はじめに
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、アメリカのクリニックで働き始める獣医さん、看護師さんへ狂犬病に関する情報をご紹介します。狂犬病ワクチンの摂取の重要性、地域による差などを説明します。
狂犬病のワクチン接種は必須?
(ヒトの)狂犬病のワクチン接種が必須かどうかは、アメリカのどの地域の病院かなどによって異なります。
私が最初の1年目に働いていた地域では、野生動物から狂犬病ウィルスが検出されるても驚くことではありませんでした。つまり、放し飼いにされている犬や外に遊びにいく猫は、喧嘩や咬傷によって暴露されるリスクがあります。
そしてその犬が病気になって、病院に訪れた場合、人を噛んだら人に感染します。狂犬病に感染した場合死亡率は100%です。よって、インターンとして働きだすときにワクチン証明を提出することが必須でした。そしてアメリカについてから抗体検査も受けました。
2年目に働いた大学では、狂犬病のワクチン証明書の提出は求められませんでした。学生の中でも、接種していない人もちらほらいたくらいです。この地域では、狂犬病はほとんどなく、州や大学もそこまで警戒していないようです。
よって、ワクチン接種は必須のところもあれば必須でないところもある、というのが答えになります。
アメリカでの狂犬病ワクチンの相場
これは学生から聞いた話ですが、アメリカでは狂犬病のワクチンが1ショット1000ドルほどするとのことでした。
ワクチンの種類によって、2回接種のものと3回接種のものがあります。3回接種のものであれば、トータル3000ドル(約30万円)かかることになります。
加入している健康保険によっては、全額カバーしてくれるものもあるとのことでしたが、私が日本で打った時(2019年)は2回接種で合計3-4万円くらいでした。
接種をしてしまえば、抗体価の測定することで免疫があることを証明することができます。私はその費用は大学からカバーされたので、30万円払わずに済みました。
もしも病院で犬に噛まれたら
もしも病院で犬に噛まれたら何が起こるでしょうか。これは州によってルールが異なります。
その患者さんがワクチン接種の証明があるかどうかで大きく異なります。ワクチン接種の証明がある場合はbite incidentという書類を提出する必要がありますが、その後のややこしい手続きは必要ありません。
ワクチン接種の証明がない場合、
狂犬病リスクが高い地域においては、噛んだ患者さんは14日間の検疫が必要になります。どこかしらの病院に14日間オーナーの自費で入院するがあります。なぜなら、狂犬病の症状が発症するのに最長10日間かかるため、その犬が狂犬病の症状が出ないかを確認する必要があるからです。
もしもその犬が狂犬病を発症した場合、噛まれた人はウィルスが体に入った可能性があるということで、緊急できにワクチンを接種したりなどの処置が必要になります。
狂犬病リスクが高くない地域においては、噛んだ患者さんは家に帰ることができます。しかし、自宅待機という形で、他の動物と関わることはできません。10日後にフォローアップで神経症状が出ていないかなどの電話確認がくることになります。
そして14日以内にその患者さんが亡くなった場合、臨床症状から狂犬病の除外ができなくなるため、解剖が必須になります。その場合、開頭をして、脳の標本を狂犬病のテストに回す必要があります。
まとめ
アメリカでの狂犬病のあれこれについて解説しました。アメリカの中でも地域によって、ルールが大きく異なります。インターンやレジデントとして働く場合、after hourで働く時間があると頼りになる人がいないことが多いのです。
そして噛まれる可能性があるのは自分だけではありません。学生や看護師さんが噛まれたときに、対応しなければいけないのはafter hourで働く唯一の獣医師ということになります。正直、学生が噛まれたときなどのペーパーワークは非常に厄介です。事故が起こったときに対応できるように大学のポリシーを確認しておくと便利です。
また、日本でワクチンを打っておくべきか?という問いに関しては、真っ先にYESと答えます!