本記事の内容
- 子猫を拾った時にすぐに健康診断が必須な理由
- 子猫に必要な検査まとめ
- 子猫に必要な予防まとめ
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
ペットと一緒にアメリカで暮らしている方に向けに情報を発信していきます。
普段とは違う、Community Practice(大学病院の中の一般診療科)で働く機会があったので、
そこで学んだことをまとめていきます。
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子猫の健康診断には必ずいきましょう
理由は大きく3つ
- 必須の予防を済ませる必要がある
- 子猫は駆虫が必要
- ウィルス感染を確認する
初回の診察ですること
検査
- 身体検査
- FIV, FeLV(猫のウィルス), フィラリアチェック
- 便検査
駆虫
- 消化管内寄生虫の駆虫
- ノミダニの駆虫
必須ワクチン
- 狂犬病ワクチン(16週齢から)
- 猫混合ワクチン(8週齢から)
検査
- 身体検査
- ウィルス検査
- フィラリア検査
- 便検査
身体検査
身体検査では、先天性の異常や、心臓の雑音がないかなどのチェックをします。
この時点で病気が見つかることもあるので、獣医さんに確認してもらいましょう。
ウィルスチェック
FIV, FeLV スナップテストでは、猫エイズ、猫白血病ウィルス感染の確認ができます。
これらの病気は、なめたり、噛んだりすることで他の猫に感染してしまうので、
同居猫がいる場合は注意が必要です。FIVが陽性であっても必ずしも発症することはありませんが、
FeLVの濃厚感染が起こった猫の80%が、3年間以内に死亡します。
細かいことをいうとこのスナップテストで100%の診断はできませんが、
陽性がでたら感染している可能性はかなり高いです。
PCRという追加検査で確定診断できます。
6ヶ月未満の猫は母親からの抗体によってこのテストが陽性になる可能性があります。
もしも陽性になった場合は6ヶ月で再度テストを行いましょう。
2ヶ月間のインキュベーションタイム(潜伏期間)があるため、
保護してから2ヶ月後にもう一度検査することが推奨されています。
便検査
初回診察時に、消化管内寄生虫の駆虫を便検査結果にかかわらず行います。
しかし、この薬で網羅されない寄生虫をスクリーニングする必要があります。
たとえば、コクシジウム症は消化管内に寄生して下痢を引き起こしますが、
最初に投与される一般的な薬では駆虫されません。
実際、コクシジウム症で子犬が3頭中2頭病院で亡くなったのをみました。
幼若例で感染が重度になると致命的になることもあるので、
猫ちゃんもしっかり便検査で異常がないか確認しましょう。
駆虫
- 消化管内寄生虫の駆虫
- ノミダニの駆虫
消化管内寄生虫の駆虫
便中に寄生虫が見えなかったとしても、保護猫には消化管寄生虫の駆虫が必要です。
大抵の野良猫、保護猫の腸管には寄生虫がいます。
駆虫は飲み薬になります。適切な薬をドクターに処方してもらいましょう。
ノミダニの駆虫
ノミダニの駆虫薬も処方してもらいましょう。
外に行かない猫でも、ノミには感染する可能性があります。
ノミはいくらでも外から入ってこれるからです。
猫のノミ予防の必要性を説明した記事がこちらになります。
必須ワクチン
- 猫に必須の予防接種(Core vaccine)
- 狂犬病 (Rabies)
- 猫混合ワクチン(FVRCP)
- 猫白血病ワクチン(FeLV):幼若齢の猫は必須
コアワクチンと呼ばれる必須のワクチンは、かかると死亡することもある恐ろしい病気を予防するためのものです。若い猫は免疫力が低いので、ワクチンでサポートしてあげる必要があります。
狂犬病ワクチンは、日本と違い、猫でも法律で定められる必須のワクチンとなります。
必ず、遅滞なく接種するようにしましょう。
猫混合ワクチン(FVRCP)も必須のワクチンになります。
事例、でも説明しますが、このワクチンで網羅される、
猫汎白血球減少症(Panleukepenia)は、若くして発症するとほとんどの場合死亡します。
必ず遅滞なく接種しましょう。
猫白血病ワクチン(FeLV)は任意のワクチン(Non-core vaccine)と呼ばれることもありますが、任意なのは中高齢の猫に限りです。
なぜなら、このウィルスは幼若齢猫の感受性がものすごく高く、幼齢でかかると、
重症化して亡くなってしまうからです。
外に出さないから打たなくてもいいじゃん、という意見もあると思います。
子猫が100%外に行かない、他の猫と接触しない、ことはなかなか保証できないと思います。
私はアメリカで何度も、脱走してアブセス(膿瘍)を作って帰ってきたという猫を診察したことがあります。
感染したら死亡してしまう可能性がある恐ろしい病気です。
数千円で予防できるものなので若いうちは特に、毎年打つことをおすすめします。
- ワクチンプロトコール、病気については別の記事で説明していますので参考にしてください。
- また、狂犬病ワクチン接種の重要性を説明した記事もあります。アメリカでは猫でも必須です。
事例
猫汎白血球減少症(Panleukepenia)にかかって亡くなってしまった猫の話です。
犬でも、パルボウィルスは致死的になる恐ろしいウィルスですが、
残念ながら猫に感染すると予後はさらに悪いです。
私は8週齢(約300g)で保護された、元気消失した猫をみたことがあります。
ウィルス検査でパルボウィルス陽性。猫汎白血球減少症が診断されました。
初期安定化によって、自分でご飯を食べられる状態まで回復しましたが、自力で体温を保つことができず、
常にインキュベーターの中にいました。ひどい下痢で、一生懸命食べているのに体重は減っていきました。
オーナーさんは費用制限なし、できること全てしてくれとのことで、100%できることをしましたが、
1週間半のICUに入院(治療費の総額30万円くらい)した後、亡くなってしまいました。
この例では、オーナーさんは拾ってすぐに連れてきているのでワクチンどうこうの話ではありませんでした。
しかし、このように恐ろしい病気を20ドルくらいのワクチンで防ぐことができるので、
ワクチンはしっかり接種しましょう。
まとめ
- 子猫を拾った、保護した場合は必ず病院へいきましょう
- 身体検査、糞便検査、ウィルス検査をしましょう
- 駆虫(消化管内、ノミ、ダニ)はマスト
- 必須ワクチンは狂犬病、猫混合ワクチン、FeLVの3つ
中高齢猫のワクチン接種方法に関してはこちらを参照ください。
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