この記事の内容
- 下部尿路の神経支配
- 下腹神経
- 骨盤神経
- 陰部神経
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、膀胱の神経支配について解説します。交通事故、椎間板ヘルニアの術後などの脊髄疾患を持つ患者さんでは、入院中、排尿のケアをする必要があります。脊髄疾患の診断および、入院管理の治療方法の決定に役立つ知識になります。
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下部尿路の神経支配
膀胱の神経支配は、下腹神経(L1-L4)、骨盤神経(L7-S3)、陰部神経(L7-S3)の3つが重要になります。
これらの神経支配を理解することが重要になる理由は以下の点です。
- 神経学的病変部の位置決定に役立つ
- 病気の進行を推測できる
- 排尿管理の治療薬決定に役立つ
この記事では、下部尿路の神経支配に焦点を絞って解説しますが、次の記事で位置決定に関して解説していきます。
なんだややこしそうだな。と思われるかもしれません。私も苦手意識がありました。臨床に役立てられる様に、なるべく単純化して一つずつの神経について解説していきます。
下腹神経: hypogastric nerve
下腹神経は、L1-L4から分岐する交感神経です。
「交感神経=戦闘モード」ということを習った記憶があるでしょうか。戦闘モードの時は排尿している場合ではないので、排尿の抑制に働き、結果尿を貯留することになります。
下腹神経には、アルファアドレナリン作動性の神経線維と、ベータアドレナリン作動性の神経線維の2種類があります。排尿を抑制するには、膀胱の平滑筋が緩み、出口である尿道括約筋が収縮する必要があります。アルファは尿道を閉める働き、ベータは膀胱を緩める働きがあります。
骨盤神経: pelvic nerve
骨盤神経は大きく二つの機能を持つ副交感神経です。アセチルコリンによるM3(ムスカリン)受容体の刺激によって排尿筋収縮が生じます。自律神経なので随意的にコントロールすることはできません。
- 膀胱の膨満感を脳に伝える
- 排尿筋を収縮させ、排尿を開始させる
L7-S3から分岐します。
副交感神経を刺激するベタネコールなどが排尿のコントロールに用いられることがありますが、骨盤神経を刺激し排尿筋の収縮を促すというメカニズムです。
排尿をコントロールする薬に関しては、こちらの記事で解説しています。
陰部神経: pudendal nerve
陰部神経は、L7-S3から分岐する、外尿道括約筋の随意運動をコントロールします。
また、単シナプスを形成することで排尿時に尿道を広げ、排尿しやすくする反射を引き起こします。
外尿道括約筋は横紋筋(随意運動が可能な筋)なので、陰部神経によって、排尿中に自分の意志で排尿を止めることができます。
ここまでで、排尿に関する神経支配を解説してきました。これらを理解することは、神経学的位置決定や、排尿管理の際の治療法選択、病気の進行を理解する上で役に立ちます。次の記事では、臨床現場で役に立つ様な知識につなげていきますので、ご参照ください。
まとめ
- 下部尿路の神経支配は下腹神経、骨盤神経、陰部神経の3つ
- 下腹神経は交感神経
- 骨盤神経は副交感神経
- 陰部神経は随意運動と単シナプスに関与
おまけ:英語で学ぶのに最適なYouTubeを添付しておきます。多少人と犬猫の違いはありますが、単語のおさらいもかねて興味がある方は見てみてください。
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