はじめに
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2022年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデント1年目をしています。
研修医をすると、避けては通れないのが学生へのラウンドです。自分の知識があやふやだと、学生へ教えることもできないので、しっかりと準備をしていく様にしています。この記事では、学生へのトピックラウンドでどの様に教えるか、また何を準備していくかについてご紹介します。
- エマージェンシー科でのトピックラウンド
- マストなトピック
- 学生からリクエストされるトピック
- 輸血製剤の適応(どんな時にどんな輸血が必要か)
- 血液に含まれる成分を全て挙げる
- 例題
- 計算方法
- 学生の反応
- まとめ
エマージェンシー科でのトピックラウンド
Emergencyで必要な知識を教えることになります。テーマは学生のリクエストに答える形が多いのですが、必ずやるテーマは「ショック」「CPR」「AFAST, TFAST」「輸液」です。
これらに加え、「呼吸器のエマージェンシー」「輸血」「GDV」「尿道閉塞」などの来院した患者さんに関する内容をカバーします。
学生が、例えばアフィラキシーショックの症例を先日みたから、知識を確認したい!とリクエストした場合、リクエストに答えます。
たまに学生にDICについて、とリクエストされたりするのですが、より基本的なことがわかっていない可能性が高いので、あまりレベルの高すぎる内容は控える様にしています。
マストなトピック
「ショック」「CPR」「AFAST, TFAST」「輸液」に関しては、自分がここまでは理解した上で卒業して獣医師を始めてほしい、という内容を教えます。
私が学生に、Emergencyのローテーションを終わる前に絶対にマスターしておいて欲しいことは、ショックを見極めること、安定化です。
2週間Emergencyで働いたのにも関わらず、この患者さんがショック?と質問した時に答えられない学生を見ると自分がいい仕事できなかったな、と自分をくやしくなります。
なので2週間のローテーションのうちの速い段階で、ショックについてのラウンドを行い、エマージェンシーの患者さんが来るたびに、「この患者さんはショック?」と質問する様にしています。
何度もやっているうちにできる様になってくることが多いので、反復練習が重要です。
学生からリクエストされるトピック
毎回必ずやるトピックに関しては、自分の中である程度流れができているため、特に準備はいりませんが、まだやったことのないトピックに関しては、準備をして望みます。
ここからはどの様に準備して、どの様にトピックラウンドをリードするかをご紹介します。
以下の内容をiPadに書き出します。
- どんな流れにしたらスムーズか
- どんな質問をしたら学生の理解がどれほどのものかわかるか
- 抑えておきたいポイント
輸血製剤の適応(どんな時にどんな輸血が必要か)のトピックラウンドを最近行ったので例を示します。
輸血製剤の適応(どんな時にどんな輸血が必要か)
自分の中の構成としては
- 血液に含まれる成分を全て挙げる
- 様々な輸血製剤に含まれる成分を挙げる
- どの病気でどの成分が失われ、何を補う必要があるかを考える
- どの時点で輸血が必要かを教える(貧血ならなんでも輸血ではない)
- 輸血の投与について
- 例題
以下のノートは、以前、輸血についてのラウンドを頼まれた日の前日に作った①についての「チートシート」です。
血液に含まれる成分を全て挙げる
血液の中の成分と、それを補うためにはどんな血液製剤が使用できるかを書いたものです。
話していると自分でも混乱してくることがあるので、それを防ぐために必要な情報を書き出しておきます。こうすることで自分のあやふやだった知識をも確認することができます。
例題
実際にこんな症例がきた場合、この患者さんに輸血は必要か?何の輸血製剤を選択するか?というクイズです。その場でうまい問題と答えを考えるのは難しいので、予め作っていきました。勢いのある学生チームだったので、結構盛り上がりました。
計算方法
輸血をどれだけ入れるかという計算方法を教えます。私のレクチャーで数値を覚えてもらう、というよりは、この様な計算方法ということがある、と理解してもらうのが大事だと思いました。
最後に、輸血をどのくらい入れるかの式を入れ、実際に10 kgの患者さんに入れるとしたら?という例を出してみんなで計算しました。
学生の反応
学生の知識のレベルによって、反応が大きく異なるので、同じことをやってもポカンとされることもあれば、白熱することもあります。学生の反応を見つつ、レクチャーを軌道修正していく力が必要になっていくのだと感じました。
まとめ
この記事では、トピックラウンドとはどの様なものか、そしてリードをとる自分がどの様に準備をしているか具体的にご紹介しました。
この様な少人数のディスカッションの場は、学生に取ってもとてもいい勉強の機会になります。勉強意欲のある学生を相手にするのはとても楽しいので、私も準備に気合が入ります。
一度このようなものを作ってしまえば、次回学生からのリクエストで同じようなものがあったときに活用できるため、3年間かけて作り貯めることができたらいいなと思っています。