はじめに
私は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2021年現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、アメリカの獣医大学でバイブルの様に使われている教科書をご紹介します。本の存在を知っているだけで、本当に興味が出たときに簡単に電子書籍を購入できる時代です。ぜひ検索ツールとしてご活用ください。
バイブルのような教科書たち
私のおすすめの教科書たちをご紹介していきます。教科書と論文、雑誌の使い分けに関してはこちらの記事もご覧ください。
https://veccblog.com/%e3%80%90%e8%8b%b1%e8%aa%9e%e3%81%a7%e7%8d%a3%e5%8c%bb%e5%ad%a6%e3%82%92%e5%ad%a6%e3%81%b6%e3%80%91%e6%b5%b7%e5%a4%96%e3%81%ae%e7%8d%a3%e5%8c%bb%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e3%82%92%e7%9b%ae%e6%8c%87%e3%81%97/?preview_id=1686&preview_nonce=2fbb4af9ff&preview=true&_thumbnail_id=6326科目ごとにどんな本があるかを知っておくと役に立つと思うので目を通してみてください。
エマージェンシー
Small Animal Critical Care Medicine 2nd Edition
この本は、エマージェンシーとICUケアに関する重要な情報が、病態から臨床的なことまでわかりやすく載っている本です。救急集中治療専門医試験もこの本から出題されることが多いのです。この第二版は2014年に発行されていますが、2022年の今でも何かを調べる時はまずこの本に手が出ます。
ECCに興味がある方はこの本でどこにどんなことが書いてあるかを把握しておくと、実臨床で非常に役立つと思います。
Textbook of Small Animal Emergency Medicine 1st Edition
2018年に発行されたECCの本です。この本もSmall Animal Critical Care Medicineと同様によく手に取られる本です。内容はほとんど同じですが、Small Animal Critical Care Medicineに載ってない内容がこっちに載っていることがあります。
そして、Small Animal Critical Care Medicineよりも新しいことが特徴です。
輸液/電解質異常
Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Disorders in Small Animal Practice (Fluid Therapy In Small Animal Practice) 4th Edition
エマージェンシーやICUの輸液管理、もしくは電解質異常の疑問はこの本で解決できることが多いです。内容は難易度が高い部分もありますが、生理学が詳しく載っているので重宝しています。また、臨床に活用できる情報も十分載っています。
2011年に発行された第4版が2022年現在での最新版なので、やや古いですが、基礎を学ぶにはとても良い本です。
内科
Small Animal Internal Medicine 6th Edition
2022年現在では、2019年に出た第6版が最も新しいものです。この本は私が大学生の頃に、大学の先生から読むことをお勧めされていた本になります。病気の辞書の様に使えます。
Canine and Feline Endocrinology 4th
この本は2015年に出版された内分泌疾患に特化した本です。Small Animal Internal Medicineにも、内分泌疾患に関する情報が載っていますが、この本は内分泌だけを扱っているので、より詳しい内容になります。
内分泌疾患は特に、様々な治療の選択肢がある場合が多いです。そのときに、何がスタンダードなのか、とといったことをエビデンスベースに書かれています。糖尿病や、ケトアシの管理のときによく見直す本です。
神経学
BSAVA Manual of Canine and Feline Neurology 4th Edition
2013年の第4版のBSAVAの本になります。神経学的検査の方法から写真を用いてわかりやすく説明されています。
臨床病理学
Schalm’s Veterinary Hematology 6th Edition
血液塗抹の写真がたくさん載っている臨床病理学の教科書です。2022年に出版された第7版です。
外科
Small Animal Surgery 5th Edition
外科の教科書といえば同じみかもしれません。大学のときには、なんて分厚い本なんだと驚いた記憶があります。イラストが見やすく、解剖の勉強にもなります。
麻酔
Veterinary Anesthesia and Analgesia: The Fifth Edition of Lumb and Jones
麻酔の教科書としてはこの教科書が有名です。イラストや写真が豊富なので、回路や波形について学ぶ際に便利です。2015年に出版された第5版が最新です。
毒性学
Small Animal Toxicology 3rd Edition
2012年の毒性学の教科書です。毒性学の辞書の様な本ですが、病態生理から、薬物動態、臨床症状、治療法、予後がそれぞれの毒物について詳しく解説されています。白黒の文章だけの本なので、難易度はやや高めですが、詳しい情報がたくさん載っています。2012年と、やや古めです。
Blackwell’s Five-Minute Veterinary Consult Clinical Companion: Small Animal Toxicology 2nd Edition
2016年の第2版です。この本は、同じく毒性の本なのですが、Five-minute consultというくらい、重要な情報が濃縮されて5分で理解できる様に作られています。
毒性の患者さんは緊急対応が必要になることが多いため、この様にすぐに重要な情報が引き出しやすい本は本当にありがたいです。
小児科
Small Animal Pediatrics 1st Edition
子犬、子猫の患者さんがきたときに、成犬と同様に治療できない場合もあります。例えば、輸液の維持量も異なりますし、安全に使える抗生剤も異なります。
この本は子犬子猫の特徴がまとめられているので便利です。年齢による血液検査結果の正常値も載っています。
感染症
Infectious Diseases of the Dog and Cat 4th Edition
感染症の教科書のバイブルはこちらになります。内科の教科書にも感染症の情報はありますが、より詳細な情報を得ることができます。2011年に出版された本です。
解剖学
Miller’s Anatomy of the Dog
カルテを書いていて、言葉が出てこない時はこの本を頼ります。英語でなんて言うんだっけ?と言うときにはこの本を活用します。全てイラストですが、わかりやすいのでおすすめです。アメリカではVeterinary anatomyよりも、こちらの方が主流なイメージです。
生理学
Guyton & Hall Physiology Review E-Book (Guyton Physiology) 4th Edition, Kindle Edition
日本にいるときに日本語の教科書を熟読しました。イラストもわかりやすく、私は大好きな本です。人の教科書ですが、生理学の本の王様です。
2015年の第13版が最新です。
West’s Respiratory Physiology: The Essentials Tenth Edition
呼吸生理学の本です。薄い本ですが、麻酔科やECCのレジデントが熟読しなくてはならない本です。West先生の授業がYouTubeにアップされているので合わせてみるととても勉強しやすいです。すごくいい本なので、日本語翻訳版もたくさん出ています。
2015年の第10版が最新です。
まとめ
この記事では、アメリカ獣医大学でお勧めされる専門書についてご紹介しました。獣医学を英語で学ぶと、より多くの学習ツールが使える様になります。はじめは英語でとっつきにくいですが、読んでるうちに単語もわかる様になり、次第に読むのが速くなると思うので、ぜひ挑戦してみてください。