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【アメリカでペットと暮らす方へ】大型犬に多い⁉︎喉頭麻痺とその外科手術「タイバック」とは⁉︎

喉頭麻痺

この記事の内容

  • 喉頭麻痺についてイラストで解説
  • なぜ喉頭麻痺が起こるのか
  • 喉頭麻痺の診断方法
  • 喉頭麻痺の手術「タイバック」とは
  • 術後の合併症
  • 喉頭麻痺のエマージェンシー
  • まとめ

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喉頭麻痺についてイラストで解説

犬、タイバック、喉頭麻痺

喉頭とは、軟骨で形成された気管の入り口のことです。通常、息を吸っているときには入り口は開き、吐いているときには閉まり、空気の自動ドアのような機能を果たします。

犬、タイバック、喉頭麻痺

喉頭麻痺とは、この自動ドアが壊れ、息を吸っているのに扉が動かなくなる病気です。そうすると、肺へ通じる空気の通り道が狭くなり、うまく酸素を肺に届けられなくなります。

犬、タイバック、喉頭麻痺

少しでも隙間が空いていれば、呼吸はすることができますが、興奮や炎症によって、喉が腫れたりすると気道がさらに狭くなり、ゼーゼーと音を鳴らしながら呼吸をしたり、呼吸ができなくなり舌の色が青になる、といった症状がでます。

なぜ喉頭麻痺が起こるのか

喉頭麻痺の原因

  • 原因不明な場合(特発性)
  • 多発性筋炎
  • 重症筋無力症など筋肉の異常
  • 神経の異常
  • 腫瘍
  • 外傷

原因は様々なので、喉頭麻痺が診断された場合は、これらの基礎疾患がないか、ということを調べる必要があります。多くの場合は、原因不明の特発性。もしくは多発性筋炎といった様々な部位の筋肉の炎症が原因であることが多いです。

原因疾患を放置すると、喉頭麻痺以外の症状が悪化することがあります。原因疾患を診断するのは難しいこともありますが、重篤な病気の早期発見に繋がる可能性もあるので、さらなる検査に関してはかかりつけの獣医さんとよくご相談ください。

喉頭麻痺の診断方法

喉頭麻痺の診断は、臨床症状と喉頭の目視によって行われます。

臨床症状は、上部気道閉塞による呼吸様式の変化です。ゼーゼーと喘鳴音を出しながら呼吸をする、息を吐く時間に対して吸っている時間が長くなるような呼吸努力がある、運動するとすぐに疲れる、運動しなくなる、舌の色が青や紫に変化する、などが挙げられます。

喉頭の目視、というのは、鎮静をかけた状態で口を大きく開けて、喉頭を観察します。喉頭が麻痺している場合、息を息を吸っているのに喉の

喉頭麻痺の手術「タイバック」とは

日本語の正式名称は、披裂軟骨側方化術といいますが、簡単なのでタイバックと呼ばれることが多いです。この手術は、日本語の通り、喉頭を形成する披裂軟骨 披裂軟骨を側方(外側)に引っ張る力を加える糸をかけることで空気の通り道を拡げてあげるといった手術になります。

以下に図で解説していきます。

犬、タイバック、喉頭麻痺

タイバックとは、喉頭を形成する軟骨に糸をかけ、外側に引っ張る力を加えることで気管の入り口を常に開いた状態にする手術です。上図のように、赤い部分に太い糸をかけます。

犬、タイバック、喉頭麻痺

口の方から喉頭をのぞいてみると、上の図のようになります。左半分はほとんど閉まった状態で麻痺しています。右側は糸の張力により、喉頭の入り口が開いた状態で固定されています。結果的に、空気の入り口を常に開いた状態にすることができます。

術後の合併症

  • 誤嚥性肺炎
  • 糸が切れる

常に気管の入り口が半分開いている状態になるので、重篤な合併症としては誤嚥性肺炎があります。本来、ご飯を飲み込むときには喉頭は閉まり、食べ物が気管に入らないような仕組みになっています。これを常に開いた状態にすることで、食べ物、飲み物、嘔吐物などが気管に入り肺まで到達し、肺炎が生じてしまうといった合併症が出る可能性があります。

食べるスピードをコントロールすることなどが予防法として挙げられますが、100%防ぐことはできません。

もしもペットの呼吸が速くなった(安静時の呼吸数が1分間に40回以上)と感じた場合は、すぐにかかりつけ動物病院に連絡してください。

また、かけた糸が切れてしまう、という合併症もあります。これによって新たな症状が出ることは稀ですが、手術をする前の状態に戻ることになるので、喉頭麻痺の症状が悪化することになります。

喉頭麻痺のエマージェンシー

  • 犬座姿勢 (前肢を拡げて首を伸ばす)
  • 呼吸努力、興奮
  • 舌の色の変化(青、紫)
  • 意識状態の低下
  • 熱が出る

喉頭麻痺の患者さんのもっとも危険な状態とは、上部気道閉塞です。初めの方にもご紹介しましたが、興奮などで喉に炎症が起こることによって、空気の気管までの通り道が狭くなります。酸素が足りなくて患者さんはさらに激しく空気を吸おうとして呼吸数が上がります。空気の摩擦によって、喉頭の腫れが悪化し、悪循環が生じます。

呼吸に一生懸命な患者さんは、苦しいので首を伸ばします。座ることができない、もしくは立つことができなくなることもあります。

酸素が体内に足りなくなると、舌の色が青や紫に変わります。

脳の酸素濃度が足りなくなると意識がモウロウとし始めます。

また、体内の熱を呼吸によって蒸散させることができなくなるので、熱がでます。

これらの危険サインに気がついたら、すぐに獣医さんにコンタクトを取るようにしてください。このような危険な状態を回避するには、なるべく興奮をさせない生活を心がけるようにしましょう。もし興奮が予測される場合は、予め鎮静薬などを投与してあげて、このような事態を回避しましょう。

まとめ

  • 喉頭麻痺とは、気管の入り口を開け閉めする扉が麻痺して動かなくなってしまう病気
  • 喉頭麻痺の手術、タイバックとは、この扉を半分大きく開けた状態にする手術
  • 合併症には誤嚥性肺炎、糸が切れて上部気道閉塞が再発する、といったことがあげられる
  • 喉頭麻痺の危険サインに気がついたら直ちに獣医師に相談

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みけ
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