この記事の内容
- 猫の尿道閉塞とは
- 初期安定化
- 尿道閉塞後の内科治療
- 猫の尿道閉塞解除後の治療オプション
- 会陰尿道瘻形成術とは
- 会陰尿道瘻形成術に進むタイミングとは
- 役立つ英単語
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。この記事では、様々な猫の尿道閉塞についてご紹介します。尿路に何が起こっているか、どんな治療オプションにがあるかを図を用いてわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。
【アメリカでペットと暮らす方へ】猫の尿道閉塞を図でわかりやすく解説①で前半を説明しました。後半は会陰尿道瘻形成術の詳しい説明からになります。
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会陰尿道瘻形成術
会陰尿道瘻形成術とは、以下の図のように、手術で解剖学的に細い部分の尿道と陰茎を切り取って、太い尿道部と会陰をつなげると言った手術になります。
言い換えると、オス猫特有の、細くて湾曲する部分の尿道とペニスを切り取って、メス猫のような太くて短い尿道のように形成します。
手術の動画があったので、生々しくても大丈夫な方はご参照ください。
この手術によって、プラグの原因自体が解除されない場合でも、閉塞しにくい尿道に変えてしまうことができるのです。すごくいい手術ではありますが、もちろんメリットデメリットがあります。
メリット
メリットは、尿道閉塞再発の可能性がグンと下がります。何度も尿道閉塞でエマージェンシーに駆け込んだ経験のある方にはこんなにありがたい手術はないかもしれません。
デメリット
デメリットは合併症と感染リスクです。この手術は、尿道の粘膜と皮膚をつなぎ合わせる手術です。違う性質の上皮が完全にくっつくまでには時間がかかります。その間、組織がうまくくっつかずに、剥がれ落ちてしまうことを裂開と言いますが、裂開が生じた場合は再手術が必要になります。
また、肛門に非常に近い部分なので、手術部位の感染にも気をつけなければいけません。
最後に、解剖学的にメス猫の尿道を作り出すことで生じるデメリットがあります。膀胱と外界が近くなることで、感染が成立しやすくなることです。
メス猫の尿道の特徴は以下の通りです。
会陰尿道瘻形成術に進むタイミング
タイミングは非常に難しいです。私が思う、ベストなシナリオを以下に紹介します。
- 尿道閉塞でエマージェンシーにいく
- 特発性膀胱炎と診断がつく
- 環境やストレス因子を取り除く全ての努力をする
- 尿道閉塞再発
- 初回同様、他に膀胱炎の原因となる基礎疾患がない
- 閉塞解除後、入院してそのまま手術
これはあくまで個人的な意見ですが、できる内科治療を行っても再発した場合、2度、3度繰り替えすから早いところ手術に進んだほうがいい、と思っています。
もちろん、上記で述べたように手術には一長一短があるので、なんでも間でもすぐに手術するべき、とは思いません。ですが、以下のような事例を最後にご紹介してこの記事を締めたいと思います。
- 尿道閉塞でエマージェンシーに来院
- 特発性膀胱炎と診断がつく
- 環境やストレス因子を取り除く全ての努力をする
- 尿道閉塞再発
- 手術の費用が許容できず、内科治療を続ける
- 結局2度、3度と尿道閉塞を繰り返し、手術代よりも高い治療費を払うことになる
アメリカでは治療費がすごく高いので、大学病院で尿道閉塞の治療をすると、退院までにかかる費用は10万円以上はかかります。入院が伸びれば、20万円くらいいくことも平気であります。
思い切って手術に進んでしまったほうがいい時もありますが、やはり患者さんそれぞれ違うので、担当の獣医さんとよくご相談の上方針を決めるようにしてください。
役立つ英単語
- surgery: 外科手術
- perineum: 会陰
- plasty: 形成術
- perineal urethrostomy surgery (PU surgery): 会陰尿道瘻形成術
- complication: 合併症
- dehiscence: 裂開
- infection: 感染
- bacterial infection: 細菌感染
まとめ
- 尿道閉塞は命の危険となる病態なため、早急な対応が必要
- 病院では、初期安定化、そして尿道閉塞解除後の内科管理が必要
- 安定したら、速やかに原因治療を行う
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