この記事の内容
- 細胞膜と血管内皮が区切るものとは
- 水はどこにどれだけいる?
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
Emergency and Critical Careの分野では、輸液治療の知識が非常に重要になります。ICUに入院する患者さんのほとんどは輸液治療を受けています。入院管理では、それぞれの患者さんに、どの輸液製剤をどのくらいの速度でどれくらいの期間投与する予定なのかという輸液プランが必要になります。
輸液についてというシリーズでは、輸液治療について生理学から勉強しなおせるように、イラストを使って、わかりやすい言葉で解説していこうと思っています。
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細胞膜と血管内皮が区切るものとは
体の中には3つの区画(コンパートメント)があります。
- 細胞内
- 間質
- 血管内
水分はこの3つの区画を行き来します。この区画は、それぞれ細胞膜、血管内皮という仕切りによって区切られています。
水はどこにどれだけいる?
この3つの区画に体重のおよそ60%の水分が分布していることになります。
エマージェンシーやクリティカルケアの臨床現場で私たちが最もフォーカスを当てるのは、血管内の区画になります。この水分が直接組織にエネルギー源となる酸素を供給することになるからです。
「血管内の水分=血液循環量をいかにして増やすか」
が患者さんの安定化の際に常に考えることになります。
まずは細胞外vs細胞内を考えます。
- 体液の2/3は細胞内に存在
- 体液の残り1/3は細胞外に存在
つまり、体重10kgの犬であれば、総水分量は約60%で6kg(こちらのページで解説あり)。そのうち、の2/3=4kgは細胞内の水分で、1/3=2kgは細胞外の水分であることがわかります。
次に、細胞外をさらに血管内皮で区切ったとき、間質と血管内という区画に分かれます。
この区画の水分の分布は
- 細胞外液の3/4は間質に存在
- 細胞外液の1/4は血管内に存在
することになります。先ほど計算した細胞外液量は2kgでした。このうち、間質に3/4=1.5kg、血管内に0.5kgの水分が存在するということになります。
初めて計算したとき、「血管内の水分少な!」と思いました。体を循環している水分量が一番大切だからこそたくさんあると思っていましたが、実はそんなこともなく、総水分量の8%(1/3×1/4=1/12)、体重当たりにすると約5% (8%x60%)であることがわかります。
まとめ
- 体液の分布は3つの区画(細胞内、間質、血管内)で考える
- 細胞内vs細胞外の水分布は2/3 vs 1/3
- 細胞外液中の水分布、間質vs血管内は1/4 vs3/4
- 血管内の水分量は総水分の約8%、体重の約5%
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