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【アメリカでペットと暮らす方へ】パグ、ブルドッグを飼われている方必見!短頭種気道症候群の手術を解説

この記事の内容

  • 短頭種気道症候群の予防的手術について
  • 鼻の穴を広げる手術=外鼻孔形成術
  • 軟口蓋を短くする手術=軟口蓋切除術
  • 喉頭小嚢を取り除く手術=喉頭小嚢切除術
  • 起こりうる合併症
  • まとめ

この記事では、短頭種気道症候群の予防的手術の具体的な方法についてイラストを使ってわかりやすくご紹介します。実際の動画は、Youtubeをお借りして掲載しています。英語ですが、実際にどんなふうに手術をしているか気になる方は見てみてください。

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短頭種気道症候群の手術について

短頭種気道症候群の予防的手術とは、簡単にいうと、短頭種の狭い気道をできるだけ拡げてあげる手術のことです。短頭種気道症候群の病気に関してはこちらで紹介しています。それぞれの患者さんで、具体的な原因は異なります。どの部分の気道が狭いかを確認した上で原因を除去する手術を選択します。

この手術を早期にやっておくことのメリットは2つあります。

一つは、呼吸がしにくくて辛い状態をいち早く除去してあげることができる、ということです。日本でもこの手術に何度か携わりましたが、手術を終えた飼い主さんの満足度は非常に高く、「もっと早くやってあげればよかった」という言葉を何度も耳にしました。

もう一つは、上部気道閉塞が慢性的に生じていることで起こる合併症のリスクを軽減することができる、ということです。常に上部気道閉塞を抱えているわんちゃんは、気道内が常に陰圧になります。これによって、逆流性の食道炎が起こったり、誤嚥性肺炎が起こったり、様々な弊害が同時に起こります。

気道を拡げてあげることで、これらの合併症を軽減してあげることができます。それではここから、それぞれの手術について解説していきます。

鼻の穴を広げる手術=外鼻孔形成術

外鼻孔、鼻の穴を拡げることを説明するイラスト

外鼻孔とは、いわゆる鼻の穴のことです。空気をできるだけ肺に多く送るには、入り口であるこの部分が開いている状態(右図のようにコンマ状)が望ましいです。しかし、多くの短頭種のわんちゃんは、鼻の穴が非常に小さいです(図左)。

この手術では、左のような線のような鼻の穴の隙間を、右のようなコンマ状に拡げてあげるという処置を行います。具体的には、余分な組織を切り取って縫い合わせるといった簡単な手術になります。手術中出血することもありますが、大きな血管はないので、圧迫していれば止まるくらいの小さな出血ですみます。

当然ですが、「外貌の変化」というのが合併症のうちの一つになります。

軟口蓋を短くする手術=軟口蓋切除術

軟口蓋を短くする手術、軟口蓋切除術を説明するイラスト

口蓋とは、口と鼻を分ける板状の組織です。私たちがベロで触れている上の部分になります。硬い部分を硬口蓋、喉のほうに舌を沿っていくと途中から軟らかくなることがわかるかと思います。ここから奥が骨の組織のない軟口蓋と呼ばれる部分になります。

短頭種では、この軟口蓋といった部分が長く伸び、分厚く成長してしまいがちです。そうなると、気管の入り口である喉頭といった部分がこの組織で覆われることになります。

軟口蓋の病気を表すイラスト

正常の喉頭を下に示します。これは、口を大きく開けた時に見えてくる、気管の入り口(喉頭)という部分になります。息を吐いているときには閉じていますが、吸っているときには喉頭が開いて空気が気管に入っていきます。

喉頭、気管を表すイラスト

軟口蓋は喉頭の上に見えている組織で、長くなると以下の図のようになります。

軟口蓋が長い時の喉頭、気管を表すイラスト

軟口蓋の手術とは、この長くなった部分を切り取って、空気を気管に送り込みやすくする手術になります。切り取り方は様々ですが、動画のようにメスや、ハサミで切ることもあれば、電気メスで焼きながら切っていく方法もあります。

この軟口蓋という組織は、食べた物が気管に入らないように仕切る働きがあります。大きく切り取りすぎると、誤嚥などの合併症が起こることがあります。

喉頭小嚢を取り除く手術=喉頭小嚢切除術

喉頭小嚢という小さな膜状の組織はこの喉頭の裏側にある袋状の組織です。正常では見えません。短頭種のわんちゃんでは、それが裏から表に出てきてしまうのです。それによって、気管の入り口がさらに狭くなります。

この手術では、この袋を切り取って入り口を拡げてあげる、ということを行います。この組織も血流が豊富ではないので、ハサミで切り取るだけで、大きな出血などは起こりません。

喉頭小嚢反転がある時の喉頭、気管を表すイラスト

起こりうる合併症

合併症に関してはそれぞれの手術でも少し触れました。もっとも注意しなければいけないのは、手術が終わり、麻酔から覚醒させるときです。

目が覚めて、気がついたら病院にいて、口にチューブがささっている、という状況にパニックになってしまうわんちゃんもいます。ここで興奮してしまうと、手術によって腫れている組織がさらに腫れてしまう可能性があるので、すぐに完全に起こす、というよりはゆっくりゆっくり様子をみながら起こしていきます。

ここで呼吸に問題がある場合はもう一度挿管をしなくてはならないこともあります。数時間かけて目を覚ましてくれたら、大体は同日に退院できることが多いです。

まとめ

  • 短頭種気道症候群の予防的手術は早期に行うことが推奨される
  • 気道のどこに問題があるか診断した上で必要な手術に進むことが勧められる
  • もっとも注意しないといけないのは、麻酔後の覚醒時

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みけ
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