この記事の内容
マッチングの結果発表が2023年3月6日に行われました。残念ながらマッチングできなかった大学のプログラムと応募者をマッチさせる、「スクランブル」という第二の工程が現在進行中です。
スクランブルとは、アメリカで専門医を目指し、マッチングに参加する方は是非知っておくべき工程です。外国からの応募者がスクランブルでポジションを獲得することは珍しくないからです。
この記事では、スクランブルについてご紹介したいと思います。
マッチングの仕組みまとめ
マッチングとは、ざっくり言い表すと、専門医になりたい人と、研修医を雇いたい大学(もしくは私営の病院)とをマッチさせるシステムです。
専門医になるには、まずレジデントという3年間のプログラムに所属して、専門医試験を受けられる要項を満たす必要があります。そのレジデントの選考の場がマッチングということになります。
アプリケーションが始まると同時に、世界中のレジデントを目指す獣医がマッチングプログラムに申し込みを行います。費用がかかりますが、最初の申し込みに上限はなく、いくつの大学や動物病院にも申し込みができます。
申し込みを受け取った大学は、気になる候補者と面接を行います。両者情報収集を行い、最初に候補者が大学をランクづけします。行きたい大学を1から順に並べていきます。
この大学には絶対に行きたくない、という場合は、その大学をランクに入れなければ、マッチすることはありません。
そして、最後の工程は、大学側が候補者をランキング付するのです。欲しい候補者を1から並べます。候補者が、行きたくない大学をランクに入れなくて良いのと同様、大学もどうしてもとりたくない候補者は、ランクを付けない事ができます。
そして、アルゴリズムにしたがって、候補者と大学のマッチングが行われ、3月のこの時期に発表されるというわけです。
細かい解説は、以下の記事をご覧ください。
スクランブルとは
この工程でマッチングを行うことで、当然マッチできなかった候補者、レジデントのポジションを埋められなかった大学が出てきます。
その欠員を埋めるための第二の工程をスクランブルと呼ぶのです。
マッチングの開票後すぐに、マッチしなかった候補者の情報及び大学のプログラムが公開されます。
ここからは、マッチングの工程で決められた締め切りがないため、お互い早い者勝ちということになります。
お互いが、より良い候補者、もしくはよりいいプログラムに入ろうと直接コンタクトを取るのです。候補者は、大学の責任者に直接メールや電話をします。また、大学側も同様、めぼしい候補者がいた場合は、直接メールや電話をするのです。
このスクランブルの工程でレジデントになれるというパターンは珍しくないのです。私の知り合いにも、何人もいます。
スクランブルを成功させる鍵
もちろん、マッチングですんなりレジデントのポジションを得られればどんなに気が楽なことでしょう。しかし、マッチングに失敗した時点で、もう残りの選択肢はスクランブルにかかっているのです。
本当にレジデントになりたいという信念がある場合は、マッチング前からスクランブルに備えることも、重要だと思います。
スクランブルでとられるパターンは大きく2種類です。
- 純粋に申し込みのパッケージが素晴らしい(成績、推薦状などの見栄えがいい)
- コネクション
申し込みのパッケージが素晴らしければ、マッチングに失敗する可能性は多くないのかもしれません。なので、不利な外国人が備えられる方法としては、コネクションを増やすことになります。
私の大学では、今年ECCレジデントの募集がなかったため、実際にマッチングやスクランブルを経験することはありませんでしたが、レジデントの立場で自分の下に入ってくる人をスクランブルで決めなければいけないとなった場合は、真っ先に知り合いをあたるはずです。
友達、知り合い、自分にブログを通じて声をかけてきてくれた有能そうな獣医さんで今すぐ働ける人はいなかったかな、、、と思い巡らせます。
これは、私だけではなく、おそらくファカルティ含め誰しもがそうすると思います。そしてスクランブルをしなければならなくなった大学側のすべての人が思い巡らすことです。
そして私たちが求めているものとは、
- ECCがやりたくて、
- 教えやすくて、
- 熱意があって、
- 一生懸命働いて、
- 7月から働ける人、、、
という条件になります。
まずECC(に限らずその専門)が好き!という熱意がある人は絶対に好まれます。
そして、頭のよさよりも、教育のしやすさに焦点があたることが多いのです。いくら賢くても、いうことを全然聞かない伸び代のない人とは一緒に仕事をしたくないというのはたやすく想像ができると思います。
そして最後の7月から働けるひと、というのはフットワークの軽さそして覚悟がある人を指します。やりたい気持ちがあっても、7月からは無理です(英語が、引っ越しが、家庭の事情がなどの理由で)、と言われてしまうと、じゃあ次のひと、、、となってしまいます。
専門医になりたいという覚悟が決まった時点で、いつでも動けるフットワークの軽さというのは一つの武器になるのです。
スクランブルでは、正直これ以外のことはあまり重視されないと私は思っています。成績が多少悪い、英語に不安がある、というのは、上記にあげた他の部分で挽回できるチャンスが大いにあるのです。
レジデントの立場から見ると
3回のマッチングを重ね、ようやくレジデントの立場からマッチングやスクランブルを見てみると、実はチャンスはゴロゴロ転がっていたりするものだな、と思うのです。
アメリカ にくるとっかかりが難しいというのはもちろんですが、転がっているチャンスをものにできるかが一番重要なんだと思います。短期的ではなく長期的な目で見た時に、着々とレジデントや専門医に近づけるかが要になると思います。
そして、やはり選考の際に重視されるのは、一緒に働きたいかどうかを左右させる性格、為人、教育のしやすさ、といった数字では測りきれないものであることがわかります。
まとめ
この記事では、スクランブルについての解説と、それを成功させるための秘訣を自分なりに解説してみました。どこかの誰かにお役に立てたら嬉しいです。