのB抗原反応による溶血 クロスマッチ主反応/副反応 クロスマッチの意義については最初にお話ししました。ここからは、主反応、副反応に関して解説します。 日本では、濃厚赤血球や血漿の輸血というのはあまりメジャーではないかもしれません。必要に応じてドナー登録猫に来ていただき、全血輸血という形が多いのかと思います。 アメリカでは、猫の赤血球製剤、血漿製剤が販売されています。そして、私が働く大学では輸血に従事する看護師さんや獣医さんがいて、定期的にドナーを呼び、常に血液バンクに血液製剤をストックするシステムが確立しています。 これらをストックしておくことで輸血が必要なごとにドナーを呼ぶ必要がなく、必要な成分だけを必要に応じて輸血可能になります。 日本で私が働いていた時は、必要に応じてドナー登録犬に来ていただき、全血輸血というのがメジャーでした。 なぜこの話をしたかというと、クロスマッチの主反応は濃厚赤血球の輸血、副反応は血漿輸血の反応を予測するものになるためです。全血を輸血する場合、どちらの反応も重要になります。 主反応は、ドナーの赤血球と、レシピエントの血漿の反応 副反応は、ドナーの血漿と、レシピエントの赤血球の反応 掛け合わせたものを顕微鏡で見たときに、凝集反応を確認します。もしも抗原抗体反応があった場合、赤血球がくっつきあって固まりを作るようになります。これが見られた場合、実際に患者さんに輸血をしたとき溶血反応のリスクがあると言えるので、この組み合わせの輸血は避けるべきです。 まとめ…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】犬の血液型/クロスマッチについて考える

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】犬の血液型/クロスマッチについて考える

    この記事の内容 輸血前の血液型検査/クロスマッチの意義 犬の血液型 赤血球の輸血 血漿輸血 クロスマッチ主反応/副反応 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、輸血前に必須といえる血液型検査とクロスマッチの意義を解説していきます。意義を知らなくても必要だ、ということは誰しもわかっていることかもしれませんが、この記事を読むことで実際に何を評価しているのか、という理解を深めていただけたら嬉しいです。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 輸血前の血液型検査/クロスマッチの意義 輸血前に血液型とクロスマッチを確認するのは、ずばりなぜでしょうか? 答えは、適合するドナーの血液を選択することで、急性溶血性輸血反応のリスクを防ぐためです。 急性溶血性輸血反応に関する詳しい解説はこちらをご覧ください。簡単にまとめると、レシピエントの抗体が輸血した赤血球を溶血、もしくはドナーの血液中に含まれる抗体がレシピエントの赤血球を溶血することで合併症が起こります。 合併症は軽度で済むものから新たな輸血が必要になるほどの溶血が起こったり、DICに至るような重度なものまで様々です。輸血を必要とするような重症な患者さんに、これ以上の合併症が起こるのは正直、勘弁ですよね。 そこでこの輸血反応をなるべく起こさないためにできることの一つに、血液型を合わせることとクロスマッチがあります。 血液型は、赤血球の表面についている抗原に名前をつけたものになります。血液型をマッチさせることで、輸血による代表的な抗原(犬ではDEA1.1(+/-))抗体反応を防ぐことができます。 (DEAとは、Dog Erythrocyte Antigensで犬の赤血球抗原という意味です。) しかし、赤血球の表面に発現する抗原は、DEA1.1だけではありません。少なくとも12個以上の抗原が発見されています。最近、新たに発見され始めている抗原もあります。2007年のJournal of Veterinary Medicineでは、新たなDalと呼ばれる赤血球表面の抗原を持たない(赤血球表面に抗原を持たないので、自然抗体を持つ可能性がある)ダルメシアンが数頭報告されました。そしていまだに発見されていないような抗原も必ずあるはずです。 メジャーではないかもしれませんが、これらを全て輸血前に調べるというのは現実的ではありません。よって、DEA1.1以外の抗原抗体反応を予測するために、スライドの上で実験してみよう、というのがクロスマッチになります。 それでは、犬の血液型から順に解説していきます。 犬の血液型 犬の代表的な血液型には、DEA1.1があります。そして新たに発見された抗原に関しては、病院の簡易的な血液型検査では調べることはできません。ここではDEA 1.1に絞って解説します。 DEA 1.1(+)の犬:赤血球表面にDEA1抗原を持つ、自然抗体は持たない DEA 1.1(-) の犬:赤血球表面にDEA1抗原を持たない、自然抗体も持たない 犬では、同種間の自然抗体を持たないと言われています。輸血を経験した犬でない限り、DEA1.1の有無は輸血副反応には直接関係ないと考えられています。 そのため、多くの施設で輸血歴のない患者さんであれば、血液型をマッチさせずに輸血をしているのではないかと思います。 また、DEA1.1(-)の犬はユニバーサルドナーと言われ、その血液はDEA1.1(+)にもDEA1.1(-)にも投与可能と考えられています。 赤血球の輸血 1回目の輸血は自然抗体を持たないことから、溶血反応は起こらないと考えられています。それでも複数回の輸血が必要になる可能性もあるため、血液型をマッチさせることが推奨されます。 ここでは、どうしてもDEA1.1(+)のドナーの血液しか手に入らなかったことを想定してみましょう。 DEA1.1(-)のレシピエントに、DEA1.1(+)の赤血球を入れることで、レシピエントはDEA1.1(+)に対する免疫を獲得します。 さて、同様のレシピエントで2回目の輸血が必要になりました。またもや、DEA1.1(+)のドナーの血液しか手に入りません。2回目の輸血では何が起こるでしょうか。 そうです、DEA1.1(+)に対する抗体がしめしめと待機して、輸血された赤血球を破壊する可能性があります。ここまでで、血液型をマッチさせる重要性を理解していただけたのではないかと思います。 そして、犬の場合はDEA1.1以外の少なくとも12個の抗原の存在が明らかになっているため、血液型のマッチに加えてクロスマッチがさらに重要な役割を果たすと言えます。クロスマッチの話に移る前に、血漿輸血に関してさらっと触れておきます。 血漿輸血 猫と違い、犬では血漿輸血で血液型を合わせることや、クロスマッチをすることの重要性は説かれていません。病院によっては気にせずガンガン使っているところもあるかもしれません。 しかし、安全を追求するのであれば、適合させることが推奨されます。 なぜなら、血漿製剤に赤血球のコンタミネーションがないとは限らないからです。ほんの数mlの赤血球のコンタミネーションでレシピエントは感作されるからです。 例えば、血漿輸血を受け(コンタミによって)DEA1,1(+)の赤血球抗原に感作されたDEA1.1(-)のレシピエントが、赤血球の輸血を受けることになった場合。初めての赤血球の輸血だから大丈夫、とDEA1.1(-)のレシピエントにDEA1.1(+)の血液を入れたときには、溶血性輸血反応のリスクがあることになります。 よって、血漿輸血においても血液型を適合させることが推奨されるのです。血漿輸血は特に、緊急症例や、重症患者さんにいますぐ必要!なパターンが多いので、血液型やクロスマッチの結果を待てないことも多いかと思いますが、状況に応じた判断が重要になります。…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】説明できる??血管内溶血vs血管外溶血

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】説明できる??血管内溶血vs血管外溶血

    この記事の内容  血管内溶血 血管外溶血 血管内と血管外溶血 この記事では、血管内溶血と血管外溶血の違いを解説します。血管内溶血のほうが、重篤であるということはご存知の方が多いのではないかと思います。 ではなぜ血管内の方が重篤で、どういったメカニズムの違いがあるのかという点に着目して説明していきます。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 溶血の原因には、輸血反応、IMHA、タマネギ中毒、亜鉛中毒、低リン血症などがありますが、原因にかかわらず溶血による弊害が大きく出ることは珍しくありません。この記事では、New England JournalのHemolytic Transfusion Reactionという論文を引用して解説していきます。 血管内溶血 血管内溶血とは、IgMによって始まります。IgMが補体を活性化し、これによって赤血球の膜に穴が開きます。この反応は血管内で生じ、赤血球の中身が容赦無く循環血液中に撒き散らかされます。 IgMはIgGなどより先に作られる抗体です。このことから、一度反応が起こるととても早く溶血が起こることが予測されます。 ヘモグロビン が循環血液中に放出されることで、ヘモグロビン 血症や尿症(赤い血漿や尿の色)が特徴的です。ここで注意が必要なのは、ビリルビン血症との区別です。ビリルビン血症では血漿が黄色くなるのに対し、ヘモグロビン 血症では、血漿が赤くなることに注意しましょう。 赤血球の塗抹を見てみると、ゴースト細胞やシストサイトと呼ばれる赤血球のカラのようなものが増えます。 溶血性輸血反応の記事に詳細は書きましたが、血管内の反応では、炎症性サイトカインによる血管透過性亢進や血管拡張による低血圧、さらには赤血球のカラが尿細管に詰まり乏尿性の腎不全、血管障害による凝固異常などが生じることになります。 血管外溶血 血管外溶血は、IgGが赤血球表面に付着し、肝臓や脾臓でマクロファージの貪食能を刺激します。これによって赤血球がかじられるというイメージでしょうか。 マクロファージに貪食されたヘモグロビン はビリルビンになるため、高ビリルビン血症が特徴となります。さらに、かじられた赤血球は球状赤血球という小さくてまん丸な形になります。 血管内と血管外溶血 これらを区別することで何か治療法を大きく変えることはあるでしょうか。病態を理解するのに重要な因子になりますが、治療の点から考えると溶血に対する特異的な治療法は特になく、どちらも対処療法となります。 血管内溶血の方が急速に進行すること、さらにヘモグロビン などを直接循環血液内に放出するという点から深刻な合併症が生じやすいと言えます。 ちなみにですが亜鉛中毒や低リン中毒、タマネギ中毒は赤血球の酸化障害による直接の膜損傷になるため血管内溶血と言われています。 必ずしもどちらかに区別することができるわけではなく、血管内と血管外の両方が生じることもあります。 溶血の結果生じる合併症に関してはこちらのページでまとめているのでご参照ください。 まとめ 血管内溶血と血管外溶血について解説しました。患者さんの溶血を見たときに、原因、機序、そしてその結果どうなるかを想定できることが重要なキーになります。 [/read_more]

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】なぜ起こる??どう対応する?!知っておくべき急性溶血性輸血反応

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】なぜ起こる??どう対応する?!知っておくべき急性溶血性輸血反応

    この記事の内容 急性溶血性輸血反応を学ぶ 急性溶血性輸血反応の定義 急性溶血性輸血反応の原因 溶血の結果 まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。この記事では、急性溶血性輸血反応に関する解説をしていきます。 「溶血が良くないことだとは知っているけれど、実際に何がよくないのか、変化が起こった時に何をしたらいいのかわからない!」という方のために書いた記事になります。実際に私は、シビアな輸血副反応を経験して初めて、モニタリングの重要さや、対応方法を学び、「こういうことだったのか」と理解したのを覚えています。 この記事では溶血はなぜ起こるのか、溶血が起こると何が不味いのか、どう対応するべきか、という点を解説していきます。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 急性溶血性輸血反応を学ぶ おすすめの教材としては以下の3点になります。 New England Journal : Hemolytic Transfusion Reaction TRACS Part 1-3 YouTube: BloodBankGuy 1. New England Journal :Hemolytic Transfusion Reaction こちらは人の論文ですが、急性溶血性輸血反応について非常によくまとまっています。私的には、2種類の溶血を説明したきれいな図がおすすめです。 2. TRACS TRACS(Transfusion Reaction small animal Consensus Statement)とは、2021年に出版された輸血反応に関するコンセンサスステートメントです。 この論文のお勧めなポイントは、輸血反応が見られた場合の対処法がフローチャートになっているところです。目の前の患者さんがどの状況であるかを照らし合わせて、今何をするべきかが一目瞭然になります。 TRACSはPart1-3で構成されています。 Part 1: Definitions and clinical signs(定義と臨床症状) Part 2:…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】知っておくべき!輸血副反応の基礎と鑑別・対応のアルゴリズム

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】知っておくべき!輸血副反応の基礎と鑑別・対応のアルゴリズム

    この記事の内容 輸血副反応の恐ろしい経験 どんな輸血副反応があるの? 症状ごとの鑑別診断 輸血副反応が起こったら まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。この記事では、輸血を行う時に注意するべき点の解説をしていきます。 「輸血のモニタリングが大事だということは知っているけれど、実際に変化が起こった時に何をしたらいいのかわからない!」という方のために書いた記事になります。実際に私は、シビアな輸血副反応を経験して初めて、モニタリングの重要さや、対応方法を学び、「こういうことだったのか」と理解したのを覚えています。 経験したことがないこと、イメージできないことに備える、というのは非常に難しいです。この記事では輸血副反応の恐ろしい経験をシェアし、こんな症例をみた時に何を理解しておかなければならないかということを解説していきます。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 輸血副反応の恐ろしい経験 私が経験した最も恐ろしい輸血副反応についてお話しします。 輸血に至った詳細は割愛しますが、ある症例Aとします。輸血が半分終わった時点で、症例Aの可視粘膜が蒼白していることに気がつきました。直ちに輸血を止め、症例AのPCVと溶血の有無を調べたところ、PCVが25%から16%に、血漿は溶血していたのです。 急性溶血性輸血反応が疑われました。この時、輸血中にバイタルなどのパラメーターはしっかりとモニターされていましたが、明らかな変化はありませんでした。 症例Aは急性溶血性貧血に対して、濃厚赤血球が輸血されることになりました。CBCと生化学検査において、血小板減少、ビリルビン上昇、腎数値の上昇がみられました。PT、APTTでは、APTTが75%延長していました(DICが疑われる)。尿量をモニタリングしていましたが、乏尿(乏尿性急性腎不全)に陥りました。溶血による重度な合併症が生じたのです。 ICUでの集中的な治療(主にサポーティブケア)によって、この症例Aは無事退院することができましたが、入院期間は輸血日から17日間、退院までの費用は125万円かかりました。(アメリカの医療費は日本よりもはるかに高額ではありますが) すべては輸血副反応によるものです。私はこの経験をした後にゆっくりと輸血の勉強をしなおし、「はーーーー。なるほどな。全部教科書に書いてある。。。」といろんなことの辻褄があったことに感心しました。 どんな輸血副反応があるの? 輸血副反応には、様々な種類がありすぎて、結局何に気をつけたらいいのか、副反応が起こった時に何をしたらいいのかという情報がごちゃまぜになりがちです。 この記事では、TRACSというガイドラインをもとに、輸血副反応について解説していきます。ガイドラインを読むことで輸血副反応の種類や対応を知ることができます。 Part 1-3まであります。 Definitions and clinical signs Prevention and monitoring Diagnostics and treatment ③の診断と治療は特にお勧めで、それぞれの症状に対してアルゴリズムが作成されています。この記事の最後に少し紹介しますが、アルゴリズムに答えていくと鑑別診断を絞ることができ、エビデンスに基づいた対処法が書かれています。 TRACS Part 1では、10つの輸血副反応について解説されています。 FNHTR:非溶血性発熱性輸血反応 急性呼吸反応(血液循環量負荷/輸血関連性肺障害/輸血関連呼吸不全) 輸血関連性アレルギー反応 溶血性輸血反応(急性/遅発性) DSTR:遅発性血清学的輸血反応 TTI:輸血介在性感染 クエン酸中毒 輸血関連性高アンモニア血症 HYTR:低血圧性輸血反応 PTP:輸血後紫斑症 輸血副反応の種類を一つ一つ把握するのではなく、症状に対する鑑別診断をあげて、除外していけるかが重要な点となります。 TRACSをすべて読むことで輸血副反応についてはマスターすることができるはずです。そんな時間のない忙しい獣医さんのために、症状ごとの鑑別診断リストを以下にまとめていきます。 症状ごとの鑑別診断 発熱(39℃以上+1℃以上の上昇)…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?<後編②>

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?<後編②>

    この記事の内容 脳神経検査とは(前編) 1-12対の脳神経(中編) 1-12対の脳神経の評価 /Ⅰ~Ⅶ(後編①) 1-12対の脳神経の評価 /Ⅷ~Ⅻ(後編②) 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、1-12対の脳神経をどの様に評価してくかをおさらいしていきます。前回の続きの第Ⅷ神経から順番に確認していきましょう。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 内耳神経/聴神経(Ⅷ) 拍手試験 生理的眼振 病的眼振 頭位変換誘発斜視、および、頭位変換誘発眼振は、患者さんの体位をVDにして眼振があるかを調べることで異常が検出されます。頭の位置がひっくり返った時にだけ出る様な斜視や眼振もあるので、意識して行う様にしましょう。 舌下神経(Ⅸ) 飲み込み試験 迷走神経(Ⅹ) 飲み込み試験 副神経(Ⅺ) 僧帽筋、胸骨上腕頭筋の対称性 舌咽神経(Ⅻ) 舌の動き、位置 舌の対称性:片側だけ顕著に舌が萎縮する場合がある [/read_more]

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?<後編①>

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?<後編①>

    この記事の内容 脳神経検査とは(前編) 1-12対の脳神経(中編) 1-12対の脳神経の評価 /Ⅰ~Ⅶ(後編①) 1-12対の脳神経の評価 /Ⅷ~Ⅻ(後編②) 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、1-12対の脳神経をどの様に評価していくかをおさらいしていきます。1から順番に確認していきましょう。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 嗅神経(Ⅰ) 嗅覚試験 エサのにおいに反応するかをみる 正常:クンクンする 異常:嗅神経(Ⅰ)の異常が疑われる 視神経(Ⅱ) メナス(威嚇瞬き) 正常:威嚇に対して目を閉じる 異常:視神経(Ⅱ) and/or 顔面神経(Ⅶ) の異常 ポイント:片目は伏せて見えない様にする。風圧やヒゲの知覚による偽陽性を防ぐ 対光反射(PLR) 正常:光によって縮瞳が起こる 異常:視神経(Ⅱ) and/or 動眼神経(Ⅲ)の異常 ポイント:反対側の目からの光に反応しない様に手で覆う。部屋を薄暗くして強めの光をなるべく近く当てる。 綿球落下試験 正常:落ちていく綿球を目で追う、反応する 異常:視神経(Ⅱ) 動眼神経(Ⅲ) 斜視 異常:眼球を内側に引っ張る筋を支配する動眼神経(Ⅲ)と滑車神経(Ⅳ)の異常では外斜視 異常:眼球を外側に引っ張る筋を支配する外転神経(Ⅵ)の異常では腹斜視が生じる 対光反射(PLR) 生理学的眼振 正常:首を左右に動かした時に眼振が生じる 異常:平衡感覚(聴覚神経Ⅷ)の異常によって、頭の回転を検知できない and/or 眼球を動かす筋肉を支配する神経(動眼神経Ⅲ/滑車神経Ⅳ/外転神経Ⅵ)の異常によって眼球が正常に動かない 滑車神経(Ⅳ) 斜視 生理学的眼振 三叉神経(Ⅴ) 三叉神経を調べる方法はたくさんあります。 知覚神経 角膜反射 咀嚼筋の萎縮 顎のトーン 知覚反射…

  • 【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?

    【今更でもいいからとにかく学ぶ】脳神経、1から12対まで言えるかな?<中編>

    この記事の内容 脳神経検査とは(前編) 1-12対の脳神経(中編) 1-12対の脳神経の評価(後編) 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 この記事では、何のために脳神経検査を行うのか、12対の脳神経の機能、さらに12対の脳神経機能を評価する方法をイラストを用いて説明します。中編では、1-12対の脳神経をイラストを用いて解説していきます。おさらいしていきましょう。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 嗅神経(Ⅰ) 嗅覚の情報を脳に伝えます。大脳から直接つながる神経です。 視神経(Ⅱ) 視覚の情報を脳に伝えます。大脳から直接つながる神経です。 動眼神経(Ⅲ) 瞳孔の大きさの調節(毛様体筋/瞳孔括約筋→縮瞳させる) 眼球の上下および内側の動きを調節(背側直筋/内側直筋/腹側斜筋/腹側直筋/上眼瞼挙筋/眼球後引筋の内側部) 滑車神経(Ⅳ) 眼の内側の動きの調節(背側斜筋) 三叉神経(Ⅴ) V1 眼窩裂:角膜、眼球、前頭洞の感覚 V2 正円孔:上顎、頬、鼻、歯、口腔粘膜の感覚 V3 卵円孔:下顎領域の感覚、咀嚼筋の運動 外転神経(Ⅵ) 眼球の外側の動きを調節(外側直筋/眼球後引筋の外側部) 顔面神経(Ⅶ) 顔面皮筋や顎二頭筋の運動 唾液分泌 味覚(舌の前方3分の2)/外耳の皮膚の感覚 顔面神経 内耳神経/聴神経(Ⅷ) 蝸牛神経:聴覚の情報を脳へ送る 前庭神経:平衡感覚 舌咽神経(Ⅸ) 唾液分泌 飲み込み/軟口蓋や咽頭の動きの調節 舌や咽頭の感覚 嗅覚 迷走神経(Ⅹ) 副交感神経:心筋と消化管の運動 飲み込み 喉頭蓋の運動 胸腔・腹腔内臓器の感覚 耳介と外耳道の一部の感覚 味覚(舌の後方3分の1) 副神経(Ⅺ) 頸部と前肢帯の筋肉の運動をコントロール 舌下神経(Ⅻ) 舌と舌骨の運動を調節 覚え方…