はじめに
この記事では、骨髄内カテーテルの設置方法をご紹介します。
骨髄内カテーテルの適応
CPRの最中に、血管の確保ができない場合、頸静脈の露出による血管確保よりも、骨髄内カテーテルの設置の方が短時間で投薬を開始できる事がわかっています。
緊急的に血管のアクセスが必要なときに、習得しておくと便利な手技になります。
小さい患者さん(1kg未満ほど)では、ドリルを用いず、針によって骨髄内にアクセス可能です。大きな患者さんでは、骨髄内カテーテル設置様の特殊なドリルが必要になります。
投与できるもの、できないもの
骨髄内から安全に投与可能と考えられるものは、等張輸液、CPRに必要な薬、そして血液製剤です。
骨髄からの薬の投与は、骨髄カテーテルを抜去する際に痛みを伴うと言われています。
また、高張食塩水の骨髄内投与は、骨髄や筋肉の壊死を引き起こす可能性があることから、推奨されていません。
骨髄内カテーテルの設置方法
ドリルを用いない場合
18-22 ゲージの針を使用。新生仔の場合はさらに小さい針を使用。
- 近位上腕骨
- 大腿骨大転子窩
- 近位脛骨
窩を触診して、骨が最も薄い部分を狙います。新生仔や若い個体は骨が柔らかいので、そこまで力を入れなくても骨髄に到達します。
骨髄に向かって真っ直ぐに針を挿入する事がポイントです。
ドリルを用いた方法
- 近位上腕骨 顆状突起
- 脛骨 近位内側
平らな部分を目がける。
毛刈り、必要に応じて局所麻酔、メスによる切皮。
EZ-IO針のサイズ
- <5kg –> 15 mm needle
- 5-39 kg –> 25 mm
- >39 kg –> 45 mm
経験上、大体の患者さんで中のサイズが適応されます。長い針だと、骨髄を貫通してしまう可能性が高くなります。
動画
骨髄内カテーテル使用上の注意
この論文では、IOカテーテル(EZIO intraosseous catheters)の設置時間や、どの部位が設置しやすいか、そしてどのくらいの速さで輸液が可能かというものを死体(安楽死になった直後)で調べています。これらは、上腕骨と大腿骨が最も高速で輸液を投与できたという結論です。
このテーブルのように、上腕骨、大腿骨からは約2ml/kg/min (=120ml/kg/h)の速度で投与できるため、1kgの犬で120ml/hまでの速度で投与が可能ということです。
- IOカテーテルからの輸液は静脈留置と同様に機能する
- IOカテーテルから採取した血液を血液検査に回すと、基本的には末梢血と同様の結果が得られるが、フラッシュしたあとは正確でない可能性がある
- IOカテーテルから投与可能な治療がテーブルにまとめあり
- 浸透圧が高い薬に限り投与可能
- 投薬により組織壊死が生じる可能性がある
- 合併症には、血管外漏出、骨折、骨髄炎、皮膚壊死、脂肪塞栓、蜂巣織炎がある
- 24時間以内には別の血管アクセスを確保してIOカテーテルは抜去するべき
まとめ
この記事では、血管のアクセスが困難な場合、緊急的に骨髄内カテーテルを設置する方法をご紹介しました。緊急時に焦らなくて済む様に、模型や寄付された死体を用いて練習できる機会があるといいと思います。