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イラストで学ぶ生理学と病気

犬猫の胸水②胸水の性状検査/鑑別疾患

はじめに

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。

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胸水の性状検査

胸水の性状は漏出液、変性漏出液、滲出液の3つに分類することができます。

この分類には、胸水のタンパク質濃度及び、細胞数が必要になります。

胸水の性状による分類
胸水の性状による分類の表
Small Animal Emergency and Critical Careより

この分類をしっかりと理解する事で、胸水の原因となる疾患の診断への大きな手がかりになります。

胸水を漏出性、滲出性に分類することで、以下のように鑑別診断を絞る事ができるのです。

胸水の性状による分類から考えられる鑑別診断リスト

それでは、これらの胸水が出るメカニズムについて考えてみましょう。

漏出性胸水

低アルブミン血症による膠質浸透圧の減少は漏出性胸水の主な原因です。以下のような機序で漏出性胸水が貯留します。

  1. 血管内の膠質浸透圧の減少
  2. 血管内外の浸透圧格差が上昇
  3. 自由水がこの格差を埋めるべく血管外に漏出

アルブミンが1.5以下で漏出性胸水や腹水が見られた場合、その原因は低アルブミン血症の可能性が高いです。

そして、低アルブミン血症の有無にかかわらず、リンパ管の閉塞によって生じる胸水も漏出性胸水の性質をもちます。

漏出性胸水の機序

変性漏出性胸水

変性性漏出液とは、漏出液と比較した時にタンパク質の濃度が異なることが特徴です。この違いは、胸水が貯留する機序の違いによって生じます。

漏出液は血管内の膠質浸透圧の低下によって生じましたが、変性性漏出液は①血管内の静水圧上昇、もしくは②血管透過性の亢進によって血管内の血漿成分が漏れ出ることになります。血管内皮の透過性は変化しないため、細胞の漏出は多くありません。

①静水圧(静止している液体の中の任意の面に作用する圧力)が上昇する原因は、循環系のどこかに圧力がかかった状態(血液がうっ滞した状態)です。例えば、右心不全による、後大静脈の静水圧が上昇が挙げられます。

②血管透過性亢進は、血管からの漏出や、炎症によって生じます。血管炎、肺捻転、横隔膜ヘルニアが例です。

その他* 乳び胸や腫瘍性胸水も変性漏出性胸水に分類されることがあります。

変性漏出性胸水の機序

滲出性胸水

滲出液の原因は、毛細血管内皮の透過性亢進です。これによって、細胞成分が滲出します。

滲出性胸水は、さらに感染性 vs 非感染性にカテゴリー分類することができます。

感染性の滲出液は、変性性好中球が細胞成分を占めます。

細菌感染の原因

  1. 咬傷
  2. 異物の鼻からの吸引
  3. 外傷
  4. 臓器の感染の播種(肺膿瘍、肺炎など)

非感染性の滲出液の細胞成分の特徴

  1. 非変性好中球(炎症)
  2. 小型リンパ球(乳び胸)
  3. 腫瘍細胞
滲出性胸水の機序

まとめ

胸水が生じるメカニズムを理解すると、胸水の性状の分類についての理解が深まります。そして、それが原因疾患の大きな手がかりになる事がご理解頂けたでしょうか。

エマージェンシーの現場では、少ない手がかりから、以下に多くの情報を得るかどうかがキーになります。身体検査、FASTスキャン、胸水の性状検査といった、非常に安価な検査のみでも大体の病気の見当がつくのです。飼い主さんの経済的な状況を考慮しなければいけない時などにも非常に有用な知識になるので、この記事が臨床現場で働く獣医さんのお役に立てれば嬉しいです。

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