この記事の内容
- ペットがヤマアラシに襲われることがある
- 刺さった針によって起こる合併症
- ペットがヤマアラシに襲われたときにとるべき行動
- 病院での処置
- 便利な英単語
- まとめ
ペットがヤマアラシに襲われることがある
アメリカの地域によっては、野生のヤマアラシが犬を襲う/犬が遊ぼうとして針が刺さるといったことが起こります。嘘のような話ですが、私が現在働いている地域では珍しくはなく、1週間で4件もエマージェンシーに運ばれてきました。
春から夏にかけて、ヤマアラシの行動が盛んになるため、症例数はこの時期に多くなります。
実際に襲われているところが目撃されることもあれば、外にいって帰ってきたら針が刺さっていた、ということもあります。英語ではporcupine attackといいますが、本当に「襲われた」のか、遊んでいたら針が刺さってしまったのかは実際に見ていた人のみぞ知る、ですね。
針が刺さるのは主に顔が多いです。なぜなら、多くの犬が興味を持って、匂いをかいだり、くわえようとしたりするからです。しかし、ヤマアラシからのアタックもあるため体幹部に針が刺さっていることも少なくはありません。
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刺さった針によって起こる合併症
- 深部によって異なる
- 真菌(カビ)感染
- 細菌感染
- 異物反応(炎症)
- 針が体内で移動し、腹腔内や胸腔内の臓器に達する
刺さった部位や、どのくらいの深さまで刺さっているかで重症度は異なります。
眼に刺さった場合、唇を貫いて口腔内にまで貫通している場合、胸壁や腹壁を貫くように深くまで刺さった場合は注意が必要です。
基本的に、浅ければ抗生剤などの薬は必要ありませんが、深部まで到達している場合や、針の一部が体内に入り込んでしまった場合は、感染が生じて膿が溜まったり、異物反応によって炎症が起こったりします。
体内に入り込んだ針の一部は、身体中を移動する可能性があります。例えば、ヤマアラシに襲われてから2週間後に呼吸が苦しくなって病院を訪れた犬の肺から針の一部がCTで見つかったり、心臓に突き刺さった針が超音波で見つかったという症例報告があります。
非常に恐ろしい話ですが、針の一部が体内に入っている期間が長いほど、予後が悪くなります。中には残念ながら亡くなってしまうこともあります。
ペットがヤマアラシに襲われたときにとるべき行動
- 自分で抜かない
- すぐに動物病院へ連れて行く
ペットがヤマアラシに襲撃されたとき、とるべき行動はすぐにエマージェンシーに連れて行くということです。針自身に毒などはありませんが、痛みを伴うこと、前述したように異物が体内に入り込んでしまう可能性があること、時間が経つと炎症によって針が抜けにくくなることから、できるだけ速く針を抜いてあげる必要があります。
くれぐれもご自宅で抜こうとしないでください。一つ目の理由は、痛みを伴うので、ペットが可哀想だからです。そして、針が折れて体に一部が残ってしまうと、完全に取り除くことが逆に難しくなります。
病院での処置
- 痛み止め
- 鎮静
- できるだけ針の一部と体内に残さず抜く
- 必要に応じて抗生剤の処方
- 必要に応じて痛み止めの処方
- 重度な場合はレントゲン、CTスキャン、MRIなどが必要なこともある
- 試験開腹、開胸が必要なこともある
病院ではどんな処置が行われるか。ゴールは痛み止め、鎮静薬を投与して、針をできるだけ体内に残さず抜いていくことです。
もしも皮膚の下に針の一部が触診で確認された場合は皮膚を少し切ってでも一部を取り除く必要があります。
余程深い侵襲的な障害がない限り、抗生剤は使わないことが多いです。
針が刺さって、すぐに体内を移動するわけではありません。病院で、全部抜いたと思っても、100%抜き切ることが難しいこともあります。体内に針の一部が残ってしまった場合、症状として現れるまでに2週間ほどかかります。
どこに移行したか、なんの臓器が障害を受けたかによって、発症する症状は様々です。
もし体内を針の一部が移動して何らかの症状が出た場合は、CTスキャンやMRIなどの画像検査、もしくは試験開腹や開胸によって異物を取り除く必要があります。残念ながら、CTスキャンやMRIでは異物の有無、位置を知るのに100%の感度がある検査ではありません。異物が臓器に刺さっていても、正常かのように写ってしまうこともあります。なので証拠がつかめないまま試験開復したなどの手術に進まなければいけないこともあります。
便利な英単語
- porcupine ヤマアラシ
- porcupine attack ヤマアラシによる襲撃
- quill 針
- remove quells 針を抜く
- migration 移動(針の一部が体内を移動するようなときに用いられる表現)
- migrate 移動する
- penetration 貫通
- penetrate 貫通する
- penetrating wound 貫通した傷
- swelling 腫れる
- under sedation 鎮静下で
- bleeding 出血
- pain medication 痛み止め
- antibiotics 抗生剤
まとめ
- 針の一部が体内を移動すると様々な臓器へ障害が出る可能性がある
- 万が一ペットがヤマアラシに襲われたら、ご自宅で抜こうとせず、すぐに病院へ連れていきましょう
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