はじめに
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務し、2022年現在アメリカの獣医大学で救急集中治療(ECC)の専門医を目指してレジデントをしています。
この記事では、みけブログを通じて頂くご質問と、私なりの回答をご紹介したいと思います。私が米国専門医を目指し始めた時、ありがたいことにアメリカで獣医師として働いている友人、知り合いの先生が数人いたので、困った時に質問できる相談相手がいました。たくさんのサポートに支えられながら、なんとか情報収集することができましたが、もしも彼ら、彼女らの存在がなかったと思うと、どこから情報収集をしたらいいか途方にくれたと思います。
おそらく、情報収集のゴールは、「どうやって専門医になるか」だと思いますが、そこに行き着くまでの過程が皆さんの関心なのではないでしょうか。例えば
そこで、米国専門医に興味を持たれている先生から多くいただくご質問や、自分が日本にいた時に抱いた疑問と、その回答をご紹介していきます。あくまで自分はどうしたか、ということをメインにご紹介します。
資金はどのように調達したか
アメリカで生活を始めるのに、車購入を含め150-200万円くらいかかりました。車はなくても生きていける地域もありますが、働き始めるとないと非常に不便です。
初期費用は3年間日本で働いて貯金したものを使いました。
私は最初の1年目でお給料がでるインターンをすることができたので、決していいお給料ではないですが、1人暮らしであれば十分生きていけました。私は最初のインターン時代、ルームシェアで質素な生活をしていたら、月500ドルくらいは貯めることもできました。
もしも私が1年間、お給料がでるポジションにつけてなかったとしたら、限りある貯金を切り崩して、できるだけたくさんのところにビジティングしてコネクションやチャンスを作り、ポジションゲットにつなげようと計画していました。フレキシブルに効率よく働ける仕事を探し、貯金、ビジティング、の繰り返し、というのがプランBでした。実際にこれをしたわけではないので、この場合何が得策なのかは正直わかりません。
推薦状を誰にお願いするべきか
インターンを外国人(アメリカからみた外国人)から選考するときの評価されるポイントは、何か特別な知識やスキルがあることではなく、アメリカで問題なくスムーズに診察(特にER)ができるかということになります。
日本語の環境で十分(もしくはそれ以上の)な診察ができることが示せても、英語圏で問題なく働けるかどうかはわかりません。なので自分の英語のコミュニケーション能力を示すためにも、英語圏の先生と一緒に働き、推薦状を書いてもらうことが一番効果的な方法だと思います。
ここからは、そのためにどうしたらいいか私なりの意見です。
どうにかして英語圏で評価してもらえる環境に飛び込む必要があると思います。例えば、数週間、英語圏の病院に出入りして、自分をアピールして、その短い間に推薦状を書いてもらえるように持っていくことができればインターンに一気に近づけるのではないかと思います。ビジティング、フェローシップ、マスターなど、コネクションを駆使してできる限り自分を評価してもらえる環境に身を置くことが重要です。
ビジティングの立場では、症例を主治医として診ることはおそらくできません。症例を持てないと自分の能力をアピールするチャンスもかなり限られてしまいます。しかし、そのビジティングのうちに爪痕を残すようなこと(例えば、学生にラウンドをする、先生と研究を一緒にするなど)をガンガンしていき、英語力に問題のないこと、気持ちよく一緒に働ける存在であることをアピールすることで、推薦状を書いてくれる先生がいらっしゃるかもしれません。
米国専門医を目指す場合、日本のどんな就職先を選ぶべきか
私は就活の際、米国にいくということを視野には入れていたものの、それを中心に考えていたわけではありませんでした。私が見学に行った時に、すごく丁寧に教えてくれる、理想の獣医さんがいたこと、そしてその病院の方針が好きだったこと、働かれていた先生方の意欲に惹かれたため一般動物病院の就職を決めました。
私にとって、3年間働かせていただいた動物病院は、今自分がレジデントをすることができている理由の一つと言っても過言ではないと思います。毎日、意欲的で勉強熱心な先生方とともに働くことで、自分のモチベーションがついにはアメリカで学ぶことまで発展したのです。
米国で働くチャンスを増やすには、コネクションを増やすことが一番効率がいいと思います。よって、米国専門医の先生がいらっしゃる病院は、大きなアドバンテージだと思います。ただし、長期スパンで見た時にどれだけ自分の意欲をキープできるか、どれだけコネクションを活用できるか、は働く環境の相性ということになると思います。
どんな環境であろうが、長期的なプランで、常にアンテナを張り巡らせて、自主的に行動することで道が開けてくると私は信じています。
専門医になるまでに何年くらいかかるか
私の場合仕事をやめてからレジデントを修了するまでで、順調にいけば6年で専門医試験を受けられるようになります。(日本での準備期間1年+インターン2年+レジデント3年)
私が知る限り、専門医になるのにストレートで行った人で4年(マッチングに臨む1年+レジデント3年)、長い場合は10年かかったという先生も知っています。もちろん、なんの専門医を目指すかで競争率が違うので、一緒くたに何年が平均ということはできません。
英語の壁はどう乗り越えたか
英語の壁を乗り越えたかどうかと聞かれると、多分まだ乗り越えられていないと思います。まだコミュニケーションに苦しむことはありますし、ネイティブの獣医学生の助けが必要なことも多々あります。
私は仕事を辞めたところからのスタートだったので、ひたすらやるしかないという状況でした。中途半端な気持ちでは成し遂げられないだろうということは覚悟していたので、普段の診察をこなしながら英語の勉強をするというのは初めから考えていませんでした。以下に私なりの考えをまとめます。
日本にいる時にできることをする
- IELTSのための勉強はまた別
- 試験の英語はアメリカに来てから日々使う英語とは大きくかけ離れているので、IELTSのための勉強を必要最低スコアに達するまで集中的にしました。
アメリカに来て働き出したらなんとかなる
- 仕事があると、下手でもコミュニケーションを取らざるを得ません。なので働き始めたときの心配は一切いらなくて、どうやってアメリカで働き出せるかという所に全集中するべきかと思います。
おわりに
このブログを通じて、米国で勉強することに興味がある先生方の力になれればと考えています。このページを随時更新していく予定ですが、この他ご質問があれば直接お問い合わせください。