はじめに
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務し、2022年現在、アメリカの獣医大学で救急集中治療(ECC)の専門医を目指してレジデントをしています。
この記事では、インターンとはどんなポジションかについて説明します。アメリカで専門医を目指そうと考えている方には、必須の知識になります。アメリカ獣医大学には、どんな研修医ポジションがあって、それぞれどんなことをしているかをしっかり理解しましょう。
2種類のインターン
インターンには、ローテーティングインターンとスペシャリティインターンの2種類があります。
ローテーティングインターンとは、日本の研修医でいう、全科研修医の様なものです。1年間かけてすべての科をローテーションすることで、幅広い知識を習得できます。大学のプログラムによって、どの科へのローテーションが重点的かは異なりますが、大体どこの大学でもERは1年のローテーションの半分を占めることになります。
スペシャリティインターンとは、それぞれの科に専属する、専科研修医の様なものです。希望があれば他の科を数週間ローテーションすることはできますが、基本的には1年間を通して同じ科で働くことになります。
どんな人がインターンをするか
アメリカの獣医大学を卒業したばかりの先生がインターンをする場合、目的は二種類考えられます。
一つ目は、専門医になるためのトレーニングです。小動物臨床のレジデントになるには、インターンの経験があると有利だからです。競争率の高い科の専門医になりたい場合、何度もインターンをしてようやくレジデントのポジションを獲得した、という例も少なくありません。
もう一つの目的は、一般の獣医師として働くけれどもしっかり勉強したい、もしくは興味のある分野があるけれども専門医になるつもりはない、という先生です。インターンは辛い仕事ですが、その経験は確実に獣医師としてのキャリアにも影響します。
私の様に、外国人でインターンをする、もしくは既卒の先生は特に専門医を目指している場合が多いです。インターンでトレーニングを積み、ちゃんと働けること、人間性をファカルティから評価してもらうことで、良い推薦状がもらえ、次のステップに繋がるチャンスになります。
インターンの仕事内容
インターンの仕事は、基本的にはそれぞれの科で診察することです。主治医としてケースを取り、ファカルティと相談しながら診療にあたります。大学病院では学生と一緒にケースを診る事になりますが、学生への教育もインターンの仕事の一部です。
どの科にいるかで具体的な仕事は違いますが、例えば画像科にいるときは診断書の作成を実際にやってみたり、外科にいる時は手術の助手として入ったり、麻酔科にいるときは麻酔を担当したり、と様々です。
ERでは一般動物病院で働く様な形と似ていますが、いつでも相談できるファカルティがいる事、教えなければいけない学生がいる事、そして他科のコンサルテーションができる、という点で少し異なります。
ERのインターンの仕事については、こちらの記事で具体的にどんなことをしているかご紹介しています。
レジデントになるためにインターンをするべきか
レジデントになるにはインターンが必須か。専門医に興味がある方からちらほら受ける質問です。最初にはっきりさせておきたいことは、何の専門医を目指すかによって答えは異なる、という点です。
麻酔科、解剖病理に関しては、インターンをせずにレジデントになった先生を知っています。それ以外の科で、インターンをせずにマッチングでレジデントになった先生は見たことがありません。
私なりの回答としては、アメリカで獣医師として働いたことがなければするべき。だと思います。理由は大きく2つあります。一つは、アメリカで、英語で診察する訓練として。もう一つは、レジデントの採用にインターンを経験しているかが見られるからです。
アメリカでインターンとして働いたことがない外国人は残念ながら、以下の様にみなされてしまいます。
- 英語でコミュニケーションを取れるかわからない
- アメリカの獣医大学病院のシステムを理解しているかわからない
- 小動物臨床のスキル、知識がどれだけあるかもわからない
これらの不利な条件がある上に、ビザを発行しなくてはならない、ということで、どんなに日本の強いバックグラウンドがあってもいい候補者にはなりにくいのです。
まとめ
この記事では、インターンのざっくりとした仕事についてご紹介しました。そして、レジデントを目指す際にインターンをしたほうがいいの?という疑問をお持ちの方に、私なりの回答をしてみました。