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【アメリカでペットと暮らす方へ】猫の尿道閉塞の安定化・診断・治療費

猫の尿道閉塞

この記事の内容

  • 尿道閉塞の安定化、安定化にかかる費用
  • 尿道閉塞の原因を診断するための検査、費用
  • 入院期間、入院費用
  • 手術が必要な場合の大まかな見積もり
  • 支払いが難しい場合の対処法
  • まとめ

この記事では尿道閉塞にかかる大体のコストをまとめていきます。アメリカの大学病院(二次病院と言われるような専門医がいる病院)の値段を参考までにご紹介します。病院によっても差があります。注意していただきたいことは、アメリカの大学病院は、街の動物病院よりも費用が高いということです。なぜなら、それぞれの科に専門医がいて、その道のプロから治療を受けられるためです。

具体的な費用は獣医さんが患者さんを実際に見てみるまでわかりませんが、大学病院で、重度の尿道閉塞の猫ちゃんを退院させるまでのコストは$1500-2500ほどです。手術が必要な場合、トータル$3500-5000ほどかかります。

この記事では、推奨される検査と治療、それぞれにかかる大体のコストをご紹介していきます。

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尿道閉塞の安定化にかかる費用

初期安定化①

大学病院のエマージェンシーで、緊急症例がきた場合、ゆっくりと問診している時間がない場合もあります。その場合、獣医師や学生が、問診を始める前にstabilization(安定化)/CPR(心配蘇生)の許可を求めます。安定化の費用約$300で、含まれている内容は以下になります。

  • エマージェンシーサービス(emergency service admission fee)
  • 静脈留置のアクセス確保(IV catheter)
  • 身体検査(Physical examination)
  • 簡易超音波検査(感度の低い超音波で、胸腔、腹腔内の重大な異常を調べる※)
  • 簡易血液検査(貧血、低血糖、低循環を調べるための簡単な検査)
  • 点滴(IV fluid)
  • 鎮痛剤(pain medication)
  • 鎮静剤(sedation)
  • 酸素供給(Oxygen supplementation)

※専門医の公式の超音波検査とは異なります。あくまで”簡易”超音波なので、得られる情報は限られます。

ここまではstabilizationの許可によって、飼い主さんから許可をいちいち確認せずに行える範囲になります。点滴などで状態が改善したら、状況に応じた診断、治療、プランの相談に移ります。

初期安定化②

尿道閉塞が重度の場合、以下の治療による安定化が必要になります。状況がそれほど深刻でない場合は、ここはスキップされるかもしれません。

  • 不整脈の治療
  • K (カリウム=potassium)を下げる治療
  • 膀胱穿刺
不整脈、K(カリウム)のコントロール

尿道閉塞は、原因が何であれ尿道の閉塞を解くことが治療のゴールとなります。しかし病態が進行しすぎていると、不整脈で亡くなってしまう可能性があります。なので、まずは処置を安全に行えるように安定化をする必要があります。

不整脈の原因となる物質はバナナなどに多く含まれる、K(カリウム=pottasium)という電解質になります。カリウムは、血液中に多すぎても少なすぎても致命的になる物質です。本来は尿として排泄されなければならないところ、尿道が閉塞してしまうことで、体内に蓄積してしまいます。

カリウムが高くなりすぎると、不整脈が出ます。細かくいうと、徐脈(心拍数が遅くなる)になり、血圧が低下して循環が保たれなくなります。よって、不整脈とカリウムをコントロールする内科治療が一番に必要になります。

膀胱穿刺

パンパンな膀胱はお腹の中でいつ破裂してしまうかわかりません。不整脈の治療と同時に、とにかく膀胱を萎ませてあげる処置を行います。

膀胱穿刺に関するイラスト

膀胱穿刺とは、お腹の皮膚から膀胱に針を進め、貯留した尿をいったん抜き取る救命処置になります。原因である尿道閉塞が解除されない限り、また尿が溜まってしまうので、膀胱穿刺は次のステップまでの時間稼ぎとして利用されます。

尿道カテーテルの留置

尿路の確保、という意味での次のステップは、尿道カテーテルの設置になります。尿道カテーテルとは、その名の通り、尿道に管を通し、膀胱から外界を直接人工的な管です。このカテーテルをバッグに繋いでおくことで、持続的に膀胱を空にすることができます。

尿道カテーテルに関する

尿道に石やプラグが詰まっている場合、カテーテルから生理食塩水を注入し、水圧をかけて閉塞物をフラッシュしながら膀胱まで進めていきます。バルーンカテーテルと言って、先端が膨らむタイプのカテーテルが主流になっています。カテーテルの先端が膀胱まで挿入されてからバルーンを膨らませることで、カテーテルが抜け落ちてしまうリスクを防ぎます。

この尿道カテーテルを留置することで、大体3-4日間ほどかけて、炎症で腫れ上がってしまった尿道を休める働きがあります。

ここまできたら再び尿毒症になる心配はありません。尿路が確保されたら、尿道閉塞の原因がなんだったかの診断に移ります。そして、原因に応じた治療法を選択していきます。

ここまでにかかるおおよその費用
  • 初期安定化①: $300
  • 初期安定化②: 状況による
  • 尿道カテーテルの留置: 状況による
  • 血液検査(生化学、血球計算): $150

この尿道カテーテルの設置には、鎮静(猫ちゃんに眠ってもらう)の処置が必要です。尿カテーテルがスムーズに入らない場合は、全身麻酔が必要になることもあります。どれだけ閉塞解除に時間やデバイスが必要かによって、費用は異なります。

状態の悪い場合は特に、血液検査が推奨されます。理由は、尿道の閉塞によって、腎臓の数値が上昇し(急性腎不全)ている場合、ミネラルバランスが大きく崩れている場合に、状況に応じた点滴治療が必要になるからです。そして、もし手術の適応の場合、全身麻酔のリスク評価にもなります。

ここまでで(初期安定化①を含め)$700-900くらいといったところでしょうか。

尿道閉塞の原因を診断するための検査、費用

尿道閉塞の原因には、尿道閉塞、尿道栓子、膀胱/尿道腫瘍などがあります。

尿道結石、ストルバイト、シュウ酸カルシウムに関するイラスト
尿道詮子(プラグ)に関するイラスト
膀胱腫瘍、尿道腫瘍に関するイラスト

これらの診断には、以下の検査が必要になります。

  • 腹部レントゲン検査: $100
  • 腹部超音波検査(腫瘍が疑われた場合に必要): $200
  • 尿検査: $30
  • 結石分析(結石が出てきた場合): $100

腹部レントゲン検査では、ミネラルである膀胱結石の検出が可能です。まれですが、レントゲンに写らない石もあります。

腹部レントゲンで結石が見つからない場合、簡易超音波検査で膀胱に異常が見られた場合は腹部超音波検査が必要になります。結石や栓子が尿道閉塞の原因である時と比べ、腫瘍の場合診断プラン、治療、予後が大きく異なります。今回は原因が結石や栓子であると想定して話を進めていきます。

尿検査では、尿のpH(酸性、アルカリ性)、細菌感染の有無、結晶の検出が可能です。尿検査結果に応じた治療プランを立てる必要があります。

結石が陰茎からぼろっと落ちることがあります。その場合、結石分析といって、結石の成分を調べることで退院後の内科治療のプランニングに役立ちます。

入院期間、入院費用

  • 入院: 1日約$200
  • 点滴、治療: 約$100
  • 血液検査(必要に応じて)

重症度にもよりますが、重度の尿道閉塞が起こった猫ちゃんは、解除後入院管理が必要になります。

尿道閉塞で臨床症状が出るほど進行した場合、「閉塞解除後利尿」と言った現象が起こります。これは、尿道や尿管が閉塞していた時間が長いほど、閉塞が解除された後に利尿がかかり、すごい量の尿が産生されるという現象です。

通常の5-10倍、もしくはそれ以上の尿が産生されます。ここで気をつけなければいけないのは、尿道閉塞を解除した後にすぐに退院して、いつもと同じ量の飲水をした場合、重度の脱水、ミネラルバランスの異常が生じるということです。

せっかく尿道閉塞が解除されたのに、脱水やミネラルバランスの異常でまた具合が悪くなっては元も子もないですね。

よって、尿道閉塞解除後は数日間、入院をして、尿量に合わせた点滴やミネラルの補充が必要になります。

以上の検査、治療までで、見積もりは大体$1500-2500になります。

手術が必要な場合の大まかな見積もり

手術費用は以下の通りです。合併症によっても大きく異なりますが、オファーする費用はこれまでの入院費用にこれらの費用が追加されます。

  • 会陰尿道瘻形成術(こちらを参照): $2000-3000
  • 膀胱切開(結石を取り除く手術):$2000-3000

尿道カテーテルが設置できない場合、会陰尿道瘻形成術が緊急的に必要になります。その場合、トータル$3500-5000くらいで退院するような形になります。

膀胱結石を取り除く手術は、尿路が確保されている限り緊急手術ではありません。この場合、一度安定化したら退院して、膀胱結石の手術を改めて計画する場合が多いです。

支払いが難しい場合の対処法

  • Care Creditに申し込む
  • 安定したら一般病院に転院する

記事の初めにも書きましたが、アメリカの獣医大学病院は地域の動物病院よりも高額です。費用をいくらでも費やせる場合は、それぞれの科に専門医がいることを考えると大学病院はメリットが大きいです。しかし、全ての人がこの高額な医療を許容できるわけではありません。

アメリカは日本よりも支払いに関してはシビアです。入院、手術に進む場合に、見積もりの半額がデポジット(内金)として収められていないと処置に進めないという決まりがあります。残りの半額は、退院後に請求がくることになります。

Care Credit

一時的に口座にお金が入っていなくて、デポジット(内金)が支払えない場合。必要な治療が受けられず必要な治療を受けられない可能性があります。

こんな状況の救済として、Care Creditという、「利子のかからないクレジットカード」に申し込むことができます。このシステムを取得することで、必要な内金が利子なしで一定期間借りることができるのです。クレジットヒストリーによって、使える上限が決まっています。

例えば、尿道閉塞でエマージェンシーに来院して、入院までの内科治療の見積もりが$1500-2000。手術を合わせて$3500-5000だったとします。その場合、ペットが入院治療をうけるには$1000(見積もり額上限の半分)、手術をするのに$2500の内金を支払う必要があります。

Care Creditに申し込み、$2000のクレジットが得られたとしましょう。

この場合、ケアクレジットを使って$1000支払えるので、入院治療をうけることができます。もしも、あなたが$500現金ででも持っていた場合、Care Creditの$2000と合わせて、手術に必要な内金$2500を支払うことができます。

安定したら一般病院に転院する

ペットの緊急事態に、24時間開いているエマージェンシーを探すのは簡単なことではありません。大学病院では、基本的には24時間開いているエマージェンシー科があることが多いです。

安定化させないと命に関わるので、緊急事態には費用が抑えられる病院を探している時間はないかと思います。

しかし、ペットが緊急事態を脱し、安定化したら転院するという選択肢はあります。24時間看護できる病院への転院が可能かどうかなどにも左右されるので、タイミングはそれぞれです。入院の途中、退院後、かかりつけ/一般病院で手術をうける、など様々なオプションがあります。

特にエマージェンシーの獣医師は、費用を工面することに非常に強力的なことが多いです。なので、前もって費用が厳しい、などをオープンに相談すると最善の対応策を考えてくれるはずです。

ペットの保険

このような予期せぬ病気によって、高額な治療費が急に必要になることがあります。ペットの保険はこのような時に非常に心強いです。ペットの保険に関してはこちらの記事でご紹介しているのでご参照ください。

まとめ

  • 尿道閉塞の重症患者を病院で治療するには、内科治療$1500-2000
  • 会陰尿道瘻形成術の手術で$2000-3000
  • トータル$3500-$5000
  • 獣医さんにオープンに相談することで、支払いが難しい方への対応策もあり
  • こんな時にペットの保険に入っておくと助かる

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みけ
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