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イラストで学ぶ生理学と病気

犬猫のFAST scanのコンセプトを理解しよう

はじめに

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専門医になるためのレジデントをしています。

この記事では、FASTスキャンとはなんぞや?腹部超音波エコーとは何が違うの?というお話をします。そして、実際にどのようにエマージェンシーやICU看護で役立てるかについても説明します。

FAST scanとは?

FAST scanとは、エマージェンシーやICU患者さんに対して、ベッドサイドで行う簡易超音波です。

FAST: Focused Assessment with Sonography for Trauma, Triage, and Tracking

= 外傷、トリアージ、トラッキングにフォーカスを当てた超音波検査

FAST scanの一番の目的は、2分で胸水、腹水の検出すること。つまり、緊急処置が必要となる患者さんのスクリーニングです。

腹水にフォーカスが当たる理由としては、敗血性腹膜炎、膀胱破裂、胆嚢破裂をいち早く検出し、治療を開始する事が、救命につながるためです。胸水に関しては、呼吸困難の原因が胸水であった場合、胸水抜去によって救命できるからです。

「腹部エコー」との違いは?

腹部エコーは、腹部のいかなる異常を検出するための検査ですが、FAST scanはあくまでスクリーニングです。腹水、胸水の検出、そして予後を変えるような重大な異常の検出のみが目的になります。

大きな違いは、検査時間と、患者さんにかかるストレスの大きさです。

FAST scanは、エマージェンシーに来院した患者さん、そしてICUの入院患者さんにルーチン的に行われる検査で、検査に5分以上もかけていられません。

患者さんのトリアージ、安定化のために必要な情報を集めるための検査になるため、腹部エコーとは異なるものとして捉えられます。

そして、不安定な患者さんにもストレス少なく検査ができるようになる事が重要です。呼吸困難で今にも命を落としそうな患者さんを、仰向け姿勢にして超音波検査をすることは危険です。どの体制でもある程度の検査感度を保ちながら、異常を検出できるようになる事が重要です。

FAST scanのやり方

患者さんがどの体勢でも行えるようになる事が重要です。特に不安定な患者さんにストレスをかけることは危険なので無理せず、多くの情報を手に入れられるように練習が必要です。

基本的には毛刈りはしません。毛をかき分けて、プローブを直接皮膚に当てることで綺麗な像が出せます。

プローブには、片方にマークがあります。そのマークは、モニターの左側に来るように設定されているはずなので、常にこのマークを患者さんの頭側に向けます。

すると、モニターで、左側に焦点を当てたい場合は、頭側に動かせばいいと常に方向が一定します。

また、プローブの当て方のポイントとしては

  1. 毛をかき分ける
  2. アルコールを必要な部分にだけかける
  3. プローブを直接皮膚と接触させる

この3点です。毛の上からプローブを当てても、何も見えません。上記にも示したように、FAST scanでは毛刈りをしません。そのため、しっかりと毛をかき分けてプローブを直接皮膚に当てる事が重要です。

また、患者さんが今にも心肺停止しそうな場合は、念のためアルコールの使用を避け、ジェルの使用を考慮します。

AFAST 4つのビュー

腹部のFASTscanでは、4つのビューを評価します。

  1. DH view: 横隔膜-肝臓
  2. SR view: 脾臓-腎臓
  3. HR view: 肝臓-腎臓
  4. CC view: 結腸-膀胱

横隔膜-肝臓

このビューでは、肝葉の間、肝臓と横隔膜の間、そして胆嚢周囲の腹水を評価します。

剣状突起のやや尾側から、プローブを頭側に押しながら観察します。胆嚢はやや右側に位置するため、胸郭が深くて胆嚢が見えにくい場合は、右肋間からアプローチすることで胆嚢を検出する事ができます。

このビューで確認することは

  1. 肝葉の間、肝臓と横隔膜の間、そして胆嚢周囲の腹水
  2. 胆嚢の形態的評価(胆嚢粘液嚢腫や、へーローサイン)
  3. 心嚢水
  4. 胃停滞による胃液の貯留

頭側にプローブを傾けることで、横隔膜を介して心臓が見られます。このビューで、心嚢水がないかを確認することもできます。

また、重症患者さんでは、胃停滞が生じる可能性が高く、重度な場合は誤嚥や吐き気の原因になるため、検出できれば積極的にNGチューブを設置して胃を空にしてあげましょう。

脾臓-腎臓

左側の最後肋骨、背尾側からアプローチします。腎臓は後腹膜によって背側に吊るされている状態なので、背側気味から見られます。

  1. このビューでは、脾臓や腎臓周囲に明らかな腹水がないか
  2. 脾臓に明らかな腫瘤がないか
  3. 腎臓周囲に腹水がないか
  4. 腎盂や尿管の拡張がないか

を確認します。

腎盂や尿管の拡張は、尿管閉塞を示唆する所見です。状況によっては早急な手術の検討が必要になるため、早めに検出できる事は大きなアドバンテージになります。

肝臓-腎臓

右側の最後肋骨、やや尾側からアプローチします。左の腎臓と比べ、右腎はやや頭側に位置するため、プローブを肋骨の下に潜り込ませて頭側へ押さないと見えにくいです。

このビューでは、左腎の場合と同様、腎臓や尿管の形態的な異常も検出します。

結腸-膀胱

このビューでは、結腸や膀胱周囲に腹水がないかを観察します。膀胱周囲に見られる腹水は、膀胱破裂の可能性が高いです。

また、膀胱内の結石や粘膜の肥厚もFAST scanで検出できます。あまり時間をかけるべきではありませんが、患者さんのヒストリーによっては、これらの所見をささっと集めることも診断プロセスを組み立てるのに役立ちます。

腹水の見え方

腹水は、膜に囲まれていない低エコー性の領域です。尿は液体なので、膀胱内と同じエコー性を示します。大きなちがいとしては、形が不正で、膜に囲まれていません。

TFAST

胸部の全体を見渡しますが、異常がある時は以下の名前を用いて表します。

  1. Cd (caudal) 尾側の
  2. Ph (perihilar): 肺門周囲の
  3. Md (middle): 中央の
  4. Cr (cranial): 頭側の

胸部のFAST scanの目的は以下になります。

  1. 胸水の検出
  2. 心嚢水の検出
  3. Blineの検出
  4. グライドラインの検出

胸水

胸水は、量によっては呼吸困難を引き起こす可能性があります。呼吸困難の患者さんに対して、非常に有用な検査になります。

こちらの記事で胸水患者さんの安定化についてご紹介しています。

胸腔内疾患(胸水、気胸)の緊急対応/わかれば怖くない呼吸器疾患 はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専...

そして、診断に関しては、こちらもご覧ください。

犬猫の胸水①血胸、膿胸、乳び胸/鑑別疾患 はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専...
犬猫の胸水②胸水の性状検査/鑑別疾患 はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専...

心嚢水

心嚢水は、患者さんがショック状態の場合、心タンポナーデを疑い、早急に心嚢穿刺を行う必要があります。

Bline

Blineとは、肺に水が浸潤していることを示す超音波上の所見です。どのような病態でも、肺に水分が含まれればBlineとして現れます。肺水腫、肺炎、肺挫傷、肺腫瘍。これらを超音波だけで鑑別する事はできませんが、肺間質/肺胞に異常があるという事がわかります。

高エコー性の、ラインとしてみえます。重症度によって、ラインの太さや本数が異なります。重度であれば、ラインではなく面のように広範囲の高エコー所見が認められます。

まとめ

この記事では、FAST scanについてご紹介をしました。エマージェンシーの現場で欠かせない素晴らしい検査です。こちらの記事では、FAST scanの異常所見についてもう少し踏み込んで説明していますので合わせてご覧ください。

犬猫 FAST scanで見逃してはいけない異常所見 はじめに 著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2023年現在アメリカの大学で獣医救急集中治療(ECC)専...
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みけ
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