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イラストで学ぶ生理学と病気

【今更でもいいからとにかく学ぶ】犬の跛行について②問診編

【今更でもいいからとにかく学ぶ】跛行症例と向き合う①の続きになります。②では、意外と軽視されがちな問診について説明していきます。

この記事の内容

  • 跛行症例の問診で必ず抑えたいポイント
  • 医学用語に置き換える
  • まとめ

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。

自分が知らないものに対処している時、私たちは自信を持つことができません。自信がないまま診察をするのは非常にストレスフルです。一方、患者さんの身体について知り尽くしている場合、自信に溢れ診察が楽しくなります。

この記事では、整形分野に苦手意識のある先生に、知り尽くすとまでは言わなくても、ここまでの情報が集められたら大丈夫!というポイントをお伝えしていきたいと思います。

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問診で必ず抑えたいポイント

  • 一般状態
  • その跛行、いつ始まった?きっかけは?
  • 跛行し始めた最初の日から今まで経過は?
  • 跛行に対して何か薬を始めた?その薬の効果は?
  • 家でどう管理していた?
  • 基礎疾患、投薬歴

これらの情報は最低限必要になります。これらは、飼い主さんが自分から言いださなくても、獣医さんが聞き出さなければいけない情報になります。

アメリカの獣医大学では、まずは学生が問診を最初にとります。それを身体検査所見とともに研修医にプレゼンテーションするのですが、「跛行が始まってから症状はどう変化したの?」と聞くと、「飼い主さんは特に何も言っていなかった」と答える学生がいます。「飼い主さんに、症状の変化があったか自分から質問した?」と聞くと大抵「自分からは聞いてない」という答えが返ってきます。

問診は受け身になっていては効率的に情報収集をすることができません。キーとなる情報をピンポイントで聞き出すことが重要になります。

では、これらの情報がなぜ大事かという理由を以下に説明していきます。

一般状態

一般状態が悪い場合、以下の可能性があります。

  • 一般状態の悪化、虚弱によって元々基礎疾患がある患肢が助長された
  • 一般状態と跛行が関連している(感染性関節炎/多発性関節炎/汎骨炎/腫瘍など)
  • 一般状態が深刻
  • 投薬による副作用が生じている

跛行よりも優先して治療しないといけない病態が隠れている場合、跛行と一般状態の悪化が関連している場合などがあるので、元気、食欲、嘔吐、排便、排尿はしっかりと確認するようにしましょう。

跛行に対して、実はステロイドやNSAIDsを飼い主さんが独自の判断で投薬していたりすることがあります。用量、用法を理解せずに利用されている場合、実は血便やメレナが続いているなどという情報はあらかじめ知っておきたいですね。

積極的に、特異的な質問をしていきましょう。

その跛行、いつ始まった?きっかけは?

何月何日から始まったか、跛行のきっかけがあったかどうかをしっかりと聞き出しましょう。これに関しても、あえて質問しないと聞き出せない情報だったりしがちです。飼い主さんに思い当たることがないか、考えてもらうことが大切になります。

  • 跛行が始まる前に外傷があった
  • ベッドから飛び降りてから始まった
  • 実はずっと前から痛がっていた

そして、この情報を手に入れたら、医学用語に置き換えます。前者二つであれば、急性。後者であれば慢性。もしも中間であるような場合は亜急性ということができます。

  • 急性:急にある日突然、始まる跛行
  • 慢性:いつから急にということなく、数週間患っている跛行
跛行し始めた最初の日から今まで経過は?

経過を把握することが重要な理由は、鑑別診断を可能性の順番に並べるのに役立つからです。

例えば、腫瘍であれば慢性経過を辿り、徐々に悪化傾向になるはずです。感染性関節炎や多発性関節炎なども、適切な治療が行われなかった場合、患肢も一般状態も悪化していくはずです。

もしくは、急にギャンといって跛行が始まって、1週間経って、少しマシになってきている/変わっていない。などです。

  • 悪化傾向
  • 改善傾向
  • 変化なし
跛行に対して何か薬を始めた?その薬の用量、効果は?

もしも問診で十分な情報を聞き出せず、以下の情報が欠けていたらどうでしょうか。

  • 実はステロイドの投薬によって一時的に症状がマシになった
  • 実はステロイドを高用量で2週間以上投与している
  • 実はステロイドを投薬したことがあったが悪化したので投薬を中止していた
  • 実は投薬中のNSAIDsの用量が推奨用量以下で、痛みのコントロールができていない

投薬歴に、ステロイドが投薬された時は特に注意が必要です。感染性の疾患の場合はステロイドで助長される可能性がありますが、発熱などがマスクされる可能性もあります。また、免疫介在性の疾患の場合は用量によっては症状が寛解、マスクされます。

さらに厄介なことに、用量や投薬気管によっては、ステロイドやNSAIDsの副作用を心配しなくてはならない可能性もあります。

また、痛み止めを投与してるのに悪化している、という所見も見逃せません。痛み止めの用量が足りていない可能性、病態が進行している可能性が考えられます。痛みのコントロールは跛行疾患の要になるので、投薬歴をしっかりと確認して最適なペインマネージメントができるようにしましょう。

これらの理由から、何が投薬されたか、そしてその投薬によって症状がどう変化したか。という情報がキーになります。

家でどう管理していたか

跛行しているけれどもドッグランで構わず走り回らせています。などという場合は、炎症が悪化し自然に治癒する病態でも悪循環にはまり慢性経過をたどる可能性があります。炎症–>痛み–>跛行のトライアングルを断ち切るためにも、自宅での安静管理が重要になります。

自宅でどう運動制限がされていたかにも着目するようにしましょう。

基礎疾患/投薬歴
  • 既往歴クッシング
  • IMHA治療でステロイド使ってます
  • 以前、多発性関節炎と診断され、ここ数年は寛解状態でした
  • 1週間前に他の犬と喧嘩して同じ脚の外傷を治療していました

紹介や他の病院にかかったことがある患者さんの場合、必ずカルテを入手するようにしましょう。どんな基礎疾患があったか、投薬がされていたか、詳細に把握する必要があります。

基礎疾患や投薬歴にステロイドが関与している場合は要注意です。靭帯や筋肉のアトロフィーが出るだけではなく、副作用の免疫不全によって、感染が生じる可能性なども大いにあり得ます。

これらの情報が入ってくるだけで、多発性関節炎の再発、外傷による膿瘍、異物などの可能性が視野に入ってくるのではないでしょうか。

患肢だけを見るのではなく、患者さんの全体像を把握して、整形疾患以外を見逃さないように問診をしましょう。

医学用語に置き換える

紹介や上の先生に症例の相談をする場合に、問診で得た情報、身体検査所見を伝えることになります。その時に、オーナーさんの言葉をそのまま使うのではなく、医学用語に置き換えて効率的に情報を共有します。

  • 急性増悪
  • 慢性経過
  • 一時的に寛解

など、難しい言葉をあえて選択するわけではなく、一言で相手に状況を伝えられるようになると、ケースをプレゼンするときのストレスが少なくなります。

プレゼンテーションに関しては、この本が特におすすめです。人の医療の本ですが、要所は同じだと思うので、ぜひ読んでみてください。

まとめ

  • 跛行の診察で必ず抑えておきたい問診のキーポイントを解説
  • 症例をプレゼンする前に情報収集をしっかりしましょう
  • 症例プレゼンする時は、医学用語を用いて効率的に伝えられるようになりましょう

【今更でもいいからとにかく学ぶ】跛行症例と向き合う③身体検査編に続きます。

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みけ
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