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アメリカで働く

アメリカ獣医インターンとレジデントの違い

はじめに

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務し、現在アメリカの獣医大学で救急集中治療(ECC)の専門医を目指してレジデントをしています。

インターンとレジデントとは、どちらも大学病院の研修医というポジションですが、それぞれに与えられている役割や期待されていることは異なります。この記事では、インターンとレジデントとでは、具体的に何が違うかを解説していきます。

アメリカ大学のインターンについては以下の記事もご覧ください。

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インターンからレジデントになって変わったこと

1ヶ月前までインターンとして、レジデントやファカルティに助けてもらいながら臨床現場で働いてきた私ですが、今ではレジデントとして、インターンに指導、教育をする立場になりました。インターンの時は、学生にどこまで積極的に指導をするかは任意でしたが、レジデントになると仕事の1つになります。

そしてレジデントには、インターンの時にはない課題がたくさんあります。例えば、3年間のうちに研究をして論文を1本アクセプトされなければならないこと。そしてセミナーの聴講やレクチャーを行うことも必須になります。この具体的な要項に関してはこちらの記事で解説しています。【レジデント生活1ヶ月目リンク】

インターンに期待されること

インターンに期待されること(英語でexpectationといいます)はなんでしょうか。

インターンの仕事は、症例をプライマリーの獣医師として診ることです。インターンのバックグラウンドがいかなるものでも、先ほどのステップを飛び越えることは許されません。ファカルティの指示を仰ぎながら症例をみていくことになります。

インターンの仕事は、飼い主さんとのコミュニケーション、診断プラン、そして治療プランの構築です。必要な診断検査を終えてプランを立てた上で、レジデントと相談、確認して実際の治療を行なっていく形になります

特に飛び抜けたスキルや知識は必要なく、インターンに重要なのは適応力とコミュニケーション力です。一緒に働く人たちは、インターンは知らないことがあるのは当たり前、というスタンスです。誰しもが、それを学ぶ場所を提供するのが大学なのだ、という共通の認識を持っています。

よって、インターンに期待されることは、いかに円滑に診断を進められるか、患者さんに責任を持って接することができるか、飼い主さんにプロフェッショナルに対応できるかが期待されています。つまり、当たり前のことが当たり前にできるか、ということが重要なのです。

インターンのゴール

インターンがゴールのことはなく、インターンはあくまで他の目標を達成するための過程となると思います。インターンの1年をどう過ごすかで、その次の年どう過ごせるかがかかっているのです。

日本の先生方の多くは、インターンを行う目的は、レジデントのポジションにつなげることだと思います。もちろん、インターンでどれだけ知識を吸収するかは重要ですが、最重要事項はインターンの最中にファカルティからいい推薦状をもらって次につなげることです。

この目標を見失わないように1年間過ごすことが非常に重要だと私は思います。

いい推薦状をもらうこと=職場のみんなから信頼され、好かれること

と思いながら、インターンを過ごしていました。私は、レジデントよりもインターンの時の方がストレスが大きかったのを覚えています。インターンでは、毎日の診察で常にファカルティから試されている気分になり、冬の時期になると診察で忙しい上にマッチングの準備をしなければならないからです。

マッチングでは別の大学の先生たちからも評価を受けることになります。厳しい世界ですが、1年間という期限つきなのでどうにかやり遂げられたのだと思います。

レジデントに期待されること

インターンからレジデントになって、臨床現場で一番大きく変わったことは、責任の重みです。アメリカの大学病院のシステム上、インターンのみで判断していいことには限界があります。それはインターンの知識や経験とは関係ないもので、どれだけ自信があっても、踏まなければいけないプロセスがあるのです。これは学生が勝手に判断して患者さんを治療してはいけないのと似たようなイメージでしょうか。

そのプロセスの順番が、学生–> インターン–> レジデント–> ファカルティ(専門医)になります。

例えば、ERに来院した患者さんをプライマリーに診察するのはインターンになります。そして、インターンがどうしていいか行き詰まった場合、レジデントに相談します。そして、レジデントも悩むような状況の場合は、ファカルティの指示を仰ぐことになります。

大学のシステムの違いもありますが、基本的にインターンを直接指導するのはレジデントになります。なので、インターンからファカルティにステップを飛び得ることは、よっぽどな理由がない限り起こりません。

カルテの診断記録には、常にプライマリーに診察した獣医師とファカルティの名前が記載されます。何かしらの問題が起こった際(飼い主さんとのトラブルなど)には、ファカルティが責任をとることになるのです。なので、ファカルティが「そんなこと聞いてなかった」という状況を避けるためにも、常にインターンとファカルティとの円滑なコミュニケーションが非常に重要になります。

レジデントのゴール

レジデントのゴールはもちろん専門医になることです。専門医になるために満たさなければいけない条件やテストをクリアする必要があります。

ゴールは人それぞれですが、私は専門医になるとは、「獣医を教育する存在になること」だと思っています。

なので、自分が最先端で走り続ける力と、最先端で勉強したことをフィードバックする能力をつけることがレジデントの3年間の目標になる、と考えています。日々のインターンの指導、学生への教育が非常にいいトレーニングになります。

おわりに

この記事では、インターンとレジデントの違いについて解説しました。インターンとレジデントでは、期待されることやゴールが大きく異なるため、ゴールに近づくために毎日努力をする必要があります。日々目標を忘れずに、周囲に好かれながら仕事をすることで、実りあるインターンやレジデント生活が送れることと思います。

この記事では、アメリカ獣医大学 インターンの1日①に引き続き、ECCスペシャリティインターンのナイトシフトについてご紹介します。アメリカ大学のインターンがどの様なことをしているか、興味のある方が対象の記事になります。

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