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  • 犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    犬・猫の呼吸困難②11カテゴリーに分けて考える

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、新人獣医さんに向けて、呼吸困難の症例がきた時の診断までの思考プロセスをご紹介します。このプロセスをしっかりと理解し、鑑別疾患を上げて順序立てて診断を組み立てて行く事で、呼吸困難患者さんに向き合うのが怖くなくなります。 犬・猫の呼吸困難①では、なぜ診察の際に「ちゃんと考える事が大事か」を説明しました。犬・猫の呼吸困難②では呼吸困難の原因11つのカテゴリーをご紹介します。このカテゴリーに当てはめる事で、患者さんをどう安定させるかのヒントを得る事ができます。臨床現場で直結して役に立つ内容を、アメリカのトレーニングで学んだ事や経験を盛り込みながら解説します。①-④まで最後までご覧ください。 呼吸困難患者さんの診察のゴール 呼吸困難総論の最初の記事なので、最初に獣医師の仕事としてのゴールについて書きます。 私たちのゴールは、3つです。 アメリカの救急集中治療科の役割は、主に①になります。そして②と③は内科が専門とする領域になります。 全ての呼吸困難は、11つのカテゴリーに分類する事ができます。①は、呼吸困難の原因をこの11のカテゴリーのどれにあたるのかを即座に判断し、それに応じた安定化を行うという工程になります。 さていよいよ、11カテゴリーをご紹介していきます。 頻呼吸を11カテゴリーに分けて考える 呼吸が速い、努力呼吸の原因はこれら11個のカテゴリーに分類できます。最後のlook-alikeとは、痛み、酸塩基のバランスの乱れ、興奮、敗血症、など、呼吸器や換気以外の原因が含まれます。 呼吸器の症例を見たときに、最初のゴールはこの11個のカテゴリーのどれに当てはまるかを推測することになります。 このカテゴリーの中に、様々な病態が含まれます。具体的な疾患を診断する前に、11つのうちどれに当てはまるかを分類する事で、次のステップ、診断(どこにフォーカスを当てるか)や安定化の方法が異なります。 上部気道、下部気道、肺実質のおさらい それでは、11個を上から順に説明して行く前に、上部気道、下部気道、肺実質のおさらいだけしておきます。 呼吸器は、上部気道、下部気道、肺実質の3つで構成されます。呼吸困難の全てがこの3つに分類できれば簡単なのですが、呼吸器以外の疾患によっても呼吸困難が生じるので、11カテゴリー全ての可能性を考慮する事が重要です。 それではいよいよ、①からざっくりとカバーしていきます。もっと詳しく勉強したい方は、リンクからその疾患に特化したページもご用意しているので、ご覧ください。 ①上部気道閉塞: upper airway 上部気道閉塞の異常で代表的なのは、短頭種気道症候群です。外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、気管低形成とといった、気管支手前までの気道が狭くなる病気の総称です。(短頭種気道症候群に関してはこちらのページで詳しく解説しているのでご参照ください) 他には、鼻腔内ポリープ、腫瘍、異物、喉頭麻痺、喉頭虚脱、気管虚脱などの病気があります。 上部気道閉塞を患った患者さんは特徴的な呼吸をします。聴診器を使わずにも聴こえる、ストライダーやスターターという異常呼吸音を出します。呼吸様式、聴診に関してはこちらの記事で解説しています。 上部気道閉塞を引き起こす代表的な疾患 ②下部気道閉塞: lower airway 下部気道疾患の代表的な疾患 肺胞に入るまでの細い気管支に炎症などの異常が起こることで呼気努力が生じるのが特徴的です。お腹で押すように、吐く時に力を入れます。呼吸様式は、吸う時間に比べ吐く時間が長くなることも特徴的です。聴診では、笛の音の様なウィーズが一般的に聞こえます。 猫は喘息が重症になると開口呼吸をします。 慢性気管支炎や猫喘息の原因は様々です。環境的な要因が関与していることもあります。 ③肺実質疾患: parenchymal diseases 肺実質の異常に含まれる代表的な疾患 誤嚥性肺炎やケンネルコフなどの肺炎がよく見られる代表疾患です。他には、ARDSやALIなどの肺炎、寄生虫やカビ感染、異物の混入などによる肺炎、免疫疾患である好酸球性肺炎などもあります。 呼気吸気にかかわらず呼吸数が速くなることが多いです。感染性の場合、呼吸様式の変化だけでなく、湿性の咳をしたり、発熱などの他の症状を呈することもあります。酸素化機能が低下するため、重度の場合、チアノーゼが見られることもあります。 ④胸腔内の異常: pleural diseases 胸腔内の異常に含まれる代表的な疾患 胸腔内で何かが大きくなる/増えることで肺が広がるスペースがなくなり、換気不全になります。うまく換気できないことで体内にCO2が蓄積することから呼吸数が上昇します。 猫では、胸水によってparadoxical componentといって、胸とお腹の動きが相反するような呼吸をすることが多いといわれています。 胸水の原因も様々で、腫瘍、出血、感染、乳糜、心臓病(犬では右心不全、猫では左心不全でも生じる)、特発性などがあります。また、気胸と言って、胸腔内に空気がたまる病態、胸腔内の腫瘍の増大においても肺がうまく膨らめないことによって頻呼吸が生じます。 胸腔内疾患に関してはこちらで解説していきます。 これらの異常は、患者さんにストレスをかけてレントゲンを撮影する前に、FASTスキャンができれば簡単に検出することができます。必要に応じて治療的胸水抜去を行い、安定化してからレントゲンを撮れば、患者さんが急変するリスクを減少できます。 ⑤胸腔外の異常 胸腔外の異常とは、例えば腹部の腫瘍が増大/GDV/腹水などで腹部から胸腔を圧迫、肺が拡がれなくなるような場合を指します。お腹からの圧力が原因の場合は、GDVであれば減圧、腹水であれば腹水抜去などそちらの原因除去を優先させます。 しかし、呼吸器の病気を合併している場合もあるので、原因と思われたものが解除された後の再評価も非常に重要です。 ⑥胸壁の異常: body wall 胸壁の異常の代表疾患…

  • 【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    【米国獣医マッチング】2024年のスケジュールを紹介!

    この記事では、2024年のマッチングのスケジュールについて解説します。 候補者には、2回の締め切りがあります。この締め切りに何を提出するかなどをイメージして、期限前にしっかりと準備ができているようにしましょう。 2024年カレンダー 2023年9月1日プログラムエントリー 2024年のマッチは、前の年の9月から始まります。 プログラムのエントリーとは、各大学や動物病院がポジションの掲載をし始めることを指します。この間、候補者はまだこの情報を見ることはできません。 2023年10月1日プログラム検索 10月になって、初めて候補者がポジション(プログラム)を検索することができるようになります。この期間は、まだすべてのポジションが掲載されているとは限らないため、検索をし始めるのはいいですが、プログラムエントリーの締め切りまでは情報をアップデートし続ける必要があります。 2023年11月1日プログラムエントリーの期限と候補者の登録開始 ここでようやくすべてのポジション(プログラム)についての情報が出揃ったということになります。 この日から、候補者はマッチングプログラムに個人情報を登録をして、サインインできるようになります。 この期間に行わなければいけないことは大きく2つです。 ①プログラムのリサーチ プログラムに関する詳細の体外はマッチングのホームページに詳細が書いてあります。しかし、外国人の受け入れやビザの複雑な事情がある場合は、「きっとそうだろう」と仮定しないで必ず直接担当の方に問い合わせることをお勧めします。 それによって、広がる可能性もあれば、採用されないポジションに申し込んで自分の時間を無駄にすることも防げます。 ②パケット(必要書類を揃える) マッチングプログラムに必須となるパケットとは以下になります。 卒業した獣医大学の書類を集めるのに、時間がかかることもあるので、余裕を持って準備することをお勧めします。 履歴書、パーソナルステートメントを完成させるのに、私はものすごく時間を要しました。早めから取り掛かり、アメリカで獣医大学で働く先生などに添削してもらうことをお勧めします。 日本人の謙虚なステートメントは、アメリカ人からすると「自信のなさ」と捉えられてしまう可能性が高いです。よって、アメリカ人にとって見栄えの良いステートメントにするための努力が必要かもしれません。 私個人的な意見としては、このパケットの中で最も重要なのが推薦状です。そして、いい推薦状をもらうために1年間もしくはそれ以上努力をし続ける必要があります。誰に頼むかがキーとなります。大御所の先生の書いた、「弱いレター」と、無名の先生の書いた「強いレター」。おそらく後者の方が良い印象を与える可能性が高いです。「強いレター」をもらえる人から推薦状をもらうようにすることをお勧めします。 推薦状は、候補者を介さず、直接VIRMP協会へ送られることになります。よって、候補者は、自分のサインインページから、推薦状が提出されたかをみることはできますが、中身を見ることはできません。 推薦状がもしも期限ギリギリまで揃っていない場合は、書いてくれる人が忘れている可能性を考慮して、リマインドを送ることをお勧めします。もしも推薦状が申し込み締め切りまでに間に合わなければ、実質どこの学校ともマッチしない可能性が高いので気をつけましょう。 2024年1月8日申し込み締め切り この日が、上記に述べた2点(応募するプログラム及びパケット)のデッドラインになります。この2点以外にも、大学固有で必要な提出書類がある場合もあるので、しっかりと確認しましょう。 この申し込みが終わったら、次の締め切りまで何をするのでしょうか。 この間には、面接を受けたり、どのプログラムに行きたいか(もしくは行きたくないか)を決めるための情報収集を行います。 面接のオファーは大学側からくることが多いです。オファーをもらうということは、大学側があなたに興味がある証拠です。もしも面接のオファーが来なかった場合は書類で「可能性が低い」と捉えられた可能性が高いです。(ローテーティングインターンには面接を行わないことが一般的です) 日本から応募する場合、自分もそうでしたが、「どこでも良いから入れてくれ」状態になりがちです。実際そうなのですが、面接をする側としては、「どこでも良いならウチでなくてもいいな」と感じてしまう可能性が高いので、しっかりとプログラムの特徴を把握し、「このプログラムで勉強したいです」と伝えることをお勧めします。 2024年2月16日候補者のランキング締め切り マッチング最後の締め切りです。 ここでは、面接などで得た情報や感触をもとに、どの大学に行きたいかの順番を決めます。 「この大学には絶対に行きたくない」という場所があれば、その大学をランクから外すことで絶対にそこにマッチする可能性は無くなります。 また、何らかの事情によってマッチングから手を引きたい場合(来年から働けなくなる、など)はここで「withdraw」することで、どこにもランクしていない状態にすることができるので、ペナルティなくマッチを中断することができます。 万が一、マッチしてしまった大学で働けなくなった、という状況が起こった場合、マッチングプログラムに次から3年間申し込みすることができなくなる「ペナルティ」が課されることになるので注意しましょう。 2024年3月4日マッチ結果発表 候補者のランキングの後に、大学側の候補者のランキングが行われます。これによって、マッチングのアルゴリズムに沿ってだれがどこの大学のプログラムに入るかが決定することになります。 もしもマッチできなかった場合、スクランブルと言って、マッチできなかった候補者とマッチできなかった大学の個々の採用が始まります。スクランブルは、もはや早いもの勝ちと言ってもおかしくないシステムなので、自分から大学に積極的に連絡をとりに行く必要があります。 また、連絡が来る可能性もあるので、電話やメールにすぐに対応できるようにしましょう。 2024年3月18日情報開示 ここで、定員割れしたポジションの情報が、マッチングに申し込んだ人以外にも開示されることになります。誰でもあいたポジションを狙いにいける期間ということです。 終わりに この記事でマッチングのシステム(どの時期に何をしなければいけないか)を理解していただけたでしょうか。候補者としてやらなければいけないことはそこまで多くありません。ただ、様々な情報が飛び交ったり、他の人の話に流されたりと、とてもストレスがかかる時期と言ってまちがいないでしょう。 準備をしっかりすることで、少しでもチャンスが大きくなる可能性があります。寒い時期で辛いですが、みなさん頑張ってチャンスを掴んでください。

  • 【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【犬猫呼吸困難の原因11種類】病態から理解する犬猫の病気

    【呼吸困難の原因】についてのインスタグラムの投稿です。 呼吸困難は11種類の病態に分けることができます。 解剖学的にどこに問題があるかで、安定化のアプローチが異なってきます。 これらを呼吸様式や聴診、身体検査、TFASTからこれらを分類することで、命の危険がある状態の患者さんの安定化方法が見えてきます。 安定化後のさらなる検査によって診断を絞っていきます。病態による分類ごとの鑑別疾患リストがあれば、どんな検査が必要になるかもプランが立てやすくなります。 11種類も多い!と思われるかもしれせんが、一つ一つ病態を理解すれば、どうして神経系の病気と呼吸器の異常がつながるか、などがわかるようになります。 View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) View this post on Instagram A post shared by みけ🇺🇸と学ぶ ER/ICU動物看護 (@eccvet_mike) \この記事のハイライト/☆​呼吸困難の原因を11種類に分類する☆各分類に含まれる疾患をイメージする \関連記事/☆呼吸困難の原因11種類(前編)☆上部気道疾患☆下部気道疾患☆神経原性呼吸困難☆胸腔内の疾患☆胸壁の疾患(後編)☆胸腔外の疾患☆肺実質 ☆心原性☆肺血栓 ☆血管系 今回の投稿がためになった!面白かった!という方は見返せるようにインスタグラムで保存やいいね!もよろしくお願いしますm(_ _)m

  • 犬・猫の頻呼吸③呼吸様式を言い表す

    犬・猫の頻呼吸③呼吸様式を言い表す

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、新人獣医さんに向けて、呼吸困難の症例がきた時の診断までの思考プロセスをご紹介します。このプロセスをしっかりと理解し、鑑別疾患を上げて順序立てて診断を組み立てて行く事で、呼吸困難患者さんに向き合うのが怖くなくなります。 ②では、全ての呼吸困難の原因は11つのカテゴリーに分類できるという解説をしました。本記事③では、呼吸困難の症例が来た時に11のどれに当てはまるか、レントゲンなどの検査を行う前に予測をつけるためのツールについてお話しします。 アメリカのトレーニングで学んだ事や経験を盛り込みますので、①-④まで最後までご覧ください。 呼吸様式の視診はいつ行うか すごく大事なことなのですが、呼吸様式をいつ(どのタイミングで)観察すべきでしょうか。 外来患者であれば答えは、来院して、動物に触り始める前です。もしも興奮している場合、酸素供給が必要な場合は、酸素室に入れて少し落ち着いてからです。 そして、入院患者であれば、ケージから出す前です。全ての入院患者の処置を始める前に、呼吸様式は確認するようにしましょう。 体に触れる、診察台に乗せる、触診するなどで興奮して、パンティングをし始めてしまうと、呼吸様式がうまく評価できなくなります。必ず、全ての検査を始める前に視診を済ませるようにしましょう。 呼吸様式を言葉で表す 呼吸様式を見る際に集める情報は以上になります。これは、患者さんに触らずに目視でできる情報になります。 呼吸数 必ず呼吸数を数えましょう。Pantingとだけ書くのではなく、きたとき、さらに酸素室で少し落ち着いてから呼吸数を測り直しましょう。 急いでいる場合や呼吸数がとても速いは、6秒測ってかける10してザックリの呼吸数を測定することもあります。一秒一刻を争う場合に、えーーっと13回のかける6は、などとやっているヒマがないこともありますので。 努力呼吸 努力呼吸の有無はどのようにしてわかるのでしょうか。呼吸数が速い=努力呼吸にはならないので注意しましょう。努力呼吸とは、単純に言い換えれば一生懸命呼吸をしているか、苦しそうか、ということです。 一生懸命呼吸をしている犬猫に共通することは、胸部の動きが大きくなる、もしくはお腹で呼吸をする、という点です。 犬では、呼吸に集中するため周囲の環境への反応がうすかったり、犬座姿勢といって前肢を肩幅くらいの幅に開き、首を伸ばして酸素がなるべく入ってくるような姿勢を取ったりすることがあります。本当に苦しい時、動物は座らないことが多いです。猫の努力呼吸は、吸気時に鼻孔が拡がったり、胸とお腹の動きが一致せず、お腹で押す様な呼吸が特徴的です。重症な場合は開口呼吸をすることが特徴的です。 痛みや興奮などにも影響されてわかりにくいこともあります。診察台の上で興奮している場合などは、一度静かな酸素室に入れ、必要であれば鎮静剤を少し入れてあげ、落ち着かせた状態を観察することが重要です。 吸気努力・呼気努力 「どんな努力呼吸」かは上記3つに大別できます。見分け方は簡単で、呼気、吸気、どっちの時間が長いかを評価します。正常であれば呼気時間=吸気時間になります。長い方が努力している、ということになるので、吸気時間の方が長ければ吸気努力、呼気時間が長ければ呼気努力。どちらも同じくらい努力している時は呼気・吸気努力、そして胸とお腹の動きがバラバラの場合、奇異性呼吸と言います。 この情報が重要な理由は、どの努力呼吸かによって、体のどこに問題があるか予想をつけることができるからです。以下のイラストを見てください。努力呼吸を表現することで、以下の3つの部位のどこが悪いかを大別することができます。(もちろん判断が難しいこともあるので100%ではありませんが) 吸気努力 呼気努力 肺実質 呼吸様式を言い表すとき、「呼吸困難」や「努力呼吸あり」という表現では、情報不足になります。 学生が内科専門医にケースのプレゼンテーションをし始め、学生はThere is a respiratory effort. (努力呼吸があります)と言って次の身体検査所見に移ろうとしたときに、専門医のストップが入りました。 専門医はDescribe the respiratory effort. (努力呼吸を言葉で表してください)Is it inspiratory, expiratory or paradoxical effort?とききました。そこでうまく答えられなかった学生のために、専門医からの呼吸様式の描出に関する熱い話が始まり、私もフムフム、と後ろでこっそり学んだことを覚えています。 腹部の動き 最後に、呼吸時のお腹の動きを見てみましょう。 これらは、腹式呼吸、奇異性呼吸と言い表されます。英語ではabdominal componentやparadoxical breathingと言って、お腹の筋肉を使って呼吸をする努力呼吸になります。 腹式呼吸 奇異性呼吸 Paradoxical breathing 奇異性呼吸は猫の胸水で多くみられます。胸腔内疾患などによって、肺が胸腔の動きに連動しなくなった場合、お腹の動きが胸部と連動しなくなることを奇異性呼吸と言います。 異常な呼吸を言葉で言い表せるようになる意味とは…

  • 犬・猫の呼吸困難①診断までの思考プロセス

    犬・猫の呼吸困難①診断までの思考プロセス

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。 この記事では、新人獣医さんに向けて、呼吸困難の症例がきた時の診断までの思考プロセスをご紹介します。このプロセスをしっかりと理解し、鑑別疾患を上げて順序立てて診断を組み立てて行く事で、呼吸困難患者さんに向き合うのが怖くなくなります。 ①では前置きです。なぜ診察の際に「ちゃんと考える事が大事か」を強調します。アメリカのトレーニングで学んだ事や経験を盛り込みますので、①-④まで最後までご覧ください。 呼吸困難患者さんの診察のゴール 呼吸困難総論の最初の記事なので、最初に獣医師の仕事としてのゴールについて書きます。 私たちのゴールは、3つです。 アメリカの救急集中治療科の役割は、主に①になります。そして②と③は内科が専門とする領域になります。 全ての呼吸困難は、11つのカテゴリーに分類する事ができます。①は、呼吸困難の原因をこの11のカテゴリーのどれにあたるのかを即座に判断し、それに応じた安定化を行うという工程になります。 診断までの段階的な思考プロセスの重要性 アメリカでは、とにかく段階的な思考プロセスを重視します。正直、現在私がやっていることは、数年前とそう変わりません。治療方法も大きく異なることはないかもしれません。 しかし、なぜこの検査をするのか、なぜ鑑別診断にこの病気が含まれるのか、というしっかりとした理由を持つことで普段の診察の自信につながります。オーナーさんへのインフォームの仕方も変わります。さらに、例えば専門の先生に症例を送らなければいけなくなったとき、論理的な根拠に基づいて治療されていれば、引継ぎもスムーズに行うことができます。 例えば、呼吸が悪い患者さんが来院したときを想像してみてください。 私が日本で臨床獣医師を行なっていたとき、 ということを流れ作業のように行っていました。 アメリカでの経験を経た今、実際やることが大きく異なるわけではありませんが、頭の中の思考プロセスは大きく変わりました。 ここで私が考えるようになったこととは、 この様な思考を行う事で、検査に進む前に、ある程度鑑別診断が絞れている状態にあります。この情報を持った上で、飼い主さんにインフォームをし、さらなる検査に進むことになります。 レントゲンを撮る前にできることとは アメリカの大学病院では、画像科の専門医がレントゲンを読むため、コストが高く($150以上:約2万円)、質の高い画像の撮影が必須になります。さらに、施設が大きいためレントゲンの部屋に連れていくのに2-3分、さらにペットをラテラルにして、と患者さんに大きなストレスがかかります。 これらの理由で、レントゲンを撮る際には、 が必須条件になります。 このようにレントゲンのハードルが非常に高いとなると、レントゲンをとる前にある程度「病気のあたりをつける」必要があります。アメリカでは、レントゲンが取れないほど状況が悪い患者さんでは、レントゲンを取らずに試験的な治療を開始することもあります。 この「病気のあたりをつける」という力は、レントゲンが簡単に取れる日本の環境でも大きく活かされると信じています。なぜこの検査をするのか、なぜ鑑別診断にこの病気が含まれるのか、というしっかりとした理由を持つことで普段の診察の自信につながるからです。 この力を養うには、段階的な思考プロセスが非常に重要になってきます。レントゲンを撮る前の身体検査などで鑑別診断3つくらいまでに絞って試験的な治療で状態を安定させてからレントゲンなどの検査に進むといったステップになります。 鑑別診断を立てるのに必要な情報リスト 単純で当たり前のように見えますが、このプロセスで鑑別診断を立てるには、 を正しく評価する必要があります。そのためには、以下の質問に答えられる必要があります。 実際、これらを知らずにでも同じ治療を選択することはできます。しかしこれらのプロセスをしっかりと組み立てながら診察にあたる事で、自分が何をしているか、どうしてこの検査を飼い主さんに勧めているかが明確になるため、診察の質が上がることはまちがいありません。 これらは、決して恥ずかしい疑問ではありません。私は、大学の授業で病気の患者さんに触れる機会はありませんでした。本物の患者さんを触ったこともなく、教科書からこれらを学ぶことは不可能だと思います。 臨床現場にでた今、これらをしっかりと身につけていく事が重要です。 犬・猫の頻呼吸②-④では、これらの疑問に答えられるように一つ一つ解説していきます。まずはこれらの主軸を学んだ上で、一つ一つの病気にフォーカスを当てて勉強して行くことで大きな成長につながります。 まとめ

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】ペットがヤマアラシに襲われる⁉︎春から夏は要注意‼️実際の対処法とは⁉︎

    【アメリカでペットと暮らす方へ】ペットがヤマアラシに襲われる⁉︎春から夏は要注意‼️実際の対処法とは⁉︎

    この記事の内容 ペットがヤマアラシに襲われることがある 刺さった針によって起こる合併症 ペットがヤマアラシに襲われたときにとるべき行動 病院での処置 便利な英単語 まとめ ペットがヤマアラシに襲われることがある アメリカの地域によっては、野生のヤマアラシが犬を襲う/犬が遊ぼうとして針が刺さるといったことが起こります。嘘のような話ですが、私が現在働いている地域では珍しくはなく、1週間で4件もエマージェンシーに運ばれてきました。 春から夏にかけて、ヤマアラシの行動が盛んになるため、症例数はこの時期に多くなります。 実際に襲われているところが目撃されることもあれば、外にいって帰ってきたら針が刺さっていた、ということもあります。英語ではporcupine attackといいますが、本当に「襲われた」のか、遊んでいたら針が刺さってしまったのかは実際に見ていた人のみぞ知る、ですね。 針が刺さるのは主に顔が多いです。なぜなら、多くの犬が興味を持って、匂いをかいだり、くわえようとしたりするからです。しかし、ヤマアラシからのアタックもあるため体幹部に針が刺さっていることも少なくはありません。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 刺さった針によって起こる合併症 深部によって異なる 真菌(カビ)感染 細菌感染 異物反応(炎症) 針が体内で移動し、腹腔内や胸腔内の臓器に達する 刺さった部位や、どのくらいの深さまで刺さっているかで重症度は異なります。 眼に刺さった場合、唇を貫いて口腔内にまで貫通している場合、胸壁や腹壁を貫くように深くまで刺さった場合は注意が必要です。 基本的に、浅ければ抗生剤などの薬は必要ありませんが、深部まで到達している場合や、針の一部が体内に入り込んでしまった場合は、感染が生じて膿が溜まったり、異物反応によって炎症が起こったりします。 体内に入り込んだ針の一部は、身体中を移動する可能性があります。例えば、ヤマアラシに襲われてから2週間後に呼吸が苦しくなって病院を訪れた犬の肺から針の一部がCTで見つかったり、心臓に突き刺さった針が超音波で見つかったという症例報告があります。 非常に恐ろしい話ですが、針の一部が体内に入っている期間が長いほど、予後が悪くなります。中には残念ながら亡くなってしまうこともあります。 ペットがヤマアラシに襲われたときにとるべき行動 自分で抜かない すぐに動物病院へ連れて行く ペットがヤマアラシに襲撃されたとき、とるべき行動はすぐにエマージェンシーに連れて行くということです。針自身に毒などはありませんが、痛みを伴うこと、前述したように異物が体内に入り込んでしまう可能性があること、時間が経つと炎症によって針が抜けにくくなることから、できるだけ速く針を抜いてあげる必要があります。 くれぐれもご自宅で抜こうとしないでください。一つ目の理由は、痛みを伴うので、ペットが可哀想だからです。そして、針が折れて体に一部が残ってしまうと、完全に取り除くことが逆に難しくなります。 病院での処置 痛み止め 鎮静 できるだけ針の一部と体内に残さず抜く 必要に応じて抗生剤の処方 必要に応じて痛み止めの処方 重度な場合はレントゲン、CTスキャン、MRIなどが必要なこともある 試験開腹、開胸が必要なこともある 病院ではどんな処置が行われるか。ゴールは痛み止め、鎮静薬を投与して、針をできるだけ体内に残さず抜いていくことです。 もしも皮膚の下に針の一部が触診で確認された場合は皮膚を少し切ってでも一部を取り除く必要があります。 余程深い侵襲的な障害がない限り、抗生剤は使わないことが多いです。 針が刺さって、すぐに体内を移動するわけではありません。病院で、全部抜いたと思っても、100%抜き切ることが難しいこともあります。体内に針の一部が残ってしまった場合、症状として現れるまでに2週間ほどかかります。 どこに移行したか、なんの臓器が障害を受けたかによって、発症する症状は様々です。 もし体内を針の一部が移動して何らかの症状が出た場合は、CTスキャンやMRIなどの画像検査、もしくは試験開腹や開胸によって異物を取り除く必要があります。残念ながら、CTスキャンやMRIでは異物の有無、位置を知るのに100%の感度がある検査ではありません。異物が臓器に刺さっていても、正常かのように写ってしまうこともあります。なので証拠がつかめないまま試験開復したなどの手術に進まなければいけないこともあります。 便利な英単語 porcupine ヤマアラシ porcupine attack ヤマアラシによる襲撃…

  • アメリカ到着後、最短で車を使える状態にする方法

    アメリカ到着後、最短で車を使える状態にする方法

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。 アメリカ生活2年目になります。渡米してきたのは2020年の7月。コロナ騒動が始まってすぐの頃でした。コロナによって、出発が遅れ、検疫によって働き始めたのは予定より1ヶ月遅れになりました。 一刻も早くアメリカで生活の基盤を作りたかったため、日本でできる限りの準備をして、すぐに車を使える状態にできるよう試行錯誤したので、今回はその方法をご紹介していきます。 アメリカ到着後、最短で車を使える状態にする方法 車を入手して、ある程度の期間乗れるようにするためにはいくつかの工程が必要です。州によっても異なりますが、大体の流れを書きます。詳細やダブルチェックは忘れずに。 大まかな流れ *は自動車保険によってはスキップ可能 車の購入まで終わってしまえば、少し猶予期間があり、書類が揃い次第、州のドライバーズライセンスを取得すれば大丈夫です。 ①国際免許を取得 (日本で) 必要なもの(東京の場合) まずは国際免許を日本で取得します。これは、発行から1年間有効ということにはなっていますが、「到着後何日までに州のライセンスに書き換えなければいけない」というルールがあります。期限が何日かは州によって異なります。 このルールは結構曖昧です。しかし、違反で免許を見せないといけない状況になった場合などに問題が起こらないよう、早めに書き換えることをおすすめします。 ②SSN(ソーシャルセキュリティナンバー)/州のドライバーズライセンスを取得 SSN/ドライバーズライセンスがある場合は、そのまま自動車保険の加入に進めるため、スムーズにことが進みます。 大手の保険会社では、基本的にSSNやドライバーズライセンスが必要になります。 大手自動車保険会社のうちの一つ、ProgressiveはSSNやドライバーズライセンスがなくても加入できる会社のうちの一つです。私は、日本人のディーラーさんから車を購入する際に教えていただきました。 日本の仲介業者が運営する自動車保険のプランもいくつかあります。特徴としては、費用が高い分、日本語のサポートある、という点です。初めの1年目は、どこで加入しても大体かなり高くなるので、日本のサポートつきにしてもいいかもしれません。 ③自動車保険に加入 SSNがある場合、見積もりをいくつかの会社でとり、自分の好きな保険を選ぶことができます。 SSNがない場合、Progressiveで加入。 他のブログでもわかりやすくアメリカの自動車保険についての説明があるので参考にしてください。 ざっくり説明すると、自動車保険には2種類あります。 Liability coverage(強制保険)とOptional coverage(任意保険)があります。 Liability coverage(強制保険) Liability coverageに入らないと、車を購入することも保持することもできません。 この保険には、対人、対物の2種類の補償があります。他人に怪我をさせたとき、他人のものを傷つけたときに発生する費用を補償する保険です。 州によって最低補償額が決まっています。保険証なしに車を運転することは違法になります。常に車に入れておくようにしておきましょう。日本の保険とは異なり、Liability coverageの最高額はアメリカでは大体300万円-500万円ほどとかなり低いです。 人を怪我させてしまった場合、これらの額をはるかに超える請求になる可能性があります。この額では不安な場合、アンブレラ保険と言って、liability coverageに加え、年間150ドルほどで対人、対物の補償を1億円に増やすことができます。 Optional coverage(任意保険) Optional coverage(任意保険)は、自分の車の修理費用などがカバーされる補償です。任意ですが、私は最初の1年目は不安だったので加入しました。 実際にかかった保険料 半年の保険料、900ドルかかりました。非常に高いです。 次の半年には700ドルになりましたが、それでも非常に高いです。日本人の友達に聞いても、初めの年は20万円くらいはかかったとのことでしたので、SSNなし、ヒストリーなし、では割り切るしかないようです。 ④車を仮登録 ディーラーさんからの書類にサインをして、一部支払いをすることによって仮登録が可能です。一時的な紙のナンバープレートを貼り付けることで、運転をすることができるようになります。この時点では車の名義はまだ自分ではありません。 これは本登録までの猶予期間なので、30日以内に本登録をして車の名義を自分にする必要があります。 ⑤車の購入 車の所有/維持にかかる費用は以下になります。車ゲットまでには、本体の値段に加え、+$1500くらい必要です。 ⑥車の本登録 車の名義が自分である証明である、権利証(title)を発行します。これも常に車とセットにしておく必要があります。 また、アメリカでは日本のような住民票はありませんが、車を州で登録する必要があります。これによって、ナンバープレートが州特有のものに変わります。 この車の登録(Vehicle registration)はをするのは、いわゆる「DMV (Department of…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】パグ、ブルドッグを飼われている方必見!短頭種気道症候群の手術を解説

    【アメリカでペットと暮らす方へ】パグ、ブルドッグを飼われている方必見!短頭種気道症候群の手術を解説

    この記事の内容 短頭種気道症候群の予防的手術について 鼻の穴を広げる手術=外鼻孔形成術 軟口蓋を短くする手術=軟口蓋切除術 喉頭小嚢を取り除く手術=喉頭小嚢切除術 起こりうる合併症 まとめ この記事では、短頭種気道症候群の予防的手術の具体的な方法についてイラストを使ってわかりやすくご紹介します。実際の動画は、Youtubeをお借りして掲載しています。英語ですが、実際にどんなふうに手術をしているか気になる方は見てみてください。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] 短頭種気道症候群の手術について 短頭種気道症候群の予防的手術とは、簡単にいうと、短頭種の狭い気道をできるだけ拡げてあげる手術のことです。短頭種気道症候群の病気に関してはこちらで紹介しています。それぞれの患者さんで、具体的な原因は異なります。どの部分の気道が狭いかを確認した上で原因を除去する手術を選択します。 この手術を早期にやっておくことのメリットは2つあります。 一つは、呼吸がしにくくて辛い状態をいち早く除去してあげることができる、ということです。日本でもこの手術に何度か携わりましたが、手術を終えた飼い主さんの満足度は非常に高く、「もっと早くやってあげればよかった」という言葉を何度も耳にしました。 もう一つは、上部気道閉塞が慢性的に生じていることで起こる合併症のリスクを軽減することができる、ということです。常に上部気道閉塞を抱えているわんちゃんは、気道内が常に陰圧になります。これによって、逆流性の食道炎が起こったり、誤嚥性肺炎が起こったり、様々な弊害が同時に起こります。 気道を拡げてあげることで、これらの合併症を軽減してあげることができます。それではここから、それぞれの手術について解説していきます。 鼻の穴を広げる手術=外鼻孔形成術 外鼻孔とは、いわゆる鼻の穴のことです。空気をできるだけ肺に多く送るには、入り口であるこの部分が開いている状態(右図のようにコンマ状)が望ましいです。しかし、多くの短頭種のわんちゃんは、鼻の穴が非常に小さいです(図左)。 この手術では、左のような線のような鼻の穴の隙間を、右のようなコンマ状に拡げてあげるという処置を行います。具体的には、余分な組織を切り取って縫い合わせるといった簡単な手術になります。手術中出血することもありますが、大きな血管はないので、圧迫していれば止まるくらいの小さな出血ですみます。 当然ですが、「外貌の変化」というのが合併症のうちの一つになります。 軟口蓋を短くする手術=軟口蓋切除術 口蓋とは、口と鼻を分ける板状の組織です。私たちがベロで触れている上の部分になります。硬い部分を硬口蓋、喉のほうに舌を沿っていくと途中から軟らかくなることがわかるかと思います。ここから奥が骨の組織のない軟口蓋と呼ばれる部分になります。 短頭種では、この軟口蓋といった部分が長く伸び、分厚く成長してしまいがちです。そうなると、気管の入り口である喉頭といった部分がこの組織で覆われることになります。 正常の喉頭を下に示します。これは、口を大きく開けた時に見えてくる、気管の入り口(喉頭)という部分になります。息を吐いているときには閉じていますが、吸っているときには喉頭が開いて空気が気管に入っていきます。 軟口蓋は喉頭の上に見えている組織で、長くなると以下の図のようになります。 軟口蓋の手術とは、この長くなった部分を切り取って、空気を気管に送り込みやすくする手術になります。切り取り方は様々ですが、動画のようにメスや、ハサミで切ることもあれば、電気メスで焼きながら切っていく方法もあります。 この軟口蓋という組織は、食べた物が気管に入らないように仕切る働きがあります。大きく切り取りすぎると、誤嚥などの合併症が起こることがあります。 喉頭小嚢を取り除く手術=喉頭小嚢切除術 喉頭小嚢という小さな膜状の組織はこの喉頭の裏側にある袋状の組織です。正常では見えません。短頭種のわんちゃんでは、それが裏から表に出てきてしまうのです。それによって、気管の入り口がさらに狭くなります。 この手術では、この袋を切り取って入り口を拡げてあげる、ということを行います。この組織も血流が豊富ではないので、ハサミで切り取るだけで、大きな出血などは起こりません。 起こりうる合併症 合併症に関してはそれぞれの手術でも少し触れました。もっとも注意しなければいけないのは、手術が終わり、麻酔から覚醒させるときです。 目が覚めて、気がついたら病院にいて、口にチューブがささっている、という状況にパニックになってしまうわんちゃんもいます。ここで興奮してしまうと、手術によって腫れている組織がさらに腫れてしまう可能性があるので、すぐに完全に起こす、というよりはゆっくりゆっくり様子をみながら起こしていきます。 ここで呼吸に問題がある場合はもう一度挿管をしなくてはならないこともあります。数時間かけて目を覚ましてくれたら、大体は同日に退院できることが多いです。 まとめ 短頭種気道症候群の予防的手術は早期に行うことが推奨される 気道のどこに問題があるか診断した上で必要な手術に進むことが勧められる もっとも注意しないといけないのは、麻酔後の覚醒時 [/read_more]

  • アメリカで獣医師として働く方法②NAVLE, ECFVGとは?

    アメリカで獣医師として働く方法②NAVLE, ECFVGとは?

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務し、2022年現在、アメリカの獣医大学で救急集中治療(ECC)の専門医を目指してレジデントをしています。 この記事では、アメリカで獣医師として働くためにはどんな試験をクリアする必要があるかご紹介します。 アメリカで獣医師として働くためのオプションに関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。 アメリカの一般病院で獣医師として働くには アメリカの一般病院で獣医師として働くためには、①アメリカで通用するライセンス及び、②アメリカの獣医師国家資格が必要になります。 日本の獣医師免許は海外では使えないの?という質問の答えは残念ながらノーです。日本の獣医大学を卒業して、国家資格を取得しても、アメリカで獣医師として働くことはできません。 アメリカで通用するライセンスとは、AVMA(AmericanVeterinaryMedical Association)という獣医を代表する非営利団体に、認められた大学のプログラムを終えたと言う証明です。 AVMAに承認された獣医大学は世界各国にあります。この承認の基準に関する詳しい内容は知りませんが、AVMAが定めた教育水準を満たすカリキュラムと、学生がしっかりと学べる環境が提供でているか、が審査されます。一度承認を受けた大学でも、定期的に審査が入るため、維持するためにも教育の質をしっかりと維持する必要があります。 アジアではソウル大学が唯一、 AVMAの承認を受けた獣医大学になります。 これらの大学を卒業することで、AVMAのおめがねに叶う教育を受けた、とみなされ、アメリカやカナダ、オーストラリアなどで、国家試験に合格すれば、現地で獣医師として働くことができる様になります。 日本はAVMAに承認された大学はありません。なので、この教育を受けた時と同様の自分のスキルを証明する必要があります。その方法が次に説明するECFVGになります。 ECFVGとは Educational Commission for Foreign Veterinary Graduates (ECFVG)とは簡単にいうと、日本の獣医大学を卒業した人が、アメリカでも働けるだけの知識とスキルを学んできましたよ、ということを証明するための資格になります。 EGFVGとは、AVMAに認可されていない獣医大学を卒業した外国人が、AVMAに認可された大学を卒業したと同様の知識やスキルがあることを証明するためのテストになります。 4つのステップからなり、2021年現在の受験費用は以下になります。 にクリアすると、晴れて国家資格取得ということになります。これをクリアするのに、総額100-150万円くらいはかかります。 BCSE BCSEとは、Basic and Clinical Science Examinationの略で、小動物臨床がメインの筆記試験になります。選択問題が225問、制限時間は220分です。 https://www.avma.org/education/ecfvg/ecfvg-basic-and-clinical-sciences-examination-candidate-bulletin#outline CPE CPEとは、Clinical proficiency Examinationの略で、3日間7セクションの実技試験になります。大動物、馬、病理解剖、麻酔、手術など幅広いスキルが問われます。実技試験なので、実際に牛の直腸検査なども試験に含まれます。 この試験を受けるためには、Step 3のBCSEをクリアしていることとNAVLEに合格している必要があります。(NAVLEに関しては後述) 受験費用は$7630と高額で、1セクション受け直すのに$1450かかります。場所はMississippi State UniversityかLas Vegas のコンフェレンスセンターの2箇所ありますが、ミシシッピはコロナの影響で現在は閉鎖しているので、実質ラスベガスの1箇所のみとなります。(2021年4月) 多くの日本人は、大動物の実地経験がない場合、CPEの試験で躓いてしまう可能性があります。実際に動物で練習できるような環境がない場合は、以下にしるすPAVEというプログラムに参加することで実技試験を回避する方法もあります。 PAVE PAVEとは、Program for Assessment of Veterinary Education Equivalenceの略で、EGVFGの実技試験を回避する手段になります。 Qualifying Examination(QE)という筆記試験をクリアした後、1年間の臨床実習のプログラムに参加することになります。このプログラムに参加する費用は$50,000ほど。アメリカの獣医学生の1年間の学費(州外の学生扱い)と同じだけ払って、学生の臨床実習に混ざることになります。 もちろん、お給料も出ないので、教育費に加えてアメリカでの生活費も必要になります。1年間にかかる費用は約1000万円くらい(2021年)とPAVEを実際に修了した友人から聞きました。 このプログラムに参加すれば、CPEのような実技試験を受ける必要なく、アメリカのライセンスを取得できます。…

  • アメリカで獣医師として働く方法①

    アメリカで獣医師として働く方法①

    はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務し、2022年現在、アメリカの獣医大学で救急集中治療(ECC)の専門医を目指してレジデントをしています。 この記事では、アメリカで獣医師として働くためにはどんな形があるかをご紹介します。アメリカで獣医師として働くことに興味がある方のための記事です。それぞれのポジションに必要になる資格なども合わせて解説します。 アメリカで獣医師として働く方法 日本人の獣医さんがアメリカで働く時に、準備が必要になる可能性のあるものは、移民ビザ、アメリカで通用する獣医師免許、州の免許、公式の英語試験のスコアです。 どのポジションで働くかによって、必要になるものが異なります。 大学病院で研修医になる 研修医には、インターンとレジデントのポジションがあります。アメリカの獣医大学の研修医について興味がある方はこちらの記事もご覧ください。 アメリカで研修医に申し込むために、基本的な必要なものは以下になります。 ビザは、アメリカにとって外国人である私の様な人には大きな問題になります。すべてのアメリカ獣医大学が外国人にビザを発給してくれるわけではありません。 外国人にビザを提供している大学を探し、採用される必要があります。昔と比べると、ビザを発行する大学が減っている様です。さらに、2020年に爆発的に流行したコロナの影響を受け、多くの大学が外国人を取らない方針に変えた、というのが2021年の現状です。 学生ビザ(F1ビザ)を使ってアメリカに滞在する場合、大学に入学する形になるので、英語のスコアを提出する必要があります。場所によっては免除されることもあるので、これがないと絶対に働けないというわけではないかもしれません。 就労ビザ(H1Bビザ)は普通の大学では研修医には発行されません。普通はH1Bが発行されるのは、最低でも所得が約90,000ドル以上ある必要があります。しかし、特殊な学校で例外がある様です。 マッチングに関しては別記事でガッツリと説明しているのでこちらもご覧ください。 Veterinary State board(州のライセンス) Veterinary State boardとは、州で働くライセンスになります。獣医学の知識だけではなく州の法律について理解しているかを調べるための試験のことです。必要ない州もあり、難易度も様々です。オープンブック、解答用紙をメールするだけのところもあれば、きっちりテストされるところもあります。 このライセンスに関しては、ポジションが決まり働く直前に取得すればいいので、基本的には心配する必要はありません。採用が決まってしまえば、この試験に落ちても採用が取り消されるということは、まずないはずです。 以下、AVMAのホームページから各州の情報リンク一覧にアクセスできます。 https://www.avma.org/advocacy/state-and-local-advocacy/veterinary-state-board-websites 専門医を取得後、大学病院でファカルティとして働く アメリカ獣医大学病院でファカルティとして働くには以下が必要になります。 専門医を取得してしまえば、大学ではアメリカの獣医ライセンスがなくても働くことができます。「専門医」として働くので、専門外の獣医医療行為をすることはできません。 ビザに関しては、専門医の資格があれば大学のファカルティとしては取りやすくなります。研修医として外国人にビザを発行しない大学でも、ファカルティには発行することが一般的です。 H1ビザというビザは、ある程度の所得(2022年現在90,000ドル)がある人のみに適応されるビザですが、専門医になればH1ビザが適応されるだけのお給料がもらえることが多いそうです。 一般病院(private practice)で働く 大学の外で獣医として働くには、ビザに加え、アメリカで働ける獣医師資格、アメリカの国家資格、及び州のライセンスが必要になります。 一般病院で勤める場合、病院からビザのサポートをしてもらう必要があります。就労ビザかグリーンカードになります。上記の2-4を取得していたとしても、働きたい病院からビザの発行がサポートされないということもあります。 すでにスタッフと顔見知りでビザをサポートしてでも採用したい、と言う要望を得るか、もしくは、アメリカの獣医大学での研修医として経験があると、外国人として一般病院で働くのに有利に働きます。 アメリカのライセンスを取得するには、ECFVGかPAVEのどちらかの方法を選びます。 ECFVGは4つのステップからなる試験で、獣医大学卒業の証明、英語、筆記、実技試験をクリアすると取得できます。申し込み、それぞれの試験に費用がかかり、すべてクリアするのに100万円くらい必要になります。 PAVEとは、実技試験を回避するための別の方法で、アメリカの獣医4年生に混ざって、1年間の臨床のプログラムに参加します。臨床トレーニングを終えれば、実技の試験は必要ありません。このプログラムに参加するためにかかる費用は州外の学生の1年分の学費と同様になります。1年間で、約1000万円(州外からの獣医学生と同じ学費に加え、1年間のアメリカでの生活費が必要)ほどかかるそうです。 ECFVGを取得しただけでは、アメリカの一般病院で働くことはできません。次のステップとして(同時にもできますが)、アメリカの国家試験であるNAVLE(ナブリ)を取得する必要があります。 NAVLEはアメリカ出身の獣医学生も必要になるライセンスです。日本の獣医国家試験のようなものと思ってもらえたらいいと思います。出題範囲は法律から大動物、魚まで、幅広いです。この試験費用は7万円ほど。11月と4月の年に2回チャンスがあります。 フェローシップ フェローシップとは、大学内で自分の好きな分野を研究したり研究したりできるポジションです。お給料は出ても少額のことが多いです。ビザを発給してくれるところもあれば、自分でビザを取得しないといけないところもあります。 自分でビザを取得するには一般的にはOPT(Optional Practical Training)というビザが必要です。 F1の学生ビザで1年間就学していると、翌年のアメリカでの滞在及び就労の延長ができるのがOPTです。この場合、滞在先の施設がビザを発給してくれなくても、OPTのビザで最長1年滞在することができます。以下のサイトがわかりやすくOPTを説明しているのでご参考にしてください。 学生が専攻した分野と関連のある職種で、企業研修を行うことができるビザです。私の知り合いのインターンは、ローテーティングインターンを別の大学で行い、ECCのスペシャリティインターンをOPTを使って過ごしていました。 マスタープログラムに参加する お給料は出ませんが、大学のマスターというポジションで学生をするというのも、アメリカに滞在するための一つの手段になります。大学にコネクションがある場合はこのようなポジションがないかを確認するのもいいかもしれません。2年間学生ビザで滞在できることになります。 私の友達は、アメリカで研修医をするために、2年間マスターとして動物病院に出入りして経験を積んだそうです。 アメリカで無給のなか生活する資金がある場合はこの選択肢もありかもしれません。マスターを2年間した後は、OPTで1年間滞在するビザが獲得できます。さらに、OPT extensionといって、1年間の滞在を最長3年まで伸ばすことができる場合もあります。 これを使えば、ビザを発給してくれない施設への応募が可能になります。 まとめ

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】かかりつけ動物病院のおすすめな探し方!

    【アメリカでペットと暮らす方へ】かかりつけ動物病院のおすすめな探し方!

    この記事の内容 かかりつけ病院の選び方 担当獣医さんの選び方 実際に病院へ行ってみましょう まとめ 私は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。ペットと一緒にアメリカに移住してきた、もしくはアメリカでペットを飼っている方には、かかりつけ病院と担当の獣医さんをつくることを強くお勧めします。この記事では、実際にかかりつけ病院をどのように選ぶか、どう活用するか、をご紹介します。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] かかりつけ病院の選び方 大きなジャンル 大学病院に併設するコミュニティプラクティス(この施設に関してはこちらを参照) プライベートの動物病院の二次施設 一般の動物病院 上記二つは、専門医が働く専門科を持つ大きな病院になります。メリットは、何か異常があったときの精密検査などのトランスファーが円滑に進むことが特徴です。 デメリットとしては勤務している獣医師が多いところは大抵すごく忙しいです。指名ができず、様々な先生が診察することになりかねません。また、忙しくて長時間の相談などがしにくい可能性もあります。そして待ち時間が一般の動物病院より長いことが多いです。 一方、一般の動物病院は何か異常があった時、検査機器などに限界があるので、詳しい検査が必要な時には二次病院に紹介することになります。同じ病院内でできないので、一度退院して、大きな病院に移動しなければなりません。これは一つのデメリットですが、メリットとしては、獣医師との信頼関係が築きやすいということです。 一般病院で予約制のところは大抵1症例あたりの枠が決まっているとは思いますが、より信頼関係を築き安い環境だと言えます。 賢いやり方だな、と思ったのは、基本的には一般病院に通っていて、病態が不安定になったり心配なことがあったら大学病院の専門科で予約を取る、ということを徹底していた方がいらっしゃいました。この場合、一般病院のかかりつけの先生だけでなく、専門科の先生ともかかりつけの先生を介して信頼関係を築くことができます。 病院の選び方 非常に難しい問題ですが、物知りで有名な獣医さんがいる病院が必ずしもいい病院なわけではありません。やはり、獣医さん以外のスタッフを含めた動物病院全体をみて決めることが重要です。 また、動物病院で働いていると、強く思いますが、スタッフ、特に看護師さんは1度患者さんをみただけでも、すごくよく覚えています。この能力は本当にすごいと思います。「この子はフードアレルギーだったよね」「皮膚病よくなってるね」「この子は男の人が苦手なのよね」など、細かいことまでちゃんと覚えていてくれるスタッフがたくさんいます。 そういいったスタッフの細かい気配りだったり、病院の雰囲気だったりも病院選びに非常に重要な点になると思います。 担当獣医師さんの選び方 かかりつけ病院の選び方は、おそらく日本と同じたと思いますが、担当の先生をどれだけ信頼できるかで選ぶのがいいかと思います。 ここまで読んでがっかりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、最高の担当獣医さんを決めるマジックは存在しません。本当に信頼できる口コミもありません。 ある人が素晴らしいと評価した病院も、別の人からは、二度と行きたくないひどい病院と言われているかもしれないからです。口コミは口コミとして一つの情報として捉えましょう。 私の意見としては、飼い主さんにとっていい獣医さんとは、全ての可能性をわかりやすく提示した上で、ご家族の意向に沿ったプランを示してくれる存在だと思っています。もちろん、飼い主さんによっては、全部説明してくれなくていいからベストだと思うことを全部やってくれ、と言われる方もいらっしゃいます。もしくは、全部の可能性を把握したいという方もいらっしゃいます。 それも踏まえて、飼い主さんに合わせた説明、プランニングができる獣医さんがいい獣医さんなのではないかと思っています。 獣医さんのスキルや知識を診察中に評価することはできません。結局どんなふうにコミュニケーションをとるか、というところに着目してしまいがちです。私のお勧めは、以下の点を実際に健康診断などで、行ってみて、評価してみることです。 信頼できるか 話しやすいか 英語は聞き取りやすいか 家族の特別な状況を理解してくれるか 時間を使って真摯に相談に乗ってくれるか 説明はわかりやすいか 二次病院に快く紹介してくれるか ペットは拒絶していないか 一般病院の先生は、基本的にオーナーさんとの信頼関係の構築をすごく重視しています。合わないと思ったら我慢せずに、先生を変える、病院を変える、などの手をとってもいいと思います。 実際に病院へ行ってみましょう やはりいくら評判がいい動物病院でも、実際に相性が合うかどうかは行ってみないとわかりません。 初めに行く病院は口コミでも、最寄りの動物病院でもいいと思います。ペットが健康な場合は病院や獣医さんを見定めに行くつもりで、診察に行くといいかもしれません。 基本的には予約が必要になるので、appointmentを取りたいと伝えると大抵同じ週で予約を入れてくれます。その時に、日本から越して来たこと、もしくは新しく飼い始めたことを伝えてください。身体検査や毎年必要な健康診断は英語でannual check up, anual examと言います。 予約なしで直接病院に行く、walk-inが可能な病院もありますが、予約の隙間を見て診察する形になるので待ち時間が長くなることがあります。また、予約無しにはできない検査もあるかもしれないので、事前に連絡をすることをおすすめします。 診察の前の準備 診察時後にもらう書類 (Discharge summary/Medical…

  • 【アメリカでペットと暮らす方へ】大学病院のコミュニティプラクティスと一般病院の違いとは

    【アメリカでペットと暮らす方へ】大学病院のコミュニティプラクティスと一般病院の違いとは

    この記事の内容 コミュニティプラクティスとは コミュニティプラクティスと一般病院の違い まとめ 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。ペットと一緒にアメリカで暮らしている方に向けに情報を発信していきます。 この記事では、Community Practice(大学病院の中の一般診療科)とは何か、地域の一般病院とは何が違うのか、ということをご紹介していきます。個人的には、アクセスがよければ、コミュニティプラクティスはかかりつけ病院としてすごくお勧めです。かかりつけ動物病院をお探しの方で、大学病院が近くにある方はコミュニティプラクティスも候補に入てみることをお勧めします。 [read_more id=#8221;1#8243; more=#8221;Read more#8221; less=#8221;Read less#8221;] コミュニティプラクティスとは 多くの大学病院にはCommunity Practice(CPと略されます)と呼ばれる、予防や一般診療を行う病院が併設しています。他の専門科と同様に、大学の一つのサービス(科)として確立されています。 コミュニティプラクティスのコンセプトとしては、welness(福祉)のためにできることをサポートする、ということになります。基本的に複雑な病気の診断などは行いません。主な役割は以下になります。 健康なペットの予防 健康診断 生活習慣の指導 しつけの指導 病気が安定している場合の定期チェック バンデージの交換 スケーリング、抜歯 などが主な役割です。 大学病院の「神経科」「循環器科」などと違い、コミュニティプラクティスには専門医がいません。一般の診察をする獣医師が勤務しています。彼らの仕事は、広く浅く、飼い主さんとの信頼関係を築き、ペットのQOL(生活の質)を保つための手助けをすることです。 なので、上記に挙げたような、生活習慣の指導、例えばフードや、予防薬、サプリメントの知識や、しつけ、新しいペットの導入の知識は専門医よりはるかに上です。 Annual checkと言って、1年に1度の身体検査、ワクチン、その他予防がメインになります。また、一般の病院と同様、緊急や重症ではないけれど、ここが気になる、という心配事を相談して、必要に応じて検査、治療を行います。例えば、皮膚を痒がってる、最近飲水量が増えてる、CKD(慢性腎不全)、関節炎の定期チェックなどです。 例えるならば、人のホームドクターと同じです。 コミュニティプラクティスに専門医はいませんが、強いて言えば、歯科がすごく得意な先生がいることがあります。多くの大学病院には、「歯科」というスペシャリティがありません。(なぜなら、歯科専門医になるのは実はめちゃめちゃ難しいからです)なので、スケーリングや抜歯(歯を抜く処置)といった歯の処置をコミュニティプラクティスが担っているという大学は少なくありません。 コミュニティプラクティスと一般病院の違い 大学病院のCPと地域の一般病院(general practice: 略してGP)との違いは大きく以下の2点になります。基本的に一般診療は費用面で大きく変わることはないと思いますが、大学では学生割引、社員割引、ハンディキャップ割引などがあるので、確認してみるといいですね。 teaching hospitalであるため、学生や研修医の教育要素が含まれている 最初のコミュニケーション、つまり問診などは学生が行います。 資格のあるドクターが常に学生をサポートして、最終的にはドクターと直接コミュニケーション取ることになります。 同じ説明を学生、ドクターに何度もしないといけない可能性があります。 スペシャリストの意見を得やすい 複雑な病気が見つかった場合などは、内科で詳しく検査、外科で手術が必要、神経科でMRIが必要などと他の科のサポートが必要になります。 同じ病院なので、検査結果やデータがすべて記録され、ドクター同士のコミュニケーションも円滑に進むことが多いです。 私がCPで働いた経験上、CPの先生方は基本的にオーナーさんに対して、まさに神対応です。常に学生のお手本となって来た先生方たちなので、本当に素晴らしいコミュニケーション能力だな、と関心しました。オーナーさんも、担当医の先生が本当に大好きな人が多いです。 診察にかかるコストの比較は以下になります。 健康診断、予防(ペットが元気な場合):コミュニティプラクティス=アメリカの一般病院=日本の相場 ペットが病気になった時:アメリカの大学病院gt;アメリカの一般病院gt;日本の相場 ※日本でも病院によって費用は大きく異なるので、例外もあります。 予防や健康診断にかかる費用は日本の病院と同じくらいです。ワクチンに関してはアメリカの方が安いです。狂犬病、混合ワクチンは1年でそれぞれ20ドルもかかりません。(診察料は別) ペットが病気になった場合、アメリカの獣医医療にかかる費用はアメリカの2-3倍以上になります。日本の獣医療はアメリカと比べると驚くほど安いです。 予防に徹すること、病気を早期発見すること、が最も重要だと思います。 まとめ コミュニティプラクティスはかかりつけ動物病院としては手堅い いざペットが病気になったときに専門医へのアクセスがいい 予防、健康診断の費用は一般病院とおおよそ同じくらい…