はじめに
この記事では、FAST scanによって、見逃してはいけない重大な異常所見についてご紹介します。そして、実際にどのようにエマージェンシーやICU看護で役立てるかについても説明します。
- おさらい
- AFASTの異常所見
- 腹水/胸水
- 心嚢水
- へーローサイン
- 腎盂/尿管拡張
- TFASTの異常所見
- 胸水
- B-lines
- まとめ
FASTスキャンとはなんぞや?腹部超音波エコーとは何が違うの?という話はこちらの記事をご覧ください。
おさらい
FAST scanの一番の目的は、2分で胸水、腹水の検出すること。つまり、緊急処置が必要となる患者さんのスクリーニングです。
いかなる姿勢でもできるようになりましょう。
常に同じプローブの当て方を心がけましょう。
AFASTの異常所見
腹水/胸水
胸水/腹水は、膜に囲まれていない、低エコー性の領域です。
このスキャンでは、胸水と腹水が同時に見えています。
前腹部のフリーフルイドは、胸水なのか腹水なのかを見極める事が重要です。この画像からも見られるように、高エコー性の横隔膜の位置に着目すればわかりやすいです。
その他の腹水の見え方は以下のようになります。
腹水が見られた場合は、可能な限り、採取をして性状検査を行います。敗血症性腹膜炎だった場合は、抗生剤の早期投与が予後を左右し、そして試験開腹が必要になるからです。
腹水の原因が患者さんを死にいたらしめる危険性があるため、腹水を見たら必ず性状確認です。
腹水の性状に関してはこちらの記事もご覧ください。
心嚢水
腹部の剣状突起やや尾側からプローブを押し当てることで、心嚢水を検出する事ができます。この画像では、心嚢水と腹水が同時に見えています。
心嚢水は、心筋と心臓の周りを覆う心嚢によって囲まれています。胸水との違いは、膜に覆われているかどうかです。
へーローサイン
へーローサインとは、胆嚢浮腫によって上の図のように見える所見です。アナフィラキシーショックの際に見られる特徴的な所見ですが、その他、輸血、右心不全などによっても見られます。
アナフィラキシーが疑わしい症例で、この胆嚢所見を見たら、ほぼ間違いなくアナフィラキシーショックだと確信します。
胆嚢粘液嚢腫
胆嚢粘液嚢腫は、症状がある場合や、胆嚢が破裂している場合は、緊急的な処置が必要になります。
胆嚢粘液嚢腫が超音波で見られても、臨床症状がなくビリルビンの重度な上昇もない場合は、緊急手術が必須でない可能性もあります。
尿管/腎盂拡張
腎臓の周囲に腹水がないかを見るだけでなく、腎臓の形態に着目することも重要です。
高窒素血症がある患者さんで、尿管の拡張や腎盂の拡張が認められた場合は、尿管閉塞を鑑別リストの上位に挙げる事ができます。
TFASTの異常所見
胸水
胸水は、以下のように見える事があります。左は、肝変化した異常な肺が胸水にぷかぷかと浮いているような所見。そして、右は、横隔膜の奥に見られるフリーフルイドなので、胸水とわかります。
B-lines
B-linesとは、本来空気が含まれるはずの肺に水分が含まれる事でみられる、高エコー性のラインになります。肺に炎症細胞や腫瘍の浸潤、もしくは肺水腫や肺出血が起こった場合にこのような所見になります。
この所見から分かるのは、肺に異常があるということのみです。この初見から病気を絞ることはできません。この検査で肺疾患を疑った場合、レントゲン検査など、次の検査に進むべきです。
まとめ
この記事では、FAST scanの見逃してはいけない異常所見をご紹介しました。エマージェンシーの現場で、患者さんがなぜショックなのかを同定するのに非常に有用な検査です。素早く漏れなく検査ができるように、FAST scanを習得しましょう。