本記事の内容
- アメリカで必ず予防しないといけない病気(ワクチンの種類含め)
- アメリカで任意ではあるが状況に合わせて予防が推奨される病気
- ペットが病気になった時
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。今回の記事では、アメリカで暮らす猫ちゃんに必要な予防(ワクチン)についてご紹介します。子猫のワクチン及び駆虫に関してはこちらのページでご紹介しています。
アメリカで必ず予防しないといけない病気
- 狂犬病
- 猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウィルス)、カリシウィルス、ネコ汎白血球減少症(パルボウィルス)
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これらはウィルス性の病気で、アメリカに存在し、かつ発症してしまうと致命的です。日本では犬のみが法律でワクチン接種が必須になりますが、この病気は全ての哺乳類にかかります。
このように、必須で打つべきワクチンのことをコアワクチン(Core vaccine)といいます。
狂犬病
- 予防しないと感染リスクが高く、命に関わる
- ペットから人間に感染する可能性もある
- アメリカでは必須のワクチン
狂犬病は人間にも感染し、発症したら100%死亡する非常に恐ろしい病気です。日本は狂犬病清浄国なので、基本的に狂犬病ウィルスは存在しませんが、アメリカは清浄化されていません。よって、日本以上にワクチン接種に対して厳しく見られます。日本では狂犬病ワクチンが義務付けられているのは犬だけですが、アメリカでは猫も義務付けられているので必ず予防接種をしましょう。
ワクチンを打っていないと飼い主さんが危険なだけでなく、猫が他の猫を噛んだ、噛まれた、や他の人を噛んだ、といった時に噛んだ側も噛まれた側も大変なことになるため、検疫や費用が必要になるため、必ず打ちましょう。
推奨される狂犬病予防プロトコール
- 初回:12-13週齢
- 2回目(ブースター):15-16週齢(初回から3週間開けて)
- 3回目:1歳齢(2回目から1年後までに)
- 4回目:4歳齢(3回目から3年後までに)
- ※3回目のワクチンが遅れた場合、4回目は1年後に打たないといけない
- ※ペットの体調、免疫状態によって、ドクターが何年分の有効期限か決定する
日本との大きな違いは、4回目以降は、ドクターの判断でワクチンの有効期限が1-3年の範囲で決定されます。健康なペットで、遅延なくワクチンプロトコールに沿っている場合は基本的に4回目からは3年おきの接種になります。
必ず何年分の期限で、次回接種がいつになるかは、Discharge summaryに記されているはずなので、遅滞なく接種するようにしましょう。
猫ウイルス性鼻気管炎、カリシウィルス、ネコ汎白血球減少症
- 予防しないことでペットが死に至る危険がある
- 効果的な治療法がない
- 強い感染力
- 免疫力が弱ったときに感染しやすい
どんな病気?
- 猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウィルス):呼吸器、眼の症状。ほとんどの猫から検出されるウィルスだが、ストレスなどで発症して症状を示す
- カリシウィルス:呼吸器、口腔内、眼の症状。舌、口腔の上側(口蓋)、鼻の穴から肺までの気道の粘膜、結膜(眼)で増殖。発熱や涙、くしゃみ、進行すると全身的な症状に至る
- ネコ汎白血球減少症(パルボウィルス):消化器、骨髄で増殖。下痢や嘔吐、免疫抑制などにより、全身的な症状に至る
猫ウイルス性鼻気管炎、カリシウィルス、ネコ汎白血球減少症のワクチン
- FVRCP
推奨されているプロトコール
- 初回:8週齢
- 2回目(ブースター):約11週齢(初回から3週間開けて)
- 3回目(ブースター):約14週齢(2回目から3週間開けて)
- 4回目:1歳齢(最後のブースターから1年後までに)
- 5回目:4歳齢(4回目から3年後までに)
- ※4回目のワクチンが遅れた場合、5回目は1年後に打たないといけない
- ※ペットの体調、免疫状態によって、ドクターが何年分の有効期限か決定する
狂犬病と同様、ワクチンが何年有効か(1年か3年)かを決めるのはドクターです。ワクチンの遅れがあったり、免疫状態が安定してないと判断された場合は有効期限は短くなります。必ず何年分有効で、次回の接種がいつかを確認しましょう。
任意ではあるが状況に応じて予防が推奨される病気 (Non core vaccine)
- FIV:猫エイズウィルス
- FeLV:猫白血病ウィルス
どんな病気?
- どちらも感染していても必ずしも発症して症状が出るとは限らない
- 他の猫との喧嘩や舐めると言った行動で感染る
- 同居動物がいない、完全にインドアの猫であれば必ずしも必要はない
- 新しい同居猫、他の猫と接触する可能性がある場合はワクチン接種が推奨される
FIV
- 人のHIVウィルスと同じ種類のウィルス
- 免疫不全を起こす
- 現在は、アメリカではFIVのワクチンは販売停止になっているそうです。(2021年6月現在)
FeLV
- 猫白血病ウィルスはリンパ腫などを発症させる可能性がある病原体
ペットが病気になった時
- かかりつけに電話
- 最寄りのエマージェンシーに電話
状況に応じて、どうするべきかアドバイスがもらえます。(かかりつけに行くべきか、急いでエマージェンシーに行くべきか、など)
かかりつけが開いていない場合は最寄りのエマージェンシーに連絡して症状を伝えましょう。いますぐ連れて行くべきか、かかりつけがあくまで様子を見るべきか、などのアドバイスがもらえます。
エマージェンシーは基本的にwalk-in(予約なしで直接行くこと)が可能ですが、場合によっては24時間開いていない病院や、コロナの影響で一時的に営業縮小している場合があるので、必ず先に電話で確認することをお勧めします。
まとめ
- 猫のワクチンには必須(狂犬病、混合ワクチン)と任意(FIV, FeLV)ワクチンがある
- 感染リスクに応じたワクチンプランを獣医さんと相談して決める
- 急にペットの体調が悪くなった場合、かかりつけに電話、もしくはエマージェンシーに連絡を取りましょう
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