この記事の内容
- 体液は体の何%?
- 個体による違い
- 体内の水分布
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
Emergency and Critical Careの分野では、輸液治療の知識が非常に重要になります。ICUに入院する患者さんのほとんどは輸液治療を受けています。入院管理では、それぞれの患者さんに、どの輸液製剤をどのくらいの速度でどれくらいの期間投与する予定なのかという輸液プランが必要になります。
輸液についてというシリーズでは、輸液治療について生理学から勉強しなおせるように、イラストを使って、わかりやすい言葉で解説していこうと思っています。
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体液は体の何%?
体の何%が水分でしょう?
成犬の体の60%は水でできています。水は、細胞内、細胞外に分布しています。
個体による違い
総水分の計算をする際、全ての患者さんに大して体重の60%が通用するわけではありません。
例えば、人の肌から連想するとわかりやすいですが、赤ちゃんや子供の肌はモチモチで水分をたくさん含んでいますね。一方、歳をとることで、肌がカサカサになります。
つまり、若い時の方が、体重に対する水分量は大きく、歳をとると水分量が減少します。
幼犬は体重の70%が水分だと言われています。もちろん、これは大まかな概算です。
さらに、肥満の患者さんについて考えてみましょう。
肥満によって、体重が10kgから15kgに増えた犬を想像してみましょう。体重10kgの時の水分量は10kgx0.6=6kgが総水分量と言えます。しかし、5kgが脂肪によって増えたのであれば、15kgx0.6=9kgの総水分量とは言えないのです。なぜなら、脂肪に含まれる水分は脂肪の重さに対して60%ではないからです。
脂肪に含まれる水分量はその重さの10%と言われています。よって、元々の10kg中には6kgの水分が含まれていますが、肥満によって増えた5kg中には5kgx0.1=0.5kgの水分しか含まれないのです。
なので総水分量としては、6kg+0.5kg =6.5kgということになります。
静脈点滴の速度を決定するときに、単純に体重によって計算してしまうと、重さの中身が識別されないため、肥満患者さんに対しては過剰に点滴を投与してしまう可能性があります。これに対する解決策としては、点滴の維持量を理想体重から計算することです。
体内の水分布
次に考えることは、その総水分は体のどこに分布しているか。ということです。
水分が分布するのは3つの区画です。
- 細胞内
- 間質(細胞外)
- 血管内(細胞外)
水はこの区画を自由に移動できます。
自由に移動はできますが、どのくらいの量どの区画に止まるかは、法則があります。この法則に関してはこちらのページで解説していきます。
まとめ
この記事では、体内の水分量と、水分がどこに分布しているかについて大まかに解説しました。
- 成犬の理想体重に対して水分が占める重量は60%
- 幼若犬では水が占める重量は体重の70%
- 肥満犬に関しては、理想体重に対する60%+脂肪の重さの10%の合計が水分量
水がどこにどれだけ存在するか、移動するか、どこに留まるのか、は輸液治療を考える際、重要となる基礎知識になります。少しずつ、わかりやすいイラストを用いて輸液治療について掘り下げていきますので、この先も読んでもらえたら嬉しいです!
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