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イラストで学ぶ生理学と病気

【今更でもいいからとにかく学ぶ】説明できる??血管内溶血vs血管外溶血

溶血

この記事の内容 

  • 血管内溶血
  • 血管外溶血
  • 血管内と血管外溶血

この記事では、血管内溶血と血管外溶血の違いを解説します。血管内溶血のほうが、重篤であるということはご存知の方が多いのではないかと思います。

ではなぜ血管内の方が重篤で、どういったメカニズムの違いがあるのかという点に着目して説明していきます。

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溶血の原因には、輸血反応、IMHA、タマネギ中毒、亜鉛中毒、低リン血症などがありますが、原因にかかわらず溶血による弊害が大きく出ることは珍しくありません。この記事では、New England JournalのHemolytic Transfusion Reactionという論文を引用して解説していきます。

輸血反応, New England Journal, Hemolytic Transfusion Reaction

血管内溶血

血管内溶血とは、IgMによって始まります。IgMが補体を活性化し、これによって赤血球の膜に穴が開きます。この反応は血管内で生じ、赤血球の中身が容赦無く循環血液中に撒き散らかされます。

IgMはIgGなどより先に作られる抗体です。このことから、一度反応が起こるととても早く溶血が起こることが予測されます。

ヘモグロビン が循環血液中に放出されることで、ヘモグロビン 血症や尿症(赤い血漿や尿の色)が特徴的です。ここで注意が必要なのは、ビリルビン血症との区別です。ビリルビン血症では血漿が黄色くなるのに対し、ヘモグロビン 血症では、血漿が赤くなることに注意しましょう。

溶血 血色素

赤血球の塗抹を見てみると、ゴースト細胞やシストサイトと呼ばれる赤血球のカラのようなものが増えます。

溶血 シストサイト

溶血性輸血反応の記事に詳細は書きましたが、血管内の反応では、炎症性サイトカインによる血管透過性亢進や血管拡張による低血圧、さらには赤血球のカラが尿細管に詰まり乏尿性の腎不全、血管障害による凝固異常などが生じることになります。

血管内溶血 生体の反応

血管外溶血

血管外溶血 生体の反応 高ビリルビン血症

血管外溶血は、IgGが赤血球表面に付着し、肝臓や脾臓でマクロファージの貪食能を刺激します。これによって赤血球がかじられるというイメージでしょうか。

マクロファージに貪食されたヘモグロビン はビリルビンになるため、高ビリルビン血症が特徴となります。さらに、かじられた赤血球は球状赤血球という小さくてまん丸な形になります。

血管内溶血 マクロファージ 赤血球の貪食
血管内溶血 マクロファージ 赤血球の貪食 球状赤血球

血管内と血管外溶血

これらを区別することで何か治療法を大きく変えることはあるでしょうか。病態を理解するのに重要な因子になりますが、治療の点から考えると溶血に対する特異的な治療法は特になく、どちらも対処療法となります。

血管内溶血の方が急速に進行すること、さらにヘモグロビン などを直接循環血液内に放出するという点から深刻な合併症が生じやすいと言えます。

ちなみにですが亜鉛中毒や低リン中毒、タマネギ中毒は赤血球の酸化障害による直接の膜損傷になるため血管内溶血と言われています。

必ずしもどちらかに区別することができるわけではなく、血管内と血管外の両方が生じることもあります。

溶血の結果生じる合併症に関してはこちらのページでまとめているのでご参照ください。

まとめ

血管内溶血と血管外溶血について解説しました。患者さんの溶血を見たときに、原因、機序、そしてその結果どうなるかを想定できることが重要なキーになります。

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みけ
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