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イラストで学ぶ生理学と病気

凝固系発展編②(Cell based modelを読み解く)

はじめに

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。

この記事では、凝固系をがっつり学びたいという方に向けて、ECCレジデントがどのような勉強をしているかをご紹介します。

一次止血(Primary hemostasis)

Primary hemostasisの要点は、adhesion, activation, aggregationの3つの過程を理解すること、そして血小板がもつインテグリン、G proteinの名前、そして機能、ずり応力による凝固反応の違いなど、覚えることが膨大でした。

レセプターの名前を覚えるのが非常に苦痛なのですが、抗凝固薬のほとんどがこれら血小板のレセプターを阻害する様な作用機序なため、重要だということがわかります。

私はGoodnotesを駆使して、この様にイラストを作り、ざっくり何がどんな役割を果たしているかを抑えます。

Primary homeostasisの要点図

そして、素晴らしいことに、ローカムの先生が非常によくまとまったテーブルをシェアしてくださったので、この表を地道に覚えていくという形で勉強していきます。

凝固に関わるG蛋白共役受容体と作用、薬剤一覧

この様に、レセプター、リガンド、アクション、それに対する薬の名前のテーブルを作ることで全てを網羅して記憶することができます。

Cell Based Model of Coagulation

本代のcell based modelですが、以下のNatureのレビューのイラストが非常に綺麗にまとまっていたためご紹介します。

Cell based model の相関イラスト
Trauma-induced coagulopathy, Nature, 2021, https://doi.org/10.1038/s41572-021-00264-3

この図が実は全てを表していますが、まずcell based modelは3つのフェーズ、initiation, amplification, propagationからなります。最初にもお話ししましたが、内因系、外因系の概念が根本から覆されたのではなく、同時に起こっている、もしくはお互いが関与し合っているというのが正確かもしれません。

ざっくりした流れを解説します。

Initiation phase

Initiation phaseでは、血液のTissue Factorへの暴露から始まり、少量のトロンビンを作成することがゴールになります。

この段階である程度のトロンビンが作られない場合は、Initiation phaseは即効TFPI(Tissue factor pathway inhibitor) によって組織因子の活性が阻害されます。

ここは、古典的な凝固経路でいう、外因系に当たります。

Amplification phase

Initiation phaseで作られた少量のトロンビンが、4つの因子を活性化します。

  1. 血小板(細胞膜の変化、Phosphatidylserine(PS)の変位によって反応が加速)
  2. FV–> FVa
  3. FVIIIをvWFから引き離す
  4. FXI–> FXIa

ここで活性化されたものが、最終的にPropagation phaseに置いて爆発的なトロンビンを作ることになります。

Propagation phase

  1. FXIa, FIXa, FVIIIaのintrinsic complexによってFX–> FXa
  2. FXa, FVa, FIIのtenase complexを作り、プロトロンビンがトロンビンになる

この過程で作られるトロンビンの量は、initiation phaseで作られるものとは比べ物にならない量になります。

内因性の抗凝固システム

わずかな血管の障害などで、すぐに血栓が作られてしまうと、血栓症のリスクが高くなります。よって生体は、抗凝固に傾かせる内因性の素因も持ち合わせています。

  1. Antithrombin III + Heparan sulfate –> XIIa, XIa, IXa, Xa, IIa
  2. Tissue Factor Pathway Inhibitor (TFPI)–> TF, VIIa
  3. ⍺1-protease inhibitor–> Xa
  4. ⍺2 macrogrobulin–> IIa
  5. Protein C, S, thrombomodulin+thrombin–> Va, VIIIa

抗凝固剤

凝固系を理解することで、抗凝固剤のメカニズムをよりよく理解することができます。

  1. Unfractionated heparin + AT –> XIIa, XIa, IXa, Xa, IIa
  2. Low molecular weight heparin + AT–> Xa, IIa
  3. Fondanparinux + AT –> Xa
  4. Vid K–> IIa, VIIa, IXa, Xa
  5. Direct Xa inhibitor –> Xa
  6. Direct IIa inhibitor –> IIa

線溶系

線溶系は、プラスミノーゲンがプラスミンになり、プラスミンがフィブリンを溶かすことで、血栓溶解を表す、凝固系の最終ステージです。

ここでも、線溶抑制する内因物質がたくさん存在します。このアブリビエーションだと何がなんだかわかりませんが、何を省略しているかを理解すると、名前がそのまま意味を表してくれているのでわかりやすいです。

  • PAI: Plasmin activator inhibitor
  • Pro. C: Protein C
  • TAFI: Thrombin activatable fibrinolysis inhibitor
  • TPA: Tissue plasminogen activator

オレンジで示してあるのは全て線溶抑制に働きます。つまり、一度できた血栓を安定化させる働きです。プロテインCはその線溶抑制の抑制なので、線溶に寄与します。

まとめ

Cell Based Model of coagulationという概念は、もともとややこしかった凝固検査をさらにややこしく説明しているようにも思えるほど、さまざまな因子が複雑に絡み合っています。

ここからさらに、炎症の凝固への関与を理解して初めてDICや敗血症の病態を深く理解できるようになるのです。

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みけ
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