この記事の内容
この記事では、キシリトール中毒について簡単にまとめていきます。
キシリトールは、ガムに含まれることが有名ですが、シュガーフリーの人工甘味料などにも含まれています。犬が誤食することで、低血糖や肝障害を引き起こすことがあるため、慎重な対応が必要です。
また、原因不明の肝数値上昇、肝不全で来院した患者さんの鑑別診断リストを立てる際に、問診でキシリトール中毒の可能性がないかを確認することが重要です。
- 中毒量
- 臨床症状
- 診断
- モニター
- 治療
- 予後
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キシリトール中毒
中毒量
- キシリトール >50mg/kg: 血糖値のモニター推奨
- キシリトール >100mg/kg: 低血糖
- キシリトール >500mg/kg: 肝障害
誤食から30分以内に腸から吸収されると言われているため、催吐処置が効果的な時間はあまり長くありません。50mg/kg以上の誤食が疑われた場合は催吐を考慮します。
100mg/kg以下でも低血糖の報告があるため、キシリトール50 mg/kg以上の誤食の場合は入院下で血糖値のモニターが推奨されており、また、肝臓に基礎疾患がある場合は中毒反応を示す許容量は減少するため、注意が必要です。
臨床症状
- 30分以内: 嘔吐
- 10-60分: 低血糖症状
- 9 –12時間: 肝障害 *(72時間後から障害が出ることもある)
- 肝臓壊死の症状:沈鬱、嘔吐、黄疸、メレナ、下痢、点状出血
診断
- 血糖値の確認
- 血液検査(CBC,生化学)
- 凝固系(PT, APTT):もしも出血傾向や肝臓数値の上昇がみられたら
- 腹部超音波検査:特に、肝障害が疑われる場合
モニター
- 血糖値1-2時間おき(最初の6-8時間)
- 生化学0, 12, 24, 48 時間で関数値の上昇、電解質をモニター
誤食した量を考慮して、12-24時間は入院下でのモニターが推奨されています。
肝臓障害が一度始まると、不可逆的なダメージになる可能性があります。そのため、早期の段階で肝臓数値の上昇を検出し、肝臓保護やサポーティブケアを開始することが治療成功の鍵となります。
治療
チャコール(吸着炭)は、推奨されていません。その理由は、キシリトールが腸から吸収される速度が速いため、あまり効果が期待できないからです。
催吐処置を行なった後、肝障害が懸念される量を誤食した場合は肝臓保護を始めます。しかしながら、キシリトール誤食に対する肝臓保護の効果に関しては有用なエビデンスはありません。
- 必要に応じてデキストロースを投与
- NAC (N-アセチルシステイン):静脈注射(IV)なので嘔吐に伴って、投薬が困難な場合に効果的
- 経口投与が可能になった場合はデナマリンやミルクチッスルなどに切り替える
- 凝固系の異常が見られた場合は、ビタミンKを開始
予後
低血糖がコントロールできた場合に、肝臓数値の上昇を示した場合でも、一般的に予後良好と考えられます。しかしながら、重度の低血糖、もしくは持続的な肝数値の上昇を示した場合は、予後は悪くなり、さらに、高リン血症が現れた場合には、予後不良と考えられています。
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