はじめに
私は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2021年現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
普段の診察における適応の確認、薬量、副作用がアプリで簡単に調べられてら便利ですよね。ほとんどのアメリカ獣医学生のスマートフォンには、Plumb’s(獣医の薬の本)というアプリが携帯に入っていて、ほしいときにほしい情報が手に入るのです。Plumb’sは有料アプリになりますが、この他にも、米国専門医によって作られている無料サイトなどもたくさんあります。この記事ではそれらの便利なサイトを紹介していきます。
おすすめ無料サイト7選
TARGET: The Antimicrobial Reference Guide to Effective Treatment(抗生剤の選択)
The Antimicrobial Reference Guide to Effective Treatmentという、抗生剤の使用ガイドの本が元のアプリです。著者は、Dr. David Aucoinという内科の専門医で、臨床薬学の博士研究員をされている方です。
内容は、最もよく目にする12種類の細菌に対する24個の抗生剤の評価です。抗生剤を選択する時の助けになります。適切な抗生剤の選択、最小の副作用で効果が最大になる薬用量が載っています。
- 抗生剤選択の際に便利な本
- 症状に合わせた抗生剤の選択が可能
- 最小の副作用、最大の効果が発揮される薬用量も載っている
- 培養結果が出た時の参考にもなる
数年前はホームページで管理されていましたが、今はアプリのみになります。
アプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.naccvp.TARGET&hl=en_US&gl=US&pli=1
抗生剤の選択に役立つアプリになります。感染部位によって、抗生剤の到達が異なります。特異の感染部位からどの抗生剤がより効果的か、色分けされたテーブルによって示されます。
例えば、犬の深部の膿皮症にはどんな抗生剤が効果的かを調べると、以下の様な表が出てきます。原因菌によっても抗生剤の効果が異なるため、縦列は原因菌がリストされています。
色とアルファベットでどの抗生剤を選択するべきかが一目瞭然です。E= Excellent, G= Good, F= Fair, P= Poor
本:TARGET: The Antimicrobial Reference Guide to Effective Treatment, 4th Ed.
CACP:Companion Animal Parasite Council(寄生虫)
寄生虫に関する治療ガイドラインが全て無料で閲覧できます。アルファベットから、寄生虫が検索できます。
特徴は以下になります。
- アメリカで遭遇する寄生虫がほぼ網羅されている
- 寄生虫学の専門医が集まって作られたガイドライン
- アルファベットで寄生虫を検索可能
それぞれの寄生虫において、以下の情報がまとめられています。教科書を開く必要がないのと、参考文献が載っているので、情報元を調べられる点で非常に優れています。
- 種
- ライフサイクル
- ステージ
- 傾向
- 媒体/伝播
- プリパテントピリオド
- 感染部位と病態
- 診断
- 治療
- 予防
- 公衆衛生
- 参考文献
VSSO:Veterinary Society of Surgical Oncology(腫瘍)
VSSO(Veterinary Society of Surgical Oncology)とは、腫瘍外科の専門医が集まって作られたサイトです。先ほどの寄生虫のCAPC同様、腫瘍の種類ごとに臨床症状、診断方法、治療法、内科治療、外科治療、予後の情報が詳しく記載されています。
腫瘍の部位や、腫瘍のタイプで検索をかけることができます。飼い主さんへのインフォームの時に大変役に立ちます。
特にエマージェンシーで働いていると、腫瘍が診断されたときに、飼い主さんが腫瘍科への転科を希望するかどうかを確認する必要があります。そのときに、予後やどの様な治療法が推奨されるかを説明する必要があります。
そのときに生存期間などをパッと調べることができるのでとても便利なサイトです。
AAHA :American Animal Hospital Association(一般)
AAHA (American Animal Hospital Association)のサイトでは、予防、麻酔、腫瘍、歯科、、、などの幅広いガイドラインを見ることができます。
ガイドラインごとに異なりますが、専門医たちがエビデンスに基づいて作られているのでかなり信憑性は高いです。
E CLIN PATH(臨床病理)
臨床病理のサイトで、コーネル大学から出ています。血液学(血液塗抹、生化学、凝固系)、尿検査、細胞診、エキゾチックなどの臨床病理が載っています。細胞診や血液塗末の写真が多く掲載されています。
また、血液検査結果の解釈の助けになります。
ABCD cats:Advisory Board Cat Diseases(猫の病気)
ABCD cats (Advisory Board Cat Diseases)とは、ヨーロッパの、猫の感染症に対するプロトコールを確立するために2005年に立ち上げられた団体です。
猫のウィルス感染症のガイドラインや、診断ツールやアルゴリズムなどのPDFファイルをダウンロードすることができます。
VET girl
VET girlでは、ポッドキャストやブログ、そしてYouTubeで、最新の論文や手技の紹介をしたりしています。
大体1本15分くらいなので、私は車の中で聞き流していることが多いです。専門用語を聞きなれるための英語の勉強になると思います。有料コンテンツもあるため会員にならないとみれないものもあります。
まとめ
英語で獣医学を学べると、情報源も広がります。最新の知見や、エビデンスがしっかりしたガイドラインなども無料で手に入るようになることは驚きですね。アメリカと日本では違うこともたくさんあるので、100%鵜呑みにはせずに情報源の一つとして活用してくださいね。