血管収縮/拡張の原因をわかりやすく解説!
みけコミュニティでは、動物看護師さん、獣医さんにショックについて学んでいただくために、「ショックの講座」を開講しました。全10回の構成で、しっかりとショックを学んでいただくことができます。
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後負荷が上がる原因
まずは後負荷が上がる、つまり血管収縮の原因です。
- 交感神経刺激:ショック、痛み
- 基礎疾患(全身性高血圧など)
- 薬の副作用(交感神経刺激作用のある薬)
- メデトミジン、ノルエピネフリン、エピネフリンなど
血管収縮の最も一般的な原因は交感神経刺激です。
交感神経刺激以外の後負荷が上昇する原因としては、腎不全などの基礎疾患によって生じる前進性高血圧、そして薬の副作用があります。
血管収縮作用のある典型的な薬はアドレナリン作動薬である、メデトミジン、ノルエピネフリン、そしてエピネフリンなどです。
交感神経刺激という言葉について、以下説明します。(※過去の切り抜き動画あり)
交感神経と副交感神経
このイラストは、以前のみけのインスタグラムで愛玩動物看護師国家試験について投稿していたときに作ったものになります。
交感神経刺激とは、動物が戦闘モードになった時に起こる刺激のことです。
アドレナリンが体から出て、前回勉強したアドレナリン受容体を刺激することで心拍数の増加、瞳孔散大、排尿排便をしている場合ではないので、これらに関与する筋肉が排尿排便をしないような働きになります。
死の直前であるショック状態の際、痛みがある時にも交感神経刺激が起こります。
アドレナリン受容体
アドレナリン受容体は複数あって、薬の種類も作用も多くて、頭がこんがらがっている獣医学生をよく見るのですが、覚えておかなければいけないことは「受容体の種類、その受容体がどこに存在し、刺激されると何が起こるか」の3点です。
復習がてら、それぞれの受容体についておさらいしていきましょう。
覚えてほしいアドレナリン受容体は3つだけです
アルファ1、ベータ1、2です。
アルファ1は血管平滑筋に存在し、ベータ1は心臓に存在します。ベータ2は血管平滑筋と気管支平滑筋に存在します
それぞれ刺激されると何が起こるかというと
- アルファ1が刺激されると血管収縮が起こります
- ベータ1が刺激されると心拍数の増加と心収縮力増強
- ベータ2が刺激されると血管拡張と気管支拡張
これらの刺激は、外部から投与する薬によってのみ生じるわけではなく、
患者さんが戦うモードに入った時、患者さんから放出されるアドレナリンによってこれらの受容体が刺激され、心拍数の増加や血管収縮などが生じることになります。
血管拡張の原因とは?
後負荷の低下とは、血管が拡張するということです。
血管が拡張する原因には
- アナフィラキシーショック
- 敗血症
- 薬の副作用
- 火傷
などがあります。
血管拡張の副作用をもつ薬は、アセプロマジン、プロポフォール、イソフルレンなど、鎮静薬や麻酔薬に多いです。
実際の病気を思い浮かべてもらうことが理解に直結できると思うので、後負荷が下がる原因であるアナフィラキシーショックと敗血症について少しだけ時間をとって解説します。
アナフィラキシーショックによる血管拡張
アナフィラキシーショックはエマージェンシーを学ぶときによくきく言葉かと思いますが、日本で重症症例への遭遇頻度はあまり高くない印象です。
どのくらい病態をご存知でしょうか。
アナフィラキシーショックとは、例えばピーナッツアレルギーの人がピーナッツを食べたときに、致死的な状況に陥る状況を指します。
ピーナッツへの最初の暴露によって、ピーナッツ抗原に対する抗体が産生され、肥満細胞の表面に結合します。
肥満細胞とは、犬で消化管や肝臓、猫や人で肺に多く存在していて、ヒスタミンやヘパリンなどの顆粒を細胞内に蓄積しています。
2回目以降のピーナッツへの暴露で、ピーナッツ抗原が肥満細胞上の抗体に結合することで、肥満細胞が顆粒を放出します。
この放出された顆粒が体に様々な害を起こすことになります。
何が一番致命的かというと、
ヒスタミンという分子の放出によって、炎症が誘起され、血管が拡張し、循環動態に影響を与えることです。
重度な炎症による血管拡張によって後負荷が低下し、血圧が下がり血液分布異常性ショックが生じます。
炎症によって、血管拡張が起こるだけでなく、血管を構成する上皮細胞の結合が緩くなり、上皮細胞間の隙間から、血管内の血液成分が血管外へ漏れ出ることになります。その結果何が起こるかというと、前負荷の減少、循環血液量減少性ショックが起こります。
人や猫では、肥満細胞が呼吸器に多く存在することから、呼吸困難を引き起こし、低酸素血症性ショックを引き起こすこともあります。
これらの総合的な状態をアナフィラキシーショックと読びます。
人ではピーナッツアレルギーが有名ですが、動物では抗生剤やワクチン、フィラリア症、昆虫による咬傷などが典型的な原因です。
敗血症による血管拡張
敗血症に関しては、症例検討会に参加していただいた方は聞き覚えのある内容かもしれませんが、これも血管を拡張させて後負荷低下、血液分布異常性ショックを引き起こす病態です。
炎症と敗血症は似ていますが同じではありません。
どちらも感染によって引き起こされるものですが、炎症とは、体の防御反応で、うまく機能すれば炎症によって局所の病気を治癒されることができます。
このイラストのように、自分の家に虫が入ってきた時に、スプレーで局所的に攻撃すれば、自分の家を壊すことなく虫だけを駆除することができます。
しかし、過剰な炎症反応が惹起されると、局所的な感染にも関わらずミサイルで家ごと破壊してしまうようなもので、宿主の体全体を破壊してしまうことになります。これによって、重度な感染によって、感染とは関係のない臓器不全、例えば腎不全や肝不全などが生じることになります。この過剰すぎる炎症反応を敗血症と呼びます。
過剰な炎症は血行動態に影響します。もっとも顕著な変化は血管拡張です。
炎症によってサイトカインが放出されるという話を耳にしたことはあるでしょうか。
サイトカインとは、治癒のための炎症を惹起する防御機構の一環なのですが、過剰放出によってアナフィラキシーの時のように、血管拡張と血管透過性が亢進します。
結果的に血液分布異常性ショックに陥ることになります。
敗血症が血行動態に及ぼす影響はそれだけではなく、一般状態の悪さ、血管透過性更新による血液成分の漏れによって、前負荷減少敗血症による心臓収縮力の低下、そして血管拡張による血液分布異常性ショックの混在になります。
この病態を総合的に敗血症性ショックと言い表すことができます。
このように病態を理解することで、ショックをより高い解像度で理解していただければ嬉しいです。
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