はじめに
この記事では、気管切開チューブの設置方法について、写真を用いてご紹介します。
気管切開チューブとは
気管切開チューブとは、上部気道閉塞に対する応急処置です。
一時的気管切開チューブと、永久気管切開チューブの設置があります。
一時的に気管切開チューブを設置する場合は、基礎疾患の根本治療を行うまでのつなぎ、もしくは喉頭や軟口蓋の炎症などの腫れが引くのを待つ場合などです。
基礎疾患が治療される事が前提になります。
一方、永久気管切開チューブの設置は、上部気道内の腫瘍に対する緩和的な治療などに適応されます。
上部気道閉塞の緊急症例の安定化に関しては、こちらの記事もご覧ください。
気管切開チューブの緊急的な設置
エマージェンシーに来院した上部気道閉塞患者さんにおいて、緊急的に気管切開チューブの設置が必要になるのは、内科治療が奏功せず、気管チューブが挿管できない場合です。
もしくは、麻酔から覚醒する時に、気管チューブによる喉頭の腫脹によって、上部気道閉塞が見られた場合は、気管切開チューブの設置を検討します。
それ以外のシチュエーションでは、手術室などで準備をした上で計画的に行う事ができます。
気管切開チューブの設置方法
背側横臥の姿勢で、毛刈り、洗浄、そしてドレーピングをします。
皮膚切開/気管の露出
輪状軟骨から2-3cm尾側にかけて正中切皮。
胸骨舌骨筋を分離して、気管を露出。
気管切開
第3-4か第4-5気管軟骨間をメスで横断し、小さな穴を開けます。
穴を利用して前後に牽引縫合糸(2-0非吸収糸)をかけます。これによって、気管切開チューブの挿入がしやすくなります。
切開部を拡張
牽引縫合糸を用いて、切開部を拡げます。
ここで、半分以上の径を切らない様に注意します。
この時点で、出血や粘液が気管切開部から見られる場合は、サクションを行います。
気管切開チューブの挿入
気管切開ができたら、チューブを挿入します。
様々な種類のチューブがあります。
狭窄部が胸腔に近い場合、長めの気管切開チューブが必要になります。
気管チューブをちょうどいい長さに切って、使用することができます。
気管チューブの挿入
スタイレットがある気管切開チューブの場合は、スタイレットを用いたまま挿入し、チューブ挿入後にスタイレットを抜去します。
気管チューブの固定
気管切開チューブには、首に固定できる様に両側に穴があります。紐を穴に通し、締めすぎず、緩すぎず、ちょうどいい長さで首に固定します。
牽引縫合糸には、わかりやすく頭側、尾側のマークをつけておきましょう。
動画
トラブルシューティング
気管分泌が多い場合などは、気管切開チューブの詰まりが生じます。
液体や血液、そして血栓がチューブの詰まりの原因となります。
定期的なサクション、ネブライザーが推奨されます。
また、教科書的には、1日2回の気管切開チューブの交換が推奨されています。
分泌物の量によって、気管切開チューブの交換頻度を調節します。
もしも呼吸音に異常が生じた場合は、気管切開チューブから空気が出入りしているかを確認します。
閉塞や、気管切開チューブが患者さんの動きによって、皮下に移動している場合は直ちに気管切開チューブを再設置します。
まとめ
この記事では、緊急的に気管切開チューブを設置する方法をご紹介しました。
気管切開チューブが設置された患者さんは、この管が詰まったら呼吸ができなくなるため、素早く患者さんの変化に気がつける様に24時間のモニターが必須になります。