この記事の内容
- 猫の尿路閉塞とは
- 猫の尿路閉塞の種類
- 役立つ英単語
- まとめ
著者は、日本の獣医大学を卒業後、一般病院で3年間勤務した後、現在アメリカの大学で獣医研修医をしています。
この記事では、様々な猫の尿路閉塞についてご紹介します。「尿が出ていない」時にどのような病気が考えられるかを図でわかりやすく解説していきます。アメリカでご自身のペットにそのようなことが起こった時に、活用していただけたら幸いです。
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尿路閉塞とは
腎臓で作られた尿が尿管、膀胱、尿道、陰茎のどこかしらが閉塞、うっ滞して、尿を排泄できなくなる状態を尿路閉塞と言います。どこの部分で閉塞が生じていても尿路閉塞、と言います。また、どこで閉塞が起きているか、なぜ閉塞が起きているかによって、診断方法、治療方法が異なります。
尿が出ない=尿路閉塞でもありません。尿が出なくなる病気は、物理的な閉塞以外にもたくさんあります。例えば、腎不全が進行したり、腎臓に菌が感染したり、中毒によっても「尿が出ない」という症状が現れます。
まずは物理的な閉塞であること、そしてどの部位が閉塞しているかを確認するところから診断治療が進んでいきます。
猫の尿路閉塞の種類
閉塞部位
- 尿管(尿管閉塞)Ureter: ユレターと発音します
- 尿道(尿道閉塞)Urethra: ユリスラ(thの発音に注意)と発音します
尿管と尿道、名前が紛らわしいので以下の図で確認してください。猫の尿路の解剖はこちらのページでも詳しく説明しているのでご参照ください。
英語バージョン
英語の発音は結構難しいです。どちらもカタカナでは表しきれないので、以下の動画で発音確認してみてください。
尿管閉塞
尿管は左右2本あり、それぞれの腎臓から膀胱へ尿を運ぶ役割があります。どちらか一方が詰まっても、反対側の腎臓、尿管が機能していれば症状が出ることはありません。両方の尿管が閉塞した時に初めて「おしっこが出ない」という症状が出ます。
片側尿管閉塞
両側尿管閉塞
尿道閉塞
尿道は、膀胱と外界を繋ぐ管です。何らかの原因で道が塞がれると「おしっこが出ない」という症状が現れます。以下の図は膀胱から尿道にかけてできた腫瘍によって尿道が閉塞した図です。
さて、ここまでで尿路のどこが詰まる可能性があるかをみてきました。ここからは、閉塞の原因についてみていきましょう。
閉塞物質
- 結石:stone
- プラグ(炎症細胞や結晶によって形成される栓子): plug
- 腫瘍: cancer, tumor, neoplasia
- 血餅(稀): blood clot
結石
結石にも種類があります。種類によって、治療方法が異なります。簡単にいうと、ストルバイトは食事療法で溶けます。シュウ酸カルシウムは食事を変更しても溶けないので、手術が必要になります。
尿道結石についてはこちらのページで詳しく説明しているのでご参照ください。
尿道栓子
尿道栓子と言って、尿中に浮遊するカスが集積して細い尿道を詰まらせることがあります。このカスには、結晶(結石になる前のクリスタル)や炎症細胞、膀胱の粘膜から剥がれ落ちた細胞などが含まれます。
腫瘍
膀胱や尿道にできる腫瘍は、尿路を圧迫し閉塞を起こす可能性があります。また、尿路の周辺にある臓器(結腸やリンパ節)に腫瘍ができることでも尿路閉塞が起こります。
血餅(血の塊)
稀ではありますが、血餅(血の塊)が尿道に詰まることもあります。膀胱炎などで、膀胱の中に血の塊ができ、それが尿道に詰まってしまうような病態です。
便利な英単語
- urinary tract: 尿路
- obstruction: 閉塞
- urinary obstruction: 尿路閉塞
- block: 閉塞する
- urinary blockage: 尿路閉塞
- unblock: 閉塞解除する
- Ureteral obstruction: 尿管閉塞
- Urethral obstruction: 尿道閉塞
- ureteral/bladder/urethral stone: 尿管/膀胱/尿道結石
- cystolith: 膀胱結石(医学用語)
- cystitis: 膀胱炎(医学用語)
- struvite: ストラバイト
- calcium oxalate: シュウ酸カルシウム
- crystal: 結晶
- plug: 栓子
- cast: カス
- cancer/tumor/neoplasia: 腫瘍
- clot: 血の塊
ペットのおしっこが出てない!と気づいた時にするべきことに関してはこちらでまとめたのでご参照ください。
まとめ
- 尿路閉塞には、大きく尿管閉塞と尿道閉塞の二つがある
- 閉塞の原因は結石、プラグ、腫瘍などと様々
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