この記事の内容
- こんなサインを見たら要注意
- サインを見たときにとるべき行動
- このような事態を予防するための方法
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。これまでに短頭種のわんちゃんの呼吸器の病気をたくさんみてきました。
短頭種であるがゆえに呼吸がうまくできず、残念ながら亡くなってしまうわんちゃんも少なくありません。そんな悲しい事態を避けるために、この記事では、飼い主さんにはぜひ知っておいて頂きたいエマージェンシーのサインをご説明していきます。
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こんなサインを見たら要注意
結論からお伝えします。もっとも危険なサインは以下になります。
- 舌の色が青/紫になる
- 意識レベルの低下
- 犬座姿勢(前足を開き首を伸ばす/苦しくて座れない)
- 熱がある
このサインを1つでも見たら、もっとも近い動物病院にすぐに連れていくようにしてください。なぜなら、そのまま亡くなってしまう可能性があるとても危険な状態だからです。
舌の色の変化は、酸素が足りないことを表します。舌の色が変化しているということは、体内の酸素濃度がかなり下がっていて、とても危険な状態です。
意識レベルの低下も、体内の酸素不足からくるものと考えられます。呼吸に一生懸命になって周囲の環境に反応しないことも危険なサインです。
犬座姿勢とは、前足を開き首を伸ばす/苦しくて座れないといった状況です。動物は呼吸が苦しい時にこのような姿勢をとることが特徴的です。
犬は、体温を調節するためにパンティングを行い、熱を蒸散させます。空気の通り道が狭くなり、呼吸がうまくできないと、熱を体外に放出できず熱中症になってしまうこともあります。
サインを見たときにとるべき行動
すぐにもっとも近い動物病院に連れていくというのが非常に重要なのですが、ここで何点か注意点があります。
- 熱中症–>常温の水道水をかける、団扇で仰ぐ
- 興奮による悪化–>興奮させない、改善傾向なら獣医師に電話
呼吸ができないことで、熱を体外に出せず、熱中症になってしまう可能性があります。体温を下げるのにもっともいい方法は常温の水道水をかける、団扇で仰ぐの2点になります。冷たすぎる水をかけると、体表の血管が縮まり、熱を発散しにくくなるので、常温水が推奨されています。冷たいタオルで体表を覆うことも、体表からの蒸散を妨げると言われているので、水をかけ、団扇で仰ぐことが勧められます。
車に乗せる、などの興奮によって悪化してしまう場合もあります。もしも自宅で冷やすことで改善が見られているのであれば、動かさない方がいい場合もあるので、判断が難しい場合はかかりつけの獣医さんに状況を伝え、指示を仰ぎましょう。
予防方法
- ダイエット
- 首輪ではなくハーネスを使用する
- 予防的な手術
- 興奮させない
- 夏は常に室内でクーラーの効いた部屋にいる
ダイエット
首周囲の脂肪によって、元々狭い気道がさらに圧迫されてしまう可能性があります。肥満気味である場合は、適切な体型を目指してダイエットをしましょう。
首輪ではなくハーネスを使用する
首の圧迫は気道を狭くするので、ハーネスに変更しましょう。
予防的な手術
緊急事態が起こる前に、予防的な手術を推奨します。短頭種気道症候群は気道が狭くなる4つの病気の総称です。4つのうちのどれに当てはまるかを診断した上で、手術によって気道を広げ、上部気道閉塞のリスクを減らしましょう。
興奮させない
興奮すると、犬はパンティングをし、空気の出入りによる抵抗で喉が炎症を起こし、腫れてしまいます。喉が腫れると、気道がさらに狭くなるのでもっと苦しくなり、努力呼吸をするようになります。この悪循環によって、上部気道閉塞が悪化することがあるので、興奮させないということは非常に重要になります。
車でどこかに行くなど、興奮させてしまう可能性がある場合は、予め獣医さんに相談の上、鎮静剤などの薬の使用も検討しましょう。
夏は常に室内でクーラーの効いた部屋にいる
暑さは短頭種の敵です。犬は、パンティングによって熱を蒸散させ、体温が高くなりすぎないようにコントロールします。短頭種も同じようにパンテイングによって熱を体外へ蒸散させようとしますが、呼吸数が早くなることで喉の炎症が起こりやすくなります。興奮した時と同様に、炎症によって喉が腫れ、上部気道閉塞が悪化します。
さらに、熱がうまく体外に出ていかないので、同時に熱中症のリスクが高くなります。よって、短頭種のわんちゃんは、散歩は涼しくなった夜にいきましょう。夏場は特に、日中はクーラーの効いた室内で過ごすようにしましょう。
まとめ
- 短頭種のわんちゃんは上部気道閉塞によって命を落とすリスクが高い
- 舌の色、意識レベル、犬座姿勢、熱に着目し、素早い行動を心がけましょう
- 上部気道閉塞のリスクを減らすための予防に努めましょう
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