この記事の内容
- イオン化カルシウムとは
- イオン化カルシウムを測定する意義とは
- 総カルシウム値からイオン化カルシウム値に補正可能か
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、総カルシウム値に異常があったときに、イオン化カルシウムを測定する必要がある理由を簡単にご説明します。
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イオン化カルシウムとは
カルシウムは、大きく3つの形態で血中に存在します。
イオン化カルシウムとは、生理的に活性を有する、3種類の中で最も重要な要素です。
- イオン化カルシウム: 55%
- タンパク質と結合カルシウム:35%
- カルシウム複合体:10%
ドライケム等の血液生化学で測定しているのは、この3つの合計の濃度です。そして、血液ガス分析などの機械で測定できるのがイオン化カルシウム濃度です。
イオン化カルシウムを測定する意義とは
- イオン化カルシウムとは生理的に活性を有する形態
- 骨格筋の収縮、心筋および平滑筋の興奮-収縮連関
- アドレナリン、グルカゴン、バソプレシン、セクレチン、コレシストキニンなどのホルモンに対する細胞応答を媒介
- イオン化カルシウムの濃度が必ずしも血清総カルシウム濃度と相関するとは限らない
イオン化カルシウムと違い、他の分子と結合したカルシウムの複合体は生理活性を持ちません。これらのカルシウム複合体の濃度はアルブミンの濃度や、リンや乳酸、シトレートなどによって変化します。よって、イオン化カルシウムが同じでも、カルシウムと結合する分子の濃度によって総カルシウム濃度が変化してしまします。
よって、総カルシウムレベルよりもイオン化カルシウムの血中濃度が最も重要になります。
総カルシウム値からイオン化カルシウム値に補正可能か
人間の医療では、総カルシウム値からイオン化カルシウム値を予測的するための補正式があります。もちろん、重要なファクターになるのはアルブミンなので、アルブミンが補正式に組み込まれます。
この補正式は人と同様に犬猫にも使えるのでしょうか?
犬、猫で補正式を用いて総カルシウム濃度からイオン化カルシウム濃度を予測した研究があります。結果は、それぞれ17%、29%でしかうまく予測できなかったというものでした。
人医療と違い、犬猫ではイオン化カルシウム濃度を知るには、現段階では血液ガス分析が必要のようです。血液ガス分析の機械をお持ちの病院さんもあれば、外注で検査を以来する病院さんもあると思います。
総カルシウム濃度が異常値の場合は、イオン化カルシウム濃度を測定して実際に低カルシウム血症/高カルシウム血症の診断に進むようにしましょう。
まとめ
- カルシウムは血中で3つの形態で存在
- 生理活性があるのはイオン化カルシウムのみ
- 生化学で測定できるのは総カルシウム濃度
- 犬猫では総カルシウム濃度からイオン化カルシウムを予測するための補正式は使えない
- 総カルシウム濃度が異常であればイオン化カルシウムを測定する
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