本記事の内容
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、2021年現在アメリカの獣医大学で研修医(インターン)をしています。
アメリカでは、特に、症例プレゼンテーションがクリニシャンの能力が評価される重要なスキルになります。この記事では、症例プレゼンテーションがなぜ重要か?そして、どの様にプレゼンテーションスキルを上げるか?について私なりのお勧めを書いていきます。
日本の診察で、患者さんについて先輩獣医さんへにアドバイスをもらうときにコミュニケーションがどうもうまくいかない方、もしくはアメリカで獣医師として働くことに興味がある方が対象になります。

症例プレゼンテーションの重要性
私が通っていた日本の大学では症例プレゼンテーションに関する授業や、実際に学生が症例プレゼンテーションを行う機会というものはありませんでした。アメリカではこれらのことをクリニックできっちり学びます。
私はアメリカに来て間もないとき、症例プレゼンテーションにはすごく苦戦しました。ただでさえ英語ができないという劣等感がある中、みんなの前で一貫したプレゼンをして、さらに専門医からの質問に答えなければならないからです。
日本で獣医として働いていると、症例プレゼンテーションスキルにフォーカスがあたることはあまりありません。しかし、先輩に症例の相談をする時や後輩から症例の相談を受ける時に、どの順番で何を話すべきかを整理して話すことが意外に難しいことがわかります。
アメリカで獣医として働くには、症例プレゼンテーションスキルは欠かせません。このスキルが身につくと、患者さんを一貫して見落としなく情報収集できるようになります。そして自分が症例プレゼンをされた時に、不足している大事な情報にすぐに気がつけるようになります。
学生のプレゼンスキルの見せ場
アメリカの獣医学生は、4年次のクリニックにでて、実際に研修医や専門医と一緒に働きます。1年間のクリニックでは様々な科を回ることになりますが、どこの科に行っても、症例のプレゼンテーションが非常に重要なスキルになります。
なぜなら、学生がうまく情報伝達ができないと、治療方針の決定に支障が出るからです。そして、症例プレゼンテーションスキルも専門医からの評価対象になります。
問診をとり、身体検査、診断のプランを立てるのは学生と研修医が主体となります。どの科にいっても、Case round(症例に関するディスカッションを10人くらいのグループで行う)があります。ここで学生は、自分が担当した患者さんの情報を、研修医や専門医にプレゼンテーションします。
研修医のサポートがありますが、症例プレゼンテーションがよくないとみんなの前でズバズバ指摘されます。準備不足もバレバレになります。プレゼンテーション後に、ディスカッションを行い、治療方針を確認していくことになります。

研修医のプレゼンスキルの見せ場
研修医として働く場合も、症例プレゼンテーションのスキルは非常に重要です。学生から聞いた話と、自分の評価とを最終的にまとめて簡潔に話さなければいけない機会がたくさんあるからです。
例えば、症例を他の科の先生に紹介する場合(コンサルティング、転科)、腹部超音波検査で画像診断医とディスカッションする場合、手術が必要だと判断した症例について外科チームに説明する場合、自分のバックアップ(ファカルティ)に症例についてオンコールで相談するとき、など症例をわかりやすく説明しなければならないのです。
オンコールの先生に電話する場合は、夜中にダラダラとまとまりのないことを話すわけにはいきません。また、このコミュニケーションがうまくいかないと、様々な先生からの信頼を失うことになります。
ここで、私が日本にいるうちに行った症例プレゼンスキルを習得する勉強法をご紹介します。日本で学ぶのにおすすめの本2冊をご紹介します。

症例プレゼンテーション能力を高めるためにおすすめの本 2選
症例プレゼンテーションは、実際にやって上達していくものだと思っています。ですが、初め正解が分からない状態で闇雲に数をこなしても効率が悪いです。以下の本ではどんなプレゼンの仕方がベストか、自分なりの答えを見つけるためのアイディアがたくさん紹介されています。
自分なりの理想のプレゼンテーションを見つけた上で、日々の症例プレゼンテーションでコツコツ練習していくことをおすすめします。
あの研修医はすごい!と思わせる症例プレゼン
この本は日本のお医者さん向けの本です。私は渡米前に熟読しましたが、すごくおすすめです。
症例プレゼンの基本を説明した上で、状況に応じた症例プレゼンのテクニックも説明してくれています。「聞き手の気持ちを考えてプレゼンする」ためにどうすればいいかのヒントが盛り沢山です。
米国式プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法
2冊目のこの本は、1冊目にご紹介した本と要所は同じですが、英語の例文がたくさん載っています。プレゼンテーションに必要な英語は基本的には同じなので、型を覚えてしまえば症例に応じて当てはめていく作業になります。
私は初め、どんな英語を使ってプレゼンすればいいかもわかりませんでした。この本ではボキャブラリーや表現方法のヒントもたくさん載っているのでおすすめです。
まとめ

- 症例プレゼンテーション能力はアメリカで働く上では非常に重要
- 症例プレゼンスキルをみがくためにおすすめの本2選、ぜひ読んでみてください
