この記事の内容
- ケンネルコフとは
- ケンネルコフの患者さんの症状
- ケンネルコフの治療法
- ケンネルコフの予防法/蔓延防止方法
- 動物病院にて
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、ケンネルコフについて説明します。アメリカではケンネルコフは、ペットホテルで蔓延していることがあり、ホテルに預けた後に咳の症状で来院される患者さんで強く疑われます。
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ケンネルコフとは
ケンネルコフとは、伝染性気管支炎とも呼ばれる、伝染性の呼吸器の病気です。その名の通り、犬同士の飛沫で感染します。犬がたくさんいる施設で蔓延しやすく、ホテル、ドッグラン、トレーニングセンターで感染が成立してしまうことが多いです。
ケンネルコフの原因
- ボルデテラ(細菌)
- パラインフルエンザ(ウィルス)
- アデノウィルス
- マイコプラズマ
これらの微生物の感染によって、気管支炎(気管支の炎症)を引き起こし、強い咳といった症状を示すようになります。
基本的には自然に治る病気ですが、免疫力の弱い6ヶ月以内のわんちゃんに感染すると、重症化することがあります。
- infectious tracheobronchitis:感染性の気管気管支炎
- boarding and daycare facilities:ペットホテル
- dog parks:ドッグラン
- contagious:伝染性の
ケンネルコフの症状
ケンネルコフの症状は、英語でhonking coughと表される、ガチョウの鳴き声のような乾いた咳が特徴です。
- a strong cough
- “honking” sound
- runny nose
- sneezing
- lethargy
- loss of appetite
咳を特徴とする病気は他にも、ジステンパーウィルス、犬インフルエンザ、気管虚脱、心臓病、喘息などがあります。前者2つの感染は、重症化する可能性が高く、さらに伝染性なので、ケンネルコフとの区別が重要です。
- canine distemper virus:ジステンパーウィルス
- canine influenza virus:犬インフルエンザウィルス
- collapsing trachea:気管虚脱
- bronchitis:気管支炎
- asthma:喘息
- heart disease:心臓病
気管虚脱や心臓病は、病院での身体検査やレントゲン検査にて診断できる可能性が高いです。しかし、ジステンパー、インフルエンザは、これらを診断するための特別な検査が必要になるので、疑ってかからないとなかなか検査に進むことはありません。
ケンネルコフの症状はそこまで重篤化しないことが一般的です。一方ジステンパー、インフルエンザは、神経症状がでたり、呼吸器以外の症状によって、命を落とすほど重症化することが多いです。ケンネルコフを疑って治療したとき、一筋縄にいかない場合はこれらの深刻な病気を疑い始める必要があります。
ケンネルコフの治療法
- 早期の診察、他の病気の除外
- 抗生剤によるボルデテラ感染、二次感染を防ぐ
- 咳止め、鎮静剤によって咳の悪循環を止める
治療の基本はこの二つになります。ボルデテラという細菌感染によってケンネルコフが生じている可能性が高く、この菌に効きやすい抗生剤を選択します。
原因がウィルスの場合、抗生剤は直接ウィルスには作用しません。ウィルス感染によって、肺の防御能力が落ちることで普段は防御できている細菌にも感染しやすくなります(これを二次感染といいます)。
二次感染を防ぐためにも、抗生剤の投与は治療の基本になります。
咳が炎症を引き起こし、炎症がさらに咳を悪化させます。この悪循環を断ち切るために、咳止めや鎮静剤の使用を推奨することもあります。
もしも痰が絡むような咳の場合(湿性の咳と表現します)、咳を止めることで菌が排除されにくくなることもあるので、獣医さんによる咳の評価によって最適な薬の処方は異なります。
咳は、喉から肺までの空気の通り道のどこの刺激からでも誘発されます。そのため、首輪からハーネスへ変更して気管にかかる刺激を少なくすることも助けになります。
- secondary infection:二次感染
- antibiotics:抗生剤
- cough suppressant:咳止め
- sedation: 鎮静剤
ケンネルコフの予防法/蔓延防止方法
- ワクチン
- 犬がたくさんいる環境を避ける
- 100%は防げない
- 感染が疑われたら巻き散らかさない
アメリカには、もっともケンネルコフの原因になりやすい微生物であるボルデテラに対するワクチンがあります。たくさんの犬がいる場所に行く場合はワクチンの接種が推奨されます。多くの施設では、ホテルに預ける前にワクチン証明の提示が必要になります。
ワクチンは経鼻、皮下注射、経口の投与方法があります。初年度は4週間開けて2回接種(ブースターのため)、その後6ヶ月から1年に一回の追加接種が推奨されています。
ワクチンを打った次の日から効果が出るわけではありません。最低1週間程度のワクチンが出るのを待つ必要があります。ホテルに預けるなどのイベントがある場合は計画的にワクチンを接種しましょう。また、ワクチンの種類によってプロトコールは違うこともあるので、獣医師の指示に従うようにしてください。
ケンネルコフを引き起こす微生物はボルデテラだけではありません。ワクチンを打っていても、その他の微生物によってケンネルコフを100%防げるわけではありません。
もしもあなたのペットにケンネルコフの症状が出てしまった場合、他のわんちゃんに伝染する可能性があります。伝染を避けるために、発症から3週間は他のわんちゃんがいる環境を避けるようにしましょう。
また、同居のわんちゃんがいる場合は、同様の症状が出る可能性が高いので、よく観察してあげるようにしてください。
- prevention:予防
- vaccination:ワクチン
- oral/nasal/injectable vaccination:経口/経鼻/注射のワクチン
- booster vaccine:ブースターワクチン
- contagious:伝染性
動物病院にて
もしもケンネルコフが疑われ、動物病院へ訪れる時、必ず予め電話でヒストリーを伝え、伝染性の病気である可能性を伝えるようにしてください。
病院に訪れた、弱っているわんちゃんに伝染させないように、病院はそれなりの工夫をしてくれるはずです。それぞれの病院のプロトコールがあるので、確認した上で来院するようにしてください。
まとめ
- ケンネルコフは伝染性の病気
- 自然治癒することが多いが、免疫が弱った子犬、では重篤化することもある
- ケンネルコフではない重篤な疾患ではないことを確認する
- 治療は、二次感染を防ぐための抗生剤、咳の悪循環を断つための咳止めや鎮静剤が基本
- ケンネルコフの原因菌の一部はワクチンで予防可能
- ワクチンで100%防げるわけではない
- 感染が疑われたら3週間は他の犬と接触させない
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