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アメリカで働く

アメリカ獣医大学 Teaching Hospital/日本の獣医大学との違い

はじめに

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。

この記事では、アメリカの獣医大学の病院にどの様なポジションがあるのか、それぞれどんな役割を果たしているのかをご紹介していきます。アメリカで獣医師として働くことに興味がある方が対象の記事です。また、日本の獣医大学との違いについても書いていきます。

Veterinary Teaching Hospitalとは

Teaching hospitalとは、動物病院であり、同時に教育機関です。研修医のみでなく、学生への教育に力を入れています。ファカルティ(専門医)、ハウスオフィサー(研修医: レジデント/インターン)、学生、が患者さんの治療方針の決定に携わります。

Teaching Hospitalとはその名の通り、教える病院、という意味です。獣医学生は高額な学費を払っているので、動物病院オーナさんに高度な医療を提供するだけでなく、学生教育にも力を注いでいます。

アメリカ大学の教育の質は、AVMAというアメリカ獣医非営利団体によって守られています。AVMAの承認された大学を卒業した獣医師は、アメリカやカナダ、オーストラリアで獣医師として働くことができます。(日本同様、卒業だけでなく、国家試験に合格する必要はあります)

AVMAの承認を継続して得るためには、定期的に行われる審査をパスする必要があります。この審査によって、教育の質が評価されているのです。日本には、AVMAの承認を受けた大学はありません。そのため、アメリカで獣医師として働くには、別の道がを切り開く必要があります。

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私がアメリカで働き始めてからの印象ですが、スタッフほぼ全員が、学生に教えることが大好きです。獣医だけでなく、動物看護師さんも学生や、ときにはインターンにも教える機会があります。皆さん教えることを楽しんでいる様に見えます。

獣医大学病院での獣医のそれぞれの役割

大学病院で、小動物臨床に携わるポジションは以下があります。

  1. ファカルティ(専門医)
  2. ハウスオフィサー(研修医: レジデント、インターン)
  3. 看護師
  4. 獣医学生(4年生)

上から順番に説明していきます。

ファカルティ:科の責任者

ファカルティの役割

  1. 学生、研修医を教育、評価する
  2. 基本は直接診察せずにバックアップとして働く
  3. 手術などはファカルティがメインで行うこともあれば、研修医に学ばせる
  4. カルテを最終確認して承認する

ファカルティにも様々なタイプがいます。ファカルティは、クリニックの他にリサーチに力を入れている先生もいれば、学生に教えるのが大好きで大学にいる人もいます。

研修医と学生が主体となって診察を回していくのに対して、ファカルティはバックアップとして機能します。

つまり、研修医がわからないことがあったら質問に答える、ディスカッションする、もしくはオーナーコミュニケーションがうまくいっていない場合、代わりに説明する、など困ったときのお助けマン的な立ち位置です。

最終的にカルテに専門医のサインがのることになるので、症例の責任の所在はファカルティになります。研修医が間違ったことをした時にしっかりと教育するのもファカルティの役割です。

また、レジデントプログラムをまとめるのもファカルティです。専門医試験にむけて、レジデントをトレーニングしたり、スケジュールを組む仕事も担います。

アメリカでは、誰がえらいといった概念はあまりありません。働きはじめは、私も専門医に恐れおののく気持ちでいましたが、専門医は決して偉そうにしたり、威張ったりすることはありません。学生でも気軽に専門医に質問できる環境があります。

研修医: 実際にケースを回す

研修医の役割

  1. 治療方針を決めたら、ファカルティに最終確認する
  2. オーナーさんと治療の選択肢や費用を提示して最終決定する
  3. 学生を教育する
  4. オーナーさんの教育、自宅ケアの説明
  5. 学生がかいたカルテを直す+/-カルテを承認する

ハウスオフィサーとは、レジデント/インターンと呼ばれる研修医ポジションの総称です。大学獣医病院では、実際にケースを管理するのがレジデント及びインターンになります。。

ハウスオフィサーは常にファカルティに評価されています。自分のパフォーマンスを発揮できれば、インターンはいい推薦状をもらうことができます。研修医の詳しい仕事に関しては以下の記事もご覧ください。

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学生:研修医と一緒に診察をする

学生の役割

  1. 1年かけて、2-3週間ずつ様々な科を回る(ローテーションという)
  2. オーナーさんから問診をとる
  3. 患者を自分で評価して診断方法、治療方法、もしくは麻酔プランなどを考える
  4. 研修医にケースプレゼンテーションをする
  5. ファカルティとディスカッションをする
  6. オーナーさんとのコミュニケーション方法も学ぶ
  7. カルテ作成し、研修医に提出する
  8. 入院看護を手伝う
  9. ラウンドに参加する

上記に記載したように学生にも仕事がたくさんあり、実際に働きながら学びます。

ファカルティや研修医からの評価が重要なだけでなく、テクニシャンの意見も学生を評価することになるので普段の行いもとても大切です。

例えば、この学生は全然片付けをしなかった、テクニシャンのアドバイスを全然聞かない、などは全てファカルティの耳に入ります。よって、普段の態度が成績に影響することになります。

成績は、何をするにもアメリカではかなり重要です。研修医に申し込むのにも、グレードがよくなければ、履歴書すら読んでもらえないこともあります。

よって学生は、自分のパフォーマンスを見せるためにも、真剣に学び、よく発言します。そして周りからの評価をキープするために、無責任な行動はしないように一生懸命に働きます。

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日本の獣医大学との違い

日本とアメリカの教育システムは大きく異なります。

日本の大学病院では、治療を進めていくのに学生の関与はあまりありません。研修医、教授が意思決定をすることがほとんどです。

アメリカは大学の中で、学生教育が重要視されているため、学生および研修医により多くの学ぶ機会を与えようと、周りの人が教育に対してたくさんの時間と労力を割きます。

そして何より、アメリカ獣医学生はクリニックを回るときには、学生が自主的に行動しなければいけません。ただ研修医の後ろで見ているわけにはいきません。

ほとんどの先生が学生に期待することとは、自分でプランを立てることです。問診、身体検査によって得た情報から、まずは鑑別診断、そしてそれを絞っていくための診断プランをたて、得られた結果からさらに治療プランを考えていきます。

私の大学では、学生に胸腔チューブ設置、心嚢水抜去や食道チューブの設置を行ってもらうことがあります。麻酔科では、麻酔プロトコールをつくってモニタリングするのも学生になります。

アメリカでは大学卒業して間もない獣医さんでも、臨床で使える知識や、診断の基礎を1年間の病院実習を通して、研修医や専門医の助けを得ながら、学び終えていることになります。実践的なテクニックなどがすでに確立しています。専門医を目指さない限り、獣医さんになってから何年間も研修医扱いされることはありません。

また、アメリカの動物看護師さんができることも日本よりたくさんあります。看護師さんの仕事に関しては、また別の記事を作る予定ですが、看護師さんが留置を入れたりある程度の手技ができるので、獣医や学生は頭を使うことに集中できます。

まとめ

  • アメリカと日本の教育システムは大きく異なる
  • アメリカでは分業化、役割分担、責任の所在が常にはっきりしている
  • アメリカの学生は、クリニックで即戦力となる知識、技術を大学のうちに学べる
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