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イラストで学ぶ生理学と病気

【今更でもいいからとにかく学ぶ】理解しよう!抗体検査と抗原検査の違い

感染症の検査

この記事の内容

  • 謎の神経症状、貧血、血小板減少症、関節炎の鑑別診断
  • 感染症の診断ツール
  • 抗体検査(エライザ)
  • 抗原検査(PCR)
  • まとめ

著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。この記事では、感染症の診断を行う時の基礎知識を解説していきます。

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謎の神経症状、貧血、血小板減少症、関節炎の鑑別診断

まずは感染症を疑えるかというところから全てが始まります。アメリカでは特に、日本で教科書でみた程度の病気が普通に鑑別診断にあがります。

日本で、ジステンパー、狂犬病、ダニ媒介性感染症は存在は知っていても実際に疑って検査を考慮する頻度は高くありません。日本が狂犬病清浄国であること、また日本のワクチンの接種率の高さからかと思います。

しかし、謎の神経症状はジステンパー、狂犬病、またIMHAやITP、関節炎、謎の発熱などの鑑別にダニ媒介性感染症はつきもの言っても過言ではありません。

ジステンパーや狂犬病は、神経症状によって凶暴になり、正気を失ってしまったような犬に対して疑うことが多いです。ワクチンの接種歴や、野生動物との干渉、ジステンパーでは他の犬の暴露、呼吸器症状歴が重要なヒストリーになります。

患者さんの主訴とヒストリーを聞いたときに、この二つの疾患を疑えるかが非常に重要になります。なぜなら、ジステンパーの場合他の患者さんに感染する危険があるためです。狂犬病は日本で注意する必要性は低いと思いますが、人間が噛まれたときのリスクを考慮することが重要です。

ダニ媒介性、血液媒介性の感染症は、抗体産生を刺激することから全身性の炎症が誘発されます。その結果、特定の症状というよりは全身症状を示すことになります。

抗体産生や全身炎症の結果として起こる臨床症状としては、発熱、リンパ節の腫脹、関節炎(人が風邪を引いたときに節々が痛いというのと似たような感覚でしょうか)、抗体産生によって、免疫介在性疾患(IMHAやITP, PIMA)が誘発される、抗原抗体の尿細管への沈着によって蛋白尿、腎不全があります。

感染症の診断ツール

私は日本で働いていたときは、検査会社の推奨するがままに検査に出して、あまり深い意味を考慮したことがありませんでした。この記事では、どのタイミングでどのテストをするかが重要になるということを強調するために、エライザの抗体検査とPCRの抗原検査について解説して行きます。

感染症の診断を行う際に重要なステップは以下になります。

  1. 感染症を疑えるか
  2. 感染が生じたタイミングを推測する
  3. 検査方法を選択する
  4. 正しいサンプルを検査会社に送る
  5. 解釈に注意する

その感染症を疑えるかは、きちんと鑑別診断を挙げられるかがポイントになります。先ほど例に挙げたように、謎の神経症状、謎の貧血、、、などの鑑別診断に感染症が入れられるかはが最初のポイントです。

次に、感染が生じたタイミングを考慮して検査方法を選択する必要があります。

検査方法は大きく抗体検査(エライザ)と抗原検査(PCR)に分かれます。4DXや6DXのスナップテストは抗体検査になります。PCRは基本的には外注になることが多いです。最近では、院内でPCRの機械を備えているところもあるのかもしれませんが、いまはまだ外注が基本なのかと思います。

PCRで見るのは、病原体です。実際に細菌がいるかを調べる検査になります。

ここから、なぜ検査のタイミングと検査方法、サンプリングが重要かという話に移ります。上記はYouTubeでエーリッヒアの検査方法に関してのウェビナーです。すごくわかりやすく解説してくれているので、英語で学ぶ気力のある方はこちらの動画はおすすめです。

抗体検査

  • 抗体検査が陽性を示した=抗体がある=病原体に暴露されたことがある
  • 抗体検査が陽性を示した≠感染している
  • 抗体検査が陽性を示した=ワクチンの影響
  • 抗体検査が陰性を示した=抗体が産生されていない=病原体に暴露されたことがない、もしくはまだ抗体産生が始まっていない
  • 抗体検査が陰性を示した≠感染していない

抗体検査はあくまでスクリーニングとしての機能を果たします。ワクチンの影響や過去の病原体への暴露の結果陽性になることもあります。

病原体によって、IgMかIgGを検出できるかは異なります。IgMが早期に産生される抗体で、IgGは血液中濃度が上昇するのにIgMよりも時間がかかりますが、一度産生されると数年先も残留します。

抗原、抗体(IgM,IgG)の血中濃度の推移

この図から、どのタイミングでIgMの検査をするかIgGの検査をするかの重要性が読み取れます。

例えば、疑わしい臨床症状があり、IgMの上昇がみられた場合、その患者さんが感染している可能性は高いと言えますが、IgGの一点の上昇が見られた場合、これが数年前の感染による抗体価の上昇なのか、今まさに感染が成立しているのかの判断はできません。

このことから、IgGの抗体価の測定は、数日の時間を開けた2点で行うことが推奨されます。これをペア血清といい、もしも2点間で抗体価が上昇していた場合、感染が高い確率で疑われます。

IgGの2点測定

先ほどもお示ししましたが、血清の検査ではワクチンによる抗体産生かどうかの区別はできません。よって例えば感謝さんが数日前にジステンパーのワクチンをうち、呼吸器症状や神経症状を呈した場合、もしもペア血清でIgG濃度に差が出たとしても、感染による抗体産生かワクチンによるものかがわからないということになります。

そんなときに、確実に病原体をキャッチするための検査が次のテーマのPCRになります。

抗原検査(PCR検査)

PCR検査は、以下の図の黄色い部分で病原体を検出できる検査です。

抗原、抗体(IgM,IgG)の血中濃度の推移

PCR検査は、何をサンプリングするかが重要です。

例えば、血液で増殖する病原体、エーリッヒアの場合を考えてみましょう。急性期の場合、血液で増殖するため、血液のPCRによって病原体が検出される可能性が高いです。この時点で、脾臓や骨髄をサンプリングしても、まだそこまで病原体が及んでいない可能性があります。

次に、症状が出ていないsubclinicalもしくは慢性的なフェーズでは、脾臓や骨髄のPCRによって検出できる可能性も高くなります。

よって、PCR検査では何をサンプリングするか(結膜のスワブ、尿、脳脊髄液など)、どのタイミングでサンプリングするのか、が重要になります。

まとめ

今回は、抗体検査と抗原検査の基礎を解説しました。ここまで理解していただけたら、あとは検査会社のインストラクションを理解できるはずです。なぜ、この感染症の診断にはこの検査方法じゃなきゃいけないのか。ということの理解が深まれば嬉しいです。

参考文献

  1. Ehrlichia Canis In-Clinic Diagnosis – Dr. Revital Netta, YouTube.

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みけ
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